エリゼッチ・カルドーゾ必聴レコードガイド:Canção do Amor Demaisを起点に聴くボサノヴァ/サンバ名盤と購入のコツ

はじめに — エリゼッチ/エリゼテ・カルドーゾとは

エリゼッチ・カルドーゾ(表記は Elizeth / Elizete Cardoso とされることがあります、以下本文では一般的な表記「エリゼッチ」で統一します)は、20世紀ブラジルを代表する歌手の一人。サンバからMPB、初期のボサノヴァまで幅広いレパートリーを持ち、繊細で艶のある声質と、フレーズの自然な歌い回しで多くの聴き手を魅了しました。本コラムでは「レコードで聴くべきおすすめ盤」を中心に、各盤の聴きどころや背景を深掘りして解説します。

おすすめ盤一覧(ピックアップ)

  • Canção do Amor Demais(1958) — 必聴の一枚

    なぜ聴くべきか:エリゼッチの名前で最も国際的に知られているアルバムで、トム・ジョビン(Tom Jobim)やヴィニシウス・ヂ・モライス(Vinícius de Moraes)の作品を取り上げた重要作。特にギター伴奏で参加したジョアン・ジルベルト(João Gilberto)のプレイが、後のボサノヴァ奏法(繊細でリズミカルなギター)が確立される前兆として注目されています。

    聴きどころ:

    • エリゼッチの解釈力:クラシックなサンバや根っこの黒いグルーヴを保ちながら、ボサノヴァ作品の抑制された感情表現を自然に歌いこなす点。
    • アレンジと空気感:管弦や室内楽的なアレンジが、歌の繊細さを引き立てる。歌詞の詩的世界と声の余韻に注目。
    • 歴史的価値:ボサノヴァ萌芽期の録音としても重要で、ジャンル史を追ううえで欠かせない資料的側面がある。
  • 初期サンバ/シングル群(1940s–1950s) — エリゼッチの原点を知る

    なぜ聴くべきか:アルバム単位でまとめられていないことも多いですが、シングルやコンピ盤にまとめられた1940年代後半〜1950年代のサンバ録音群は、彼女の表現の源泉を追うのに最適です。ダンスホールやカフェ・シーンで培われたリズム感と語りかけるような歌い口が際立ちます。

    聴きどころ:

    • フレージングの柔軟さ:短い曲の中で見せるニュアンスの付け方が、その後の大舞台録音にも繋がっていることが感じられます。
    • レパートリーの広さ:アフロ・ブラジル的な要素を含む曲から都会的なショーロ風のナンバーまで幅広く、彼女の多面性が分かります。
  • コンピレーション/ベスト盤(各年代の再発盤) — 入門と発見に便利

    なぜ聴くべきか:多くの名唱が複数のレーベルやシングルで分散しているため、編集盤("Best Of" やテーマ別コンピ)は効率よく彼女の代表作と名演を聴く手段です。リマスターや解説が充実している再発もあるので、音質面と資料性の両方で有益。

    聴きどころ:

    • 時代ごとの変化:初期の黒っぽいサンバ、ボサノヴァ期のしっとりした表現、晩年の成熟した歌唱—それぞれの対比を一枚で追いやすい。
    • ライナーノーツ:良質な再発盤には背景解説や録音データが付くことが多く、聴取体験が深まる。
  • ライブ録音(可能なら) — 生の声の迫力を体験する

    なぜ聴くべきか:スタジオ録音とは異なるインタープリテーションやアドリブ的な表情が楽しめるため、エリゼッチの「歌う人」としての本領がよくわかります。温度感や観客とのやり取りが録音に残っているものは、彼女の魅力をダイレクトに伝えます。

    聴きどころ:

    • 即興的なフレーズやテンポの揺れ、語りかけるようなMC(曲間のトーク)に注目。
    • 伴奏陣との呼吸:リズム隊やピアノとの掛け合いが、レコードとは一味違う緊張感を作る。

音楽的特徴と聴き方のコツ(レコードそのものの扱い以外)

  • 声質の観察:エリゼッチの声はやや硬質でありながら深みがあり、子音の輪郭がはっきりしているのが特徴です。歌詞の一語一語を味わうように聴くと、その表現力がよく分かります。
  • フレージングの妙:長いフレーズをあえて端折る、あるいは語尾を伸ばすなどの微妙な選択で感情を作るタイプです。フレーズごとの息遣いやアクセントを意識して聴きましょう。
  • ジャンル間の橋渡し:彼女は伝統的なサンバと新興のボサノヴァの両方を歌いこなします。両者の違い(リズムのタッチ、伴奏の密度、歌唱の抑制)を比較して聴くと、20世紀中葉のブラジル音楽史が立体的に見えてきます。

どの盤から買う・探すべきか(実用ガイド)

  • 最初の一枚は「Canção do Amor Demais」を中心に:歴史的重要性と音楽的魅力が最も凝縮されています。
  • 次に編集盤で「代表曲詰め合わせ」を:過渡期の録音やシングルを効率よく知るため。
  • 興味が深まったら年代別のオリジナルLPやライヴを掘る:レーベル/録音年/伴奏者を手がかりにすると新たな発見が出てきます。

最後に — エリゼッチを聴き続ける価値

エリゼッチは単に「美しい声」の歌手ではなく、ブラジル都市音楽の変遷を体現した存在です。サンバの深い黒みと都会的な洗練が一人の歌手の中で結実しており、レコードでそこを追っていくと、歌の解釈の奥行き、リズム文化の繊細さ、詞と音の結びつきといった複合的な魅力を味わえます。まずは一枚から、そこを起点にディスクを拡げていってください。

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参考文献