Fred Frithのおすすめレコードを徹底解説—入門から深掘りまでの聴き方ガイド
Fred Frith — 推荐レコード 深掘りコラム
イギリス出身の音楽家 Fred Frith(フレッド・フリス)は、ロック、即興音楽、現代音楽、実験音楽を自在に横断するギタリスト/作曲家です。本コラムでは、彼の活動を代表するレコードをピックアップし、それぞれの聴きどころ、位置づけ、入門者へのアドバイスを丁寧に解説します。ソロ作、バンド作、コラボレーション、サウンドトラック系まで、キャリアの各フェーズが分かるように選盤しています。
簡単な経歴と音楽的特徴(導入)
1960〜70年代に結成されたアヴァンロック/政治的なアプローチを持つバンド Henry Cow で名を上げ、その後ソロ作や多数のコラボレーションで実験的なギター奏法、準構築的な即興、アンサンブル作曲などを展開。特殊奏法、自作改造ギター、電子処理、そして「歌もの」や映画音楽まで幅広く手がける点が特徴です。作品ごとに作曲と即興の比率が変わるため、アルバム単位で表情が大きく異なります。
おすすめレコード(各作品ごとに深掘り)
Guitar Solos(1974)
フリスのソロ・ギター実験が凝縮された記念碑的作品。アンプやエフェクトを多用しない「楽器そのもの」を拡張するアプローチが随所に現れます。ギタリストでなくとも音の発生法や音色の変容、即興的な構築手法の参考になる作品。
- 聴きどころ:ピッキングやボウイング、ボディを叩くなどの物理的な奏法が音の主要な源。各短いピースがニードルのように刺さる独立した断片群。
- なぜ重要か:ロック畑のギタリストが「楽器拡張の先導者」として世界に注目されるきっかけ。
- 入門アドバイス:一気に聴きとおすより、各断片を分けてじっくり聴くと発見が多い。
Henry Cow — Unrest(1974)/In Praise of Learning(1975)
Henry Cow は政治性の強いアヴァンロック集団。Frith の作曲・アレンジ力、ギターの即興性、集団内でのアンサンブル志向が色濃く出る。Unrest はより実験的、In Praise of Learning は歌もの/ポリティカルな要素が強い。
- 聴きどころ:複雑なアンサンブル、非定型なリズム構造、ギターがテクスチュアとして機能する場面。
- なぜ重要か:Frith の音楽的出発点と、後の作風への土壌が理解できる。
- 入門アドバイス:Henry Cow の全体像を掴むには、バンド作をいくつか聴き比べるのがお勧め。
Massacre — Killing Time(1981)
Bill Laswell(ベース)やFred Maher(ドラム)と組んだトリオ Massacre による高密度なロック・インプロヴィゼーション。エレクトリック・ロックの激しさと、即興的な展開が融合する力作です。
- 聴きどころ:生々しいダイナミクス、即興の切迫感、リズム・ギターの鋭いアイディア。
- なぜ重要か:Frith がロック的なスリルを追求した代表作の一つで、より「ロック」寄りの側面を見せます。
- 入門アドバイス:ライブ・トラックや別テイクを比較すると、即興の多様性がわかりやすい。
Cheap at Half the Price(1983)
Frith の中では比較的「曲志向」「ポップ寄り」の作品。ユーモアやポップス的な歌メロを取り入れ、実験性とは異なる角度での表現を示しています。
- 聴きどころ:曲ごとのキャラクターの違い。実験的要素と親しみやすさの同居。
- なぜ重要か:Frith の多面性(純粋な実験だけでなく、ポップ・センスも持つこと)を示す一枚。
- 入門アドバイス:歌ものが好きなリスナーにとって入口になり得る作品。
Step Across the Border(サウンドトラック/1990)
ドキュメンタリー映画『Step Across the Border』(監督:Nicolas Humbert / Werner Penzel)のサウンドトラック的編集盤。Frith のキャリアを映像的に追った作品で、ソロ演奏、共演、スタジオ録音、ライブ音源などが混在しています。
