Anner Bylsmaのプロフィール|HIP時代を牽引したチェロ奏者の生涯とバッハ無伴奏チェロ組曲の解釈
Anner Bylsma — プロフィール
アナー・バイルスマ(Anner Bylsma)は、オランダ出身のチェリストで、20世紀後半における歴史的演奏実践(Historically Informed Performance, HIP)の第一線を走った演奏家の一人です。特にヨハン・セバスチャン・バッハの「無伴奏チェロ組曲」を、バロック・チェロや古楽奏法で演奏・録音し、その解釈と音色で世界的に注目を集めました。
経歴の要点(概観)
- オランダで学び、オーケストラ奏者としての基礎を築いた後、首席奏者や協奏・室内楽での活動を経て、ソロ・古楽の道へと比重を移していきました。
- バロック・チェロやガット弦、古典的な弓などを採用し、当時の奏法・音楽観を現代に甦らせる試みを積極的に行った点が特徴です。
- 録音や著述を通じて、自身の演奏理論やバロック演奏の実践を発信し、多くの演奏家に影響を与えました。
演奏スタイルと魅力 — 何が人々を惹きつけるか
- 音色と言葉性:バイルスマの音はガット弦とバロック弓による温かさと明晰さを併せ持ちます。力任せではないが豊かな響きで、フレーズの語り口(音楽の「話し方」)が非常に説得力があります。
- 舞曲性の強調:バッハの無伴奏組曲を「舞曲の連なり」として捉え、各舞曲のリズムや発語感(ダンス感覚)を明確に表出します。これにより単なる技術展示ではない「身体性」を伴った演奏になります。
- フレーズの自然さと語りの自由度:過度なルバートや劇的転換に走らず、身振りに基づいた自然なテンポ推移と形作りを行います。そのため、古楽的な「即興性」や装飾のニュアンスが生き生きと感じられます。
- 考証と実践の両立:楽器・弓・チューニング(低めのAなど)や奏法に関する歴史的資料を重視しつつ、実際の音楽表現に落とし込むバランス感覚が優れていました。
代表的なレパートリー・名盤(概説)
バイルスマのレパートリーはバロック〜古典派中心ですが、とくに以下が代表的です。
- ヨハン・セバスチャン・バッハ:無伴奏チェロ組曲 — バロック・チェロ(ガット弦・古典的な弓)による録音が特に高い評価を受け、現代のチェロ奏法やバッハ解釈に大きな影響を与えました。
- バッハのソナタや通奏低音付きの作品、古典派のソナタなど — 通奏低音奏者や古楽器アンサンブルとの協演でも多くの録音を残しています。
- その他のバロック作品や古典派作品の演奏・録音 — 彼の指向は「原理的な復元」ではなく「現代の聴衆に伝わる実演」でもあり、多彩な録音が存在します。
(注:ここでは代表的な作品群を挙げました。盤の具体的なレーベルや録音年を知りたい場合は、ディスコグラフィーを参照するとよいでしょう。)
教育と後進への影響
バイルスマは単に録音を残しただけでなく、演奏解説やエッセイを通じて自身の解釈や奏法観を発表しました。こうした文献と実践の両輪によって、多くのチェリストや古楽奏者に対して「奏法と音楽観の再考」を促し、HIP(歴史的演奏実践)運動のチェロ分野での発展に重要な役割を果たしました。
聴きどころ・鑑賞のポイント
- まずは音色に注目:ガット弦による艶やかさや抑制された倍音の美しさが、バッハのフレーズをより歌わせます。
- 舞曲ごとのキャラクターを聴き分ける:アルマンド、クーラント、サラバンド、ジグなど、各舞曲の拍感・アクセントの付け方に注目すると演奏の意図が分かります。
- ボウイングとフレーズの始まり/終わりを観察:短い支配的なボウの動き、あるいは意図的な息継ぎのような間の取り方が多くの意味を持ちます。
- 装飾と即興性:バイルスマは装飾や小さな即興を自然に取り入れることがあり、その「瞬間の判断」による表情の変化を楽しんでください。
批評的視点 — 何を評価し、何に注意するか
- 高く評価される点:歴史的根拠に基づく音色とリズム感、そして「舞曲」としてのバッハ像の提示。これにより聴衆は作品の内部構造を新たに認識できます。
- 注意点:古楽的解釈は一つのアプローチであり、演奏史的に正確だからといってすべての現代聴衆の好みに合うわけではありません。現代のモダン・チェロでの演奏とも比較して聴くと、理解が深まります。
まとめ
アナー・バイルスマは、チェロ演奏の伝統を問い直し、バロック時代の演奏慣習を現代に伝えるうえで大きな役割を果たした演奏家です。とくにバッハ無伴奏チェロ組曲の解釈は一時代を画し、その影響は現在の古楽・チェロ界にも色濃く残っています。初めて聴く方は、彼のバッハ録音を通して「音色・舞曲感・即興的表現」の三点に注目すると、彼の魅力がよく伝わるでしょう。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- Anner Bylsma — Wikipedia (EN)
- Anner Bylsma — Discogs(ディスコグラフィー参照)
- Anner Bylsma — AllMusic(略歴・レビュー)
- Anner Bylsma obituary — The Guardian


