Pixinguinhaの生涯とショーロ革新—ブラジル音楽史を築いた編曲と演奏の巨匠
Pixinguinha(ピシンギーニャ)とは — 概要と生涯の概観
Pixinguinha(本名:Alfredo da Rocha Viana Filho、1897年4月23日 — 1973年2月17日)は、ブラジル音楽史における最重要人物の一人で、特に「ショーロ(choro)」と初期のブラジル・ポピュラー音楽(MPB)の発展に極めて大きな影響を与えた作曲家・編曲家・演奏家です。リオデジャネイロ出身。フルートやサクソフォンを巧みに操り、洗練された旋律、豊かな和声、ポリフォニックなアレンジで知られます。
略歴(要点)
- 1897年、リオデジャネイロ生まれ。家族の影響で幼少より音楽に親しむ。
- 若年期よりカルテットやグループで活動し、1920年代には自身が率いるグループでレコード録音や演奏活動を行い注目を集める。
- 作曲家として多数の楽曲を残し、特に「Carinhoso(カリニョーゾ)」は国民的名曲として愛される。
- 編曲家・アレンジャーとしても活躍し、楽器編成の革新(フルート/サクソフォンを中心にした管楽器の比重、対位法的な書法)を取り入れた。
- 1973年に没後も、その作品・演奏スタイルは世代を越えて影響を与え続けている。
音楽的な魅力と革新点
Pixinguinha の音楽の魅力は単なる「美メロ」にとどまらず、複数の層で成立しています。以下に主なポイントを詳述します。
- 旋律と歌心(カンタービリティ)
ショーロや初期サンバにおける歌いやすさ・親密さを保ちながら、曲全体を貫く流麗で表情豊かな旋律を作るのが得意でした。旋律線はしばしば歌詞を持つ楽曲でも独立して強い魅力を放ちます。 - 高度な和声感覚と即興性の融合
単純なトニック・ドミナントのやり取りに終始せず、意外性のある転調や副和音(代理和音)を使い、豊かな色彩感を生み出しました。アレンジには即興的な掛け合いが取り入れられ、演奏の毎に微妙に表情が変わる余地が残されていました。 - 対位法的なアレンジ
Pixinguinha は旋律の動きだけでなく、対旋律・対位の配置を巧みに用いて、少数編成でも密度の高いアンサンブルを構築しました。これにより一人ひとりの楽器の役割が明確になり、色彩豊かな音響が生まれます。 - 楽器編成と音色の革新
伝統的なショーロ編成に管楽器(フルート、後にサクソフォン)を効果的に導入し、木管の軽やかさと弦楽器系の伴奏を組み合わせることで、新しいトーン・パレットを確立しました。彼自身のサクソフォン演奏は特に表現力豊かで知られます。 - リズム感と都市文化の表現
リオの都市音楽としてのショーロやサンバには独特の律動があり、Pixinguinha の作品はその微妙なスウィング感やシンコペーションを自然に取り入れています。聴く側にとっては都会の情景や感情を音楽的に体験できる点が魅力です。
代表曲と聴きどころ(選抜)
以下はPixinguinhaを代表する楽曲と、それぞれの聴きどころです。録音は時代により音質や編成が異なりますが、作曲・編曲の核は共通しています。
- Carinhoso — 国民的名曲。旋律の歌心と情緒が際立ち、後年に歌詞が付けられて広く歌われるようになりました。原曲の器楽的な美しさと、歌ものとしての普遍性の両方を味わってください。
- Lamento — 名状しがたい哀感と洗練された和声が特徴。メロディの呼吸、管楽器のフレーズの陰影、対旋律の配置に注目すると、Pixinguinha の表現技術がよく分かります。
- Rosa(例) — (※曲名の伝承バリエーションがあるため、録音ごとにタイトル表記が異なることがあります)短いモチーフをさまざまに展開する技巧、そしてリズムの柔軟な扱いが光ります。
- アンサンブル録音(Os Oito Batutas 期など) — バンドでの演奏は編曲力とアンサンブル感を知る上で最適。各楽器の役割分担や掛け合いを意識して聴くと、当時の革新性が実感できます。
演奏家としての側面 — フルートとサクソフォン
Pixinguinha はもともとフルート奏者としてキャリアをスタートし、後にサクソフォンでも名を馳せました。両者に共通するのは「人の声のようなフレージング」と「柔軟な音色操作」です。フレーズの終わりでの微妙なポルタメントやヴィブラート、呼吸感に近い表現を多用し、器楽でありながら歌うような説得力を持たせます。
社会的・文化的背景と影響
Pixinguinha の活動は、19世紀末から20世紀前半にかけてのリオの都市文化、移民やアフロ・ブラジル文化が交錯する文脈と密接に結びついています。彼が行った音楽的統合(アフロ系リズム、民衆のメロディ、ヨーロッパ由来の和声や対位法の融合)は、後のサンバ、MPB、ボサノヴァに至るまで広範な影響を与えました。多くの作曲家・演奏家が Pixinguinha を師と仰ぎ、その作品がブラジルの音楽教育やレパートリーの基盤となっています。
現代における再評価と聴き方の提案
近年は音楽学者や演奏家による編曲研究、原典復元、リマスタリング盤のリリースなどで Pixinguinha の作品が再評価されています。初心者から研究者まで、以下の視点で聴くと理解が深まります。
- メロディの「歌心」と、対旋律の「会話性」を対比して聴く。
- 和声の細かい動き(代理和音や短い転調)を追って、色彩の変化を味わう。
- アンサンブル内での「空白」や「間」を意識し、即興的表現がどこで生じるかを確認する。
- 時代の録音と近年の再演を比較し、演奏慣習の変遷を学ぶ。
教育的遺産と後世への影響
Pixinguinha の楽曲やアレンジ手法は、ブラジルの音楽教育(特にショーロの学習)において基本教材として扱われることが多く、フレーズの歌わせ方、アンサンブルの作り方、リズム感の鍛え方を学ぶ上で格好の素材です。また彼の仕事はジャンルの垣根を超え、多くのジャズ/ワールドミュージック奏者にもインスピレーションを与えています。
まとめ
Pixinguinha は単なる過去の作曲家ではなく、ブラジル音楽の基盤を形作った革新者です。旋律の美しさ、和声の深さ、アンサンブル設計の巧みさ、そして都市文化を音楽化する感性――これらが結びついて、彼の音楽は世代を超えて愛され続けています。初めて触れる方はまず代表曲を原典録音で聴き、次に現代の演奏で表現の違いを比較することをおすすめします。
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参考文献
- Pixinguinha — Wikipedia (英語)
- Pixinguinha | AllMusic
- Pixinguinha | Discogs
- Instituto Moreira Salles(コレクション/アーカイブ検索)


