The Kingston Trio徹底ガイド:フォーク復興のパイオニアを聴く、初期〜後期の聴き分けとおすすめレコード
The Kingston Trioとは — フォーク復興を商業化したパイオニア
The Kingston Trioは1950年代後半に登場したアメリカのフォーク・グループで、伝統民謡やトラディショナルを洗練された三声ハーモニーと軽快なアレンジでポピュラー化しました。オリジナル・メンバーはデイヴ・ガード(ギター)、ボブ・シェーン(ギター、ボーカル)、ニック・レイノルズ(テンバー・リコーダーなど)で、後にデイヴの脱退後ジョン・スチュワートが参加します。
彼らの特徴はライブでのトーク/間合いを含めたエンターテインメント性、商業的なヒット(シングル・チャート進出)を生み出した点、そして後のフォーク/フォークロックのムーブメントに与えた影響です。本コラムでは「聴くべきレコード」を中心に、アルバムごとの聴きどころや選び方のポイント、代表曲とその意味合いを深掘りします(※レコードの再生・保管・メンテナンスの具体的コツは扱いません)。
おすすめレコード(入門〜深掘り)
初期代表作(デビュー〜ヒット群を収録した初期LP)
彼らを「商業的に成功させた」初期のレパートリーをまとめて聴けるレコード。代表曲「Tom Dooley」や「Scotch and Soda」など、トラディショナルをポップに仕立てた名演が並びます。グループの音楽的な出発点と、なぜ当時の聴衆に受けたのかを知るのに最適です。
ライブ盤/ステージの魅力を捉えた記録
ステージ上の掛け合いや観客とのやり取りが魅力のひとつ。ライブ録音は彼らの人柄やアレンジの即興性を伝えるので、スタジオ盤とは違う面白さがあります。特に初期の大学公演系やクラブ公演を収めたものは、当時の空気が感じられます。
“M.T.A.”/シングル・ヒット集(コンピレーション)
ヒット曲を押さえたい向けの編集盤。シングルA面・B面をきちんと収録した編集盤は、彼らの“ヒットメーカー”としての側面が手早く理解できます。通勤・入門用途に便利です。
ジョン・スチュワート期の作品(後期の創作性を聴く)
デイヴ・ガード脱退後、ジョン・スチュワート加入によって曲作りやアレンジに変化が出ます。伝統曲に加えオリジナル楽曲が増え、内省的・物語性のある曲が目立ちます。初期のファンとは違う趣を好む人におすすめです。
まとめ系アンソロジー/ボックスセット(資料性・解説重視)
複数アルバムやデモ、未発表音源、詳細なライナーノーツを含むボックスは、史料的に彼らを深掘りしたいリスナーに最適です。収録曲の年代順で変化を追うと、バンドの音楽的発展がよくわかります。
各アルバムをどう聴き分けるか — 注目ポイント
初期スタイル(商業フォーク)を楽しみたい場合
キャッチーなメロディと三声ハーモニー、軽快なギター・アレンジが中心。伝統曲の“編曲”を楽しむことが主目的になります。
ライブ感・トークを含めて楽しみたい場合
ライブ盤や大学ライヴ収録盤を選ぶと、当時の舞台演出やメンバーの人間味が伝わります。演奏の“間”やおしゃべりが資料的価値も帯びます。
曲作り・変遷を追いたい場合
ジョン・スチュワート加入後の作品や、年代順にまとめたアンソロジーで彼らの創作的変化を辿ると、フォークからフォークロックへつながる流れが見えます。
代表曲・キートラックとその魅力
Tom Dooley — 民間伝承をポップに昇華させた代表曲。シンプルな語り口と耳に残るメロディで一躍トップチャートに。
M.T.A. — ストーリー性のあるコミカルな曲で、大衆性と物語性が同居。シングルヒットとしても知られます。
Scotch and Soda — 落ち着いたボーカル表現と美しいアレンジが光るバラード系の名演。
Greenback Dollar — 社会的な匂いを持つ曲調と爽やかなコーラスが特徴のトラック。
盤選び(オリジナル盤 vs リイシュー/モノラルとステレオの違い)
オリジナル・プレスは“当時の空気”を感じられる一方、リイシューはリマスターやボーナストラックを含むことが多く、音質の好みで選ぶとよいでしょう。
モノラル録音でのミックス感を好むリスナーも多く、初期の録音はモノラルに力が入っているケースがあります。ステレオ化された盤では定位感が変わるため、同一アルバムでも印象がかなり変わります。
アンソロジーやBOXセットは未発表曲や詳細な解説が付属することが多く、研究的に聴きたい場合に向きます。
コレクター向けのチェックポイント(購入前に見るべき点)
ジャケットのクレジット(メンバー表記やプロデューサー)、ライナー・ノーツの充実度を確認すると盤の価値や資料性がわかります。
シングル曲をまとめた編集盤や当時のチャートヒットを網羅したコンピは入門用として優秀。逆にディープな探求をするならボックスセットやデモ/未発表音源収録盤を狙いましょう。
初期メンバー(デイヴ・ガード在籍時)を重視するか、ジョン・スチュワートの時代を含めた変遷を聴くかで選ぶレコードが変わります。購入前に収録曲リストを確認しましょう。
聴きどころの聴き方 — 深掘りポイント
ハーモニーの作り方:三声がどう重なり合ってメロディを支えているかをパートごとに注目すると、編曲の妙が見える。
アレンジの簡潔さ:ギターとパーカッション的なアクセントに頼らず、声のリズム感とテンポ感で曲を引っ張る手法が多い点を観察する。
歌詞の解釈:トラディショナル曲の物語性や、オリジナル曲に見られる社会的・寓話的表現の違いを比較することで、時代背景や彼らのメッセージがクリアになります。
影響とレガシー
キングストン・トリオはフォークを幅広い大衆に届け、1960年代のフォーク復興(とその後のフォークロック化)に大きな影響を与えました。彼らの成功はレコード会社がフォーク・アーティストに投資する契機となり、若いシンガー・ソングライターたちの道を開きました。
おすすめの聴き順(入門者向け)
まずはヒット曲や編集盤で「代表曲」を把握する。
次に初期LPを一枚通して聴き、音楽性の基礎を確認する。
ライブ盤やアンソロジーで舞台性や未発表曲を掘り、最後に後期のジョン・スチュワート期で変化を楽しむ—という流れがおすすめです。
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参考文献
- The Kingston Trio — Wikipedia
- The Kingston Trio — AllMusic
- Smithsonian Folkways — 民謡・フォーク関連資料(総覧)
- Capitol Records — レーベル公式サイト


