スティーヴ・ハウ(Steve Howe)— Yesの象徴的ギタリストの生涯と演奏スタイル
Steve Howe — プロフィール
Steve Howe(スティーヴ・ハウ、本名 Stephen James Howe、1947年4月8日生まれ)は、イングランド出身のギタリスト/作曲家であり、プログレッシブ・ロックを代表するバンドYesの最も象徴的なメンバーの一人です。繊細かつ多彩なギター表現で知られ、エレクトリックからアコースティック、クラシカルなフィンガーピッキングまで幅広い技術を持ち合わせています。長年にわたるキャリアの中で、バンド活動だけでなくソロ作や多くのコラボレーションを通じて独自の音楽世界を築いてきました。
経歴の概略
- 1947年、ロンドンに生まれる。
- 1960年代に複数のサイケ/ロック・バンドを経てキャリアを開始(Tomorrowなど)。
- 1970年、Yesに加入し、1970〜70年代の黄金期における主要作のギタリストとして活躍。
- ソロ活動も積極的に行い、1970年代後半以降に数枚のソロ・アルバムを発表。
- 1980年代〜90年代も断続的にYesやAnderson Bruford Wakeman Howe(ABWH)などで活動を継続。
- 2017年、Yesのメンバーとしてロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)に選出。
サウンドと演奏スタイルの特徴
Steve Howeの魅力は、単なる速弾きや技巧的見せ場ではなく、「音楽的な味付け」と「場面に応じた色彩」の引き出し方にあります。以下が彼の演奏で特に注目すべき点です。
- 多様なジャンル感覚:クラシック、フォーク、カントリー、ジャズ、ブルース、ロックなど様々な要素を自然に融合させます。曲ごとにギターの役割を的確に変え、アンサンブル全体の色を作ります。
- フィンガーピッキングとハイブリッドな奏法:ピックと指を使い分けることで、アルペジオからメロディックなリードまで柔軟に表現。クラシックギター的な技法をロックの文脈に応用することが多いです。
- ハーモニー志向のフレーズ:単音の速弾きよりも和音の流れや対位法的なフレーズを好み、曲の「隙間(space)」を生かした演奏をします。
- 豊富なトーンメイク:アコースティック12弦、スティール、セミアコ/ソリッドのエレキなどを曲に応じて使い分け、ギターの音色自体で楽曲のムードを作ります。
- メロディと構築のセンス:短いフレーズでも強い主題性を持たせ、ソロでも楽曲の流れを損なわない“歌うギター”を実現します。
代表的な作品(バンド/ソロ)と聴きどころ
膨大なディスコグラフィーの中から、入門〜深掘りにふさわしい代表作を挙げます。
- Yes — The Yes Album(1971)
バンド加入直後の重要作。スティーヴのアコースティック・インスト「The Clap」や、ロックと繊細さが同居するギター・ワークが光ります。 - Yes — Fragile(1971)
「Roundabout」など名曲を収録。スティーヴのアコースティック演奏「Mood for a Day」も耳を引きます。 - Yes — Close to the Edge(1972)
プログレッシブ・ロックの金字塔的作品。複雑な構成の中でのギターの配置感、ダイナミクスの持って行き方が見事です。 - Yes — Going for the One(1977)
より歌心のある楽曲が増えた時期。ギターの表現力の幅広さが確認できます。 - Anderson Bruford Wakeman Howe(ABWH、1989)
Yesの要素を継承したプロジェクトで、スティーヴの演奏が原点回帰的に響く作品です。 - ソロ:Beginnings(1975)、The Steve Howe Album(1979)など
ギター愛好家にとっては彼の多彩なギターワークがストレートに楽しめる重要作です。ホームブリュー(Homebrew)シリーズはデモや未発表音源を含み、創作プロセスを垣間見られます。
作曲面での貢献
スティーヴは単にソロを弾くギタリストではなく、作曲/アレンジ面でもYesの音像を形成してきました。リフやアルペジオで曲の骨格を作るだけでなく、楽曲の転調や展開部で異なるギター色を差し込むことで、曲全体のストーリーテリングを助けています。
ライブでの表現力とステージ・アプローチ
ステージ上での彼は派手さよりも安定感と表現の巧みさを重視します。曲の場面ごとにギターを持ち替え、多彩な音色と繊細なダイナミクスで聴衆を引き込みます。感情表現がストレートで、聴き手に“歌”を届けることを第一にしているように感じられます。
影響と評価
- 同世代から後進のギタリストまで幅広く影響を与え、プログレッシブ・ロックのギター像を確立した一人と評価されています。
- 技術的な派手さだけでなく、音楽的判断やアンサンブル感覚の高さを称賛されることが多いです。
- 2017年、Yesのロックの殿堂入りにより、歴史的評価が改めて確認されました。
聴き方の提案(入門〜深掘り)
- まずは名曲「Roundabout」や「Starship Trooper」などのシングル級楽曲でスティーヴの音色とフレーズ感を掴む。
- 次に「The Clap」「Mood for a Day」のようなアコースティック・ソロ曲でフィンガーピッキングやクラシカルな側面を聴く。
- アルバム単位(Fragile、Close to the Edge)で楽曲の構成やギターの役割変化に注目して聴き進めると、彼の作曲/配置感が理解できる。
- ソロ作やHomebrewシリーズで創作の細部、未完成曲やデモの断片からも彼のアプローチを学べます。
なぜ多くの人を魅了するのか — スティーヴ・ハウの“本質”
彼の魅力は「多才さ」と「音楽的な誠実さ」の両立にあります。技巧的に高い水準を保ちながらも、決してそれを見せびらかすために使わず、楽曲のために最適な音を選ぶという姿勢がある。聴き手はそこに“美しさ”と“説得力”を感じ、長年にわたり支持され続けています。
最後に
Steve Howeはプログレッシブ・ロック史における重要人物であり、ギター表現の幅を広げた存在です。彼の演奏は単なる技巧の披露ではなく、楽曲に命を吹き込む“音の語り部”としての側面が強く、ギタリストはもちろん、作曲やアレンジに興味のあるリスナーにとっても学びの多い音楽家です。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- Steve Howe (Wikipedia)
- Steve Howe 公式サイト
- AllMusic — Steve Howe Biography
- Rock & Roll Hall of Fame — Yes(Inductee)


