Giacinto Scelsi の音楽を極める――入門者からコレクターまでのレコード聴き方と選び方

序文:Giacinto Scelsi とは何者か

Giacinto Scelsi(1905–1988)は、イタリア出身の作曲家で、20世紀後半の実験音楽・前衛音楽の重要人物の一人です。伝統的な和声や旋律の展開よりも「単一の音(あるいは音色)の深掘り」を志向し、微分音や倍音、音の揺らぎ・持続に重点を置いた作品を多数残しました。室内楽・独奏・大編成の作品など様々なスケールの作品があり、レコード収集や鑑賞の対象としてきわめて魅力的です。

Scelsi のレコードを「買う」「聴く」意味

Scelsi の音楽は演奏や録音ごとに表情が大きく変わります。作曲の核が「音の微細な変化」にあるため、録音の音質、奏者の呼吸やダイナミクスの扱いが鑑賞体験を左右します。したがって、同じ作品でも複数の録音を聴き比べる価値が高く、レコード(LP)というアナログ媒体はその「空間感」や「残響の質」を楽しめるという点で特に相性が良いと言えます。

おすすめレコード(入門〜コレクター向け)

  • 代表作「Uaxuctum」を含む盤(大編成作品を体感する)

    「Uaxuctum」はスケールの大きい祭儀的な作品で、合唱・ソロ声・大編成オーケストラを用いた劇的な音世界を提示します。録音によって空間表現とダイナミクスの描写が大きく異なるため、信頼できる現代音楽レーベルのCD/LPを選ぶのが安心です。まずはこの作品でScelsiの“物語性”と“密度”を体験してください。

  • 「Quattro pezzi su una nota sola」などの“ワンノート”系列の録音(単音を深く聴く)

    Scelsi の代名詞的アプローチを味わうには“1音を徹底的に探る”作品群が最適です。ピアノや弦楽器、管楽器の独奏・少人数編成で録音された盤は、音色の変化、微細なテンポの揺らぎ、倍音の発現をじっくりと楽しめます。入門者は「複数の演奏家による比較盤」や“Selected Works”タイプのコンピレーションを手に入れると良いでしょう。

  • 「Canti(Canti del Capricorno, Tre Canti 等)」の声楽作品集(声のスペクトルを聴く)

    Scelsi は声の扱いにも独自の関心を持ち、倍音を引き出すような発声法や声と楽器の混成を多用しました。ソプラノや語りを前面に出した録音は、言葉の意味を越えた“声の物質性”を強く感じさせます。表現の細部を重視した録音を選ぶと、その面白さがより明瞭に伝わります。

  • Xnoybis / Anahit 等の中規模編成作品(オーケストレーションの妙)

    これらは管弦楽の色彩感や、楽器群のコントラストを通じてScelsiの音響世界を示す作品です。ステレオ・マイク配置やホールの残響が録音の評価基準になりやすいので、レビューや録音エンジニア、レーベルの評価をチェックして選ぶと失敗が少ないです。

  • ボックスや“Selected/Complete Works”タイプの編集盤(体系的に聴きたい人向け)

    Scelsi は作品数が多く、作品間の発想に連続性があるので、ある程度まとまった選集を買うと作曲家の発展や共通主題(単音/倍音/声の扱いなど)を俯瞰できます。レーベルによって選曲の傾向が異なるため、解説書(ブックレット)や楽曲解説が充実した盤を選ぶのがおすすめです。

レコード(録音)を選ぶときのポイント

  • レーベルの信頼性:

    Scelsi のような現代音楽は専門レーベル(現代音楽に定評のあるレーベルや国際的なコンテンポラリー音楽レーベル)の録音が安心です。リマスタリングや解説の充実度もチェックしましょう。

  • 演奏者/指揮者の解釈:

    同じ楽譜でも解釈が多様です。批評やレビューで「音色へのこだわり」「声や楽器のバランス」に言及しているものを優先すると、自分の好みに合った盤が見つかりやすいです。

  • 録音の音質とダイナミックレンジ:

    Scelsi の微細な音響を楽しむには録音のダイナミックレンジと解像度が重要です。可能なら試聴して、低域〜高域の繋がりや残響感を確認してください。

  • ブックレットと解説:

    曲の背景や作曲家の思想を理解すると聴取体験が深まります。信頼できる解説が付いている盤がおすすめです(英語・イタリア語の原典資料や翻訳があるとベター)。

具体的な聴き方の提案(作品別ガイド)

  • Uaxuctum

    ・最初は全曲を一度通して聴き、作品の大きな波を把握する。
    ・2回目以降は合唱やソロの箇所をクローズアップして、スペクトルの変化に注意すると新たな発見がある。

  • Quattro pezzi su una nota sola 等のミニマル寄り作品

    ・長時間の持続音や微細変化を「集中して」聴く練習になる。音量を落として細かい倍音の動きを捉えるのも有効。

  • 声の作品(Canti 系)

    ・歌詞の言語的意味を追うよりも、声のフォルマントや倍音構成に耳を向けると独特の世界が見えてくる。ヘッドフォンでの試聴もおすすめ。

購入・収集の実用アドバイス

  • 中古市場(レコードショップ、Discogs、国内外の中古CDショップ)では稀少な盤が出ることがあります。状態や音質の情報を確認してから購入してください。
  • デジタル配信にも注目。近年は高音質で再発されることがあり、先にデジタルで様子を見てから物理盤を揃えるのも効率的です。
  • 解説(ライナーノーツ)の言語が重要なら、欧文解説の有無を購入前にチェックすると良いでしょう。

聴き比べの楽しみ方(コレクター向け)

同じ作品でも録音年代や演奏スタイルによって表情が変わるため、複数盤を並べて比較するのはScelsiの醍醐味です。例えば「同じ曲のスタジオ録音 vs ライヴ録音」「旧録音のノイズや残響感 vs リマスター盤のクリアさ」などの違いを確かめると、新たな発見が増えます。

まとめ

Scelsi は「音そのもの」を掘り下げた作曲家です。レコード収集においては、作品の種類(声、独奏、小編成、大編成)ごとに代表盤を1〜2枚持ち、気に入った作品は複数の録音を聴き比べるのが理想的です。信頼できるレーベルの選択、録音の音質や解説の充実度を判断基準にすると、満足度の高いコレクションが作れます。

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参考文献