Todd Terryとは――ニューヨーク発ハウス革命の軌跡と名曲セレクション
Todd Terryとは — ニューヨーク発のハウス革命児
Todd Terry(トッド・テリー)は1980年代後半から活動する米国ブルックリン出身のDJ/プロデューサーで、ハウス・ミュージックの発展に決定的な役割を果たした人物です。ヒップホップやディスコ、ガラージュ、そして当時のシカゴ/デトロイト系要素を独自にブレンドし、サンプリングとループ処理を駆使した“ゴリゴリかつダンサブル”なサウンドでクラブ文化に強烈な影響を与えました。
おすすめレコード(深掘り解説)
Royal House – "Can You Party?"(late 1980s/12インチ)
解説:Royal HouseはTodd Terryの代表的な別名義のひとつで、本作は“パーティー”感を直球で放つクラブ・アンセム。ピアノのスタブ、切れの良いハイハット、反復するボイスサンプルによるシンプルかつ強烈なフックが特徴です。初期ハウス・シーンのフロア・エネルギーとDJユースを最優先に設計された一枚で、オリジナルの12インチは当時の音圧感、スネアの抜けの良さが魅力。
聴きどころ:ピアノ・リフとボイス・フレーズのループがどのように曲を牽引していくか。イントロのパーカッションからフックへの繋ぎは、クラブでのミックスの参考にもなります。
Black Riot – "A Day in the Life"(late 1980s/12インチ)
解説:よりアンダーグラウンドでタフな側面を見せるBlack Riot名義の代表作。より生のブレイクビート感とダビーな処理、ミニマルなコード進行を組み合わせた“ハードなハウス”で、トッドのサンプリング・センスとグルーヴ作りの妙が光ります。レイヴ寄り/アシッド寄りのセットにも馴染む、クラシックなダンスフロア工具のひとつ。
聴きどころ:ローエンドのアタック感、ループの微妙な揺らぎ、リズムの“詰め”が作る推進力。オリジナル盤はエッジの立ったスネアと低域の力感が魅力です。
Todd Terry Project – "Keep On Jumpin'"(1995〜1997あたりのシングル/アルバム収録)
解説:オールドスクールなディスコ/ハウスの継承をモダンに再構築した代表作。Martha WashやJocelyn Brownといったソウルフルな歌姫をフィーチャーしたヴォーカル・ハウスの王道で、オリジナルはクラシックなヴォーカル・ハウスのエネルギー感をそのまま現代クラブに持ち込んだ一曲です。大箱での盛り上がりを狙った”ボーカル+ピアノ+重心のあるビート”という組み立てがよくわかります。
聴きどころ:ヴォーカルのダイナミクス(特にブレイク直後の盛り上げ)とピアノのコードワーク、そしてサイドチェイン的に効くキックの押し出し。ヴォーカル・ハウスの教科書的トラック。
Todd Terry Project – "Something Goin' On"(シングル/アルバム)
解説:前述の"Keep On Jumpin'"と同列に語られるヒット曲で、70s〜80sソウルの大らかなコーラス感をハウスのフォーマットに落とし込んだ作品。サンプルの扱い、ストリングスやブラスの処理、ボーカルの重ね方にTodd Terryらしい“クラブに映える”プロデュース手法が詰まっており、フロアを一気にポジティヴな空気に変える効果を持っています。
聴きどころ:ヴォーカル・アレンジとBメロの作り方、クラブでのピーク感の作り方を学べる一枚。パーティーの“上げどころ”の作り方が非常に巧みです。
Everything But The Girl – "Missing (Todd Terry Remix)"(1994–1995 リミックス)
解説:オリジナルは哀愁漂うフォーク〜ポップ曲でしたが、Todd Terryのリミックスはギターの断片をループさせ、ハウス・ビートで再構築してクラブとチャートの両方を制した名リミックス。エレクトロニック・ダンスの文脈でポップ曲を甦らせる好例で、リミックスの力を世に示した象徴的トラックです。
聴きどころ:原曲のメロディアスな部分を保持しつつ、テンポとグルーヴを変えてフロア寄りに再配置するプロのテクニック。ここから“リミックスで別の命を吹き込む”手法が広く認知されました。
どのプレスを狙うか(入手・コレクト観点)
90年代以前のオリジナル12インチは、マスタリングとカッティングがクラブ用途に最適化されていることが多く、低域の抜けやアタック感が魅力です。特にRoyal HouseやBlack Riotなどの80年代後半リリースは、オリジナル盤の重厚感を求めるコレクターが多いです。
逆にリマスター再発はノイズ低減や音像のモダン化が進んでいるため、ホームリスニングやデジタル・セットに組み込む用途には向くこともあります。用途(DJプレイ用かコレクト用か)を明確にして選ぶと良いでしょう。
プロモ盤や限定盤には別ミックスや長尺のクラブミックスが収録されていることが多く、DJ的価値が高いのでチェックをおすすめします。
Todd Terryサウンドを読み解くポイント
サンプリングとループの積み重ね:短いフレーズを反復させて“フック”を作ることが非常に巧み。反復の中で微妙に変化を入れる編集技術に注目。
ボーカルの扱い:ソウルフルな女性ボーカルをフロア向けにアレンジして“歌モノでも踊れる”構造に仕立てる点は彼の得意技。
ローファイな打ち込み感と強いキック:意図的に“硬さ”や“ざらつき”を残したリズム作りで、箱(クラブ)での刺さりを重視しているのが特徴です。
ジャンル横断のセンス:ヒップホップ、ディスコ、ラテン、ガラージュなど複数要素の融合が彼のサウンドの幅を生み出しています。
聴く順・プレイリストの作り方(実践)
イントロ〜ミドル:Royal HouseやBlack Riotの12インチで“グルーヴ感”を体感。短いループの妙やドラム処理を確認。
クライマックス:Todd Terry Projectの"Keep On Jumpin'"や"Something Goin' On"でヴォーカルが持つ“解放感”を体験。ここでフロアのピークを作る感覚を掴めます。
リミックスの学び:Everything But The Girlの"Missing (Todd Terry Remix)"で、既存の楽曲をダンス・コンテキストに変換する手法を分析。
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参考文献
- Todd Terry — Wikipedia
- Todd Terry — Discogs(ディスコグラフィ/リリース詳細)
- Todd Terry — AllMusic(バイオ & レビュー)
- Todd Terry — Resident Advisor(アーティスト情報)


