Academy of Ancient Music (AAM)とは|古楽の歴史的演奏(HIP)と名盤・聴きどころを徹底解説
Academy of Ancient Music(AAM)とは
Academy of Ancient Music(以下 AAM)は、歴史的演奏(Historical Performance / Historically Informed Performance、HIP)の手法を基盤に、バロックから古典派(およびその周辺)のレパートリーを演奏する英国のアンサンブルです。現代における古楽復興運動の代表的存在の一つで、伝統的な楽器奏法や当時の演奏習慣の研究に基づいた「当時の音」を追求することで知られます。
歴史・運営の概観
AAM の現代的組織は1970年代に結成され、創設者の一人であるクリストファー・ホグウッド(Christopher Hogwood)が長年指揮・音楽監督として率い、同楽団の国際的名声を築きました。その後もリチャード・エガー(Richard Egarr)やローレンス・カミングス(Laurence Cummings)など、歴史的演奏に精通した指揮者が芸術的リーダーを務め、研究と演奏の両輪で活動を続けています。
AAM の演奏スタイルと特徴
- 歴史的楽器と奏法:弦や管、鍵盤などに当時に近い楽器(または復元楽器)を使用し、弓や発音、装飾音の習慣も研究に基づいて再現します。これにより、現代楽器とは異なる音色やアーティキュレーションを得ます。
- ピリオド・ピッチと編成感覚:曲目や作曲時代に応じてピッチ(音高)や編成を工夫し、当時の響きのバランスを再現します。これは一人一人の声部の独立性や対位法の明瞭さを際立たせます。
- 研究志向の解釈:スコアの校訂版や史料、当時の演奏法に関する文献を参照し、テンポ、強弱、装飾、繋がり(legato/portamento 等)を音楽学的に裏付けして解釈します。ただし学術性のみならず「音楽的な説得力」を重視する点が魅力です。
- 柔軟な表現と綿密なアンサンブル:古楽の枠に閉じず、フレーズの歌わせ方やリズム感といった人間的な表現を大事にします。アンサンブルの一体感と各声部の明瞭さが両立しているのが特徴です。
レパートリーの傾向
AAM は主にバロック(バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディ、パーセル等)と古典派(ハイドン、モーツァルト、初期ベートーヴェン等)を中核に据えています。オペラや宗教曲、協奏曲、交響曲、室内楽まで幅広く手がけ、時には稀少曲の復元上演や新たな研究成果に基づくプログラムも行います。
代表的な名盤とおすすめ録音
以下は AAM を知るうえで入門になる代表的な録音例(いずれも歴史的演奏の観点で評価が高いもの)です:
- ヘンデル:メサイア(Handel: Messiah) — クリストファー・ホグウッド指揮の録音は、当時の実践を踏まえた解釈で高く評価されています。合唱とソロの扱い、アンサンブルの透明感が魅力です。
- バッハ:ブランデンブルク協奏曲(Bach: Brandenburg Concertos) — 対位法の明瞭さとリズム感、ピリオド楽器ならではの色彩感が味わえます。
- モーツァルト:交響曲/室内楽 — 古典派の軽やかさと細やかなニュアンスを追求した演奏が多く、モーツァルトの構造美が浮かび上がります。
- パーセル/ヘンデル等の英バロック作品 — 英国バロックのレパートリーに精通しているため、発語や合唱感、ダイナミクスの扱いが特に秀でています。
(個々の録音年代や指揮者の違いで音色・解釈は変化します。創設期のホグウッド録音とその後の指揮者による近年の録音を聴き比べると、AAM の解釈の変遷も興味深く感じられます。)
AAM の魅力 — 聴きどころ
- テクスチャーの明晰さ:対位法や内声の動きが明瞭に浮かび上がるので、複雑な編成でも構造が手に取るように見える感覚があります。
- 古楽の“生きた”表現:単に古い習慣を再現するだけでなく、音楽としての即興的な息遣い(装飾やテンポの柔軟性)を聴かせる点が魅力です。
- 音色の多様性:ガット弦や古様式の管楽器など、現代楽器とは異なる色合いが音楽に新たな魅力と発見を与えます。
- 学術と芸術のバランス:研究成果を活かしながらも、演奏が堅苦しくならずリスナーを惹きつける表現性を持っていること。
ライヴ体験とプログラミング
コンサートでは録音以上に、アンサンブル内での微細な呼吸や即興的な装飾がダイレクトに伝わります。AAM は時にテーマ性のあるプログラム(作曲家別、時代比較、公演テーマ)を提示し、教育的解説や前説を伴う公演も行うことがあり、古楽入門者にも親しみやすい構成が特徴です。
教育・普及活動と影響力
AAM は録音活動のみならず、若手奏者の育成やワークショップ、学校向けプログラムなどの教育活動にも力を入れており、世界の古楽シーンにおける標準的な解釈や実践に影響を与えています。その活動は、古楽の聴衆拡大や演奏技術の継承に寄与しています。
聞き方のアドバイス
- 初めてなら有名曲(メサイア、ブランデンブルク等)や短めの協奏曲で「音色」と「テクスチャーの違い」を確かめると分かりやすい。
- 異なる指揮者・時期の録音を比較すると、解釈の変遷やAAMの多面性が見えてきます。
- ライブでは奏者の息づかいや即興的装飾に注目すると、録音とはまた違った発見があります。
まとめ
AAM は歴史的演奏法の研究に根ざしつつ、音楽としての魅力を失わない柔軟な解釈で広い支持を得ているアンサンブルです。バロック〜古典派音楽の「原風景」に迫るサウンドを体験したいリスナーにとって、AAM の録音・公演は必聴といえます。
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参考文献
- Academy of Ancient Music 公式サイト
- Academy of Ancient Music — Wikipedia(英語)
- Academy of Ancient Music — AllMusic(英語)
- Gramophone(レビュー検索にて AAM の録音レビューを参照可)