- 聴きどころ:多彩なゲスト(コラボレーション)と演奏スタイルを一枚で俯瞰できる。
- なぜ重要か:Frith の「人物」と「音楽」の両方を理解するうえで格好の窓口。
- 入門アドバイス:映像と合わせて観る(映画を観る)と理解が深まるが、音盤単体でも文脈が分かる編集。
Eye to Ear シリーズ(映画音楽集)
Frith が映画や映像作品のために書いた楽曲をまとめたシリーズ。劇伴的な機能を重視しつつ、そこに彼の実験性が注ぎ込まれています。作曲家としての側面をより強く感じられる作品群です。
- 聴きどころ:空間性、配器法、ミニマルなモチーフの扱い。即興と作曲の峻別が興味深い。
- なぜ重要か:Frith のコンポーザーとしての力量が顕著に現れる。
- 入門アドバイス:映像作品の雰囲気を想像しながら聴くと、楽曲の機能美が見えてくる。
その他の注目作品・プロジェクト
上記以外にも、フリスは多数のコラボレーション(John Zorn、Chris Cutler、Tom Cora、Joëlle Léandre 等)やアンサンブル作品、現代音楽の委嘱作品を残しています。興味が湧いたら特定の共演者や時代(70sのHenry Cow期、80sのNYシーン、90s以降の作曲活動など)を軸に深掘りすると分かりやすいです。
聴き方のコツ(実践ガイド)
- フェーズごとに分けて聴く:初期のHenry Cow期→ソロ初期の実験→80年代のロック寄り/ポップ寄り→90年代以降の作曲/サウンドトラック。変化を追うと作家性が見える。
- テクスチュアに注目する:フリスの魅力はメロディだけでなく「音の作り方」にある。ノイズ、アタック、余韻の扱いに耳を傾ける。
- コラボレーションの文脈を調べる:誰と演っているかでサウンドが大きく変わる。共演者の音楽性も聴きどころ。
- ライブ録音とスタジオ録音を比較する:即興の自由度や編成の違いが浮き彫りになる。
購入・コレクションのアドバイス(保管・再生以外)
- 入手元:まずは公式再発やアーティスト直系のレーベル(Fred Records 等)をチェックするのが安心。正規再発には解説やボーナス音源が付くことがある。
- 盤探しの順序:入門なら「Guitar Solos」「Step Across the Border」「Cheap at Half the Price」あたりから。バンド作を追う場合はHenry Cow 代表作を並行して。
- デジタル音源とアナログの使い分け:現代作曲・サウンドトラック類はデジタル配信で入手しやすい。一方、70〜80年代のオリジナルLPは音像の雰囲気がロウで魅力的なのでコレクター向け。
- 解説を活用する:Fred Frith はコラボレーションが多いので、ライナーノーツやブックレットで共演者や録音背景を確認すると楽曲理解が深まる。
聴きどころまとめ(短いチェックリスト)
- ギターの「何で」音が出ているか(特殊奏法、器具、加工など)に注目する。
- 曲と即興の境界線:譜面で組み立てられた箇所とその場で生成される箇所を見分ける。
- 共演者との化学反応を聴く—Frith は相手に合わせて役割を変える器用さがある。
- 音楽の「ユーモア」や「遊び心」も重要:必ずしも常にシリアスではない点を楽しむ。
はじめての一枚に迷ったら
まず一枚を選ぶなら「Guitar Solos」または「Step Across the Border」を推します。前者はFrith のソロとしての根幹を示し、後者は活動全体のダイジェスト的役割を果たします。そこから興味が出た方向(バンド演奏/即興/作曲)を軸に掘り下げていくと効率的です。
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参考文献
- Fred Frith — Wikipedia
- Henry Cow — Wikipedia
- Massacre (experimental band) — Wikipedia
- Step Across the Border (film) — Wikipedia
- Fred Frith 公式サイト
- RēR / Recommended Records(関連リリース情報)


