Bill Brufordの生涯と演奏スタイル—Yes・King Crimson・Earthworksを結ぶプログレとジャズのドラマー
プロフィール
Bill Bruford(ビル・ブリフォード、1949年5月18日生まれ、イングランド・ケント州セブンオークス出身)は、プログレッシブ・ロックとジャズを橋渡しした世界的に著名なドラマー/バンドリーダーです。若くしてプロとしての演奏活動を始め、1968年から70年代初頭にかけてのYesでの活躍をきっかけに一躍注目を集め、その後King Crimsonや自身のバンド、ジャズ・ユニットEarthworksなどで独自の道を切り開きました。繊細なタッチと複雑なリズム感、音楽的な「会話」を重視するアプローチで知られ、同世代・後進の多くのミュージシャンに影響を与えています。
活動の軸と主な経歴
- Yes(1968–1972):初期のプログレッシブ・ロックシーンで頭角を現したバンドで、アルバム『The Yes Album』『Fragile』『Close to the Edge』などに参加。メロディックかつ推進力あるドラミングでバンドのサウンドに大きく寄与しました。
- King Crimson(1972–1974, 1981–1984):より実験的・即興的な音楽表現へ踏み込み、『Larks' Tongues in Aspic』『Starless and Bible Black』『Red』といった時代を築いた作品群に参加。1980年代の“Discipline”期にも合流し、ポリリズムと複雑なインタープレイを深化させました。
- Bruford(ソロ/リーダーバンド、1977–1980頃):ジャズとロックの要素を融合させた作品群を発表。『Feels Good to Me』『One of a Kind』などでは作曲・リーダーとしての側面も発揮しました。
- Earthworks(1986–2009):電子パーカッションとアコースティックを融合したジャズ志向のグループを主宰。テクノロジーを取り入れながらもインタープレイ重視の演奏で評価を得ました。
- その他、セッションやプロジェクト参加、1990年代以降のリユニオン的活動、2009年の自伝刊行など、多方面で活動。2009年頃以降は公演の頻度を下げ、執筆やアートなどにも時間を割くようになりました。
演奏スタイルとその魅力
Bill Bruford の演奏の魅力は、単なる技巧や速さではなく「音楽的判断」と「会話するリズム」にあります。以下の点が特に際立ちます。
- メロディと会話するドラミング:ドラムを単なるリズム供給手段とせず、メロディやハーモニーに反応してフレーズを作る。ソロでも「旋律的」に展開することが多く、聴き手に"語りかける"ような表現をします。
- ポリリズム/複合拍子への卓越した理解:プログレッシブ・ロックで頻出する5/4、7/8、変拍子の中でも自然さを失わない推進力を持ちます。ポリリズムを用いた微妙なズレやアクセントで楽曲に緊張感と推進力を与えます。
- ダイナミクスと空間の使い方:音量差や「間(ま)」を効果的に使い、強打ばかりではない抑制のある表現が特徴。曲の盛り上がりを助長するためのクレッシェンドや逆に刈り取る沈黙の使い方が非常に洗練されています。
- ジャズ的感覚の導入:即興やスウィング感、インタープレイをロックの文脈に自然に落とし込み、従来のロックドラミングとは一線を画すフレージングを実現しました。
- テクノロジーとの共生:Earthworks期には電子パッドを導入して音色や表現の幅を拡張。技術革新を味方につけながら、あくまで音楽性を優先する使い方をしました。
代表曲・名盤(聴きどころとともに)
- Yes – Fragile(1971)
「Roundabout」をはじめとした名曲群でのドライブ感あるビートと繊細なタッチが両立。ブリフォードのダイナミクス感覚がよく分かります。
- King Crimson – Larks' Tongues in Aspic(1973) / Starless and Bible Black(1974) / Red(1974)
実験性と即興性が前面に出た時期。フリーな展開や重厚なインタープレイでの役割が非常に印象的です。特に「Larks' Tongues in Aspic」では打楽器的アプローチが多彩に表現されています。
- Bruford – Feels Good to Me(1978) / One of a Kind(1979)
リーダー作における作曲性とバンド作りのセンスが光る。ジャズ/フュージョン志向の作品群で、ブリフォード自身の音楽観が色濃く出ています。
- Earthworks – Earthworks(1987)ほか
電子パーカッションを取り入れた先進的なジャズ・ユニット。即興性とテクノロジーの調和が魅力です。
- King Crimson(1981–84) – Discipline, Beat, Three of a Perfect Pair
マルチメトリックで精緻なアンサンブル。数字的な複雑さを感じさせないスウィングと推進力が特徴です。
なぜ多くの聴衆・音楽家に支持されるのか
- 単なるテクニック自慢に陥らず、楽曲への貢献を第一に考える姿勢。
- ロックのエネルギーとジャズの即興性を自然に融合させたユニークな立ち位置。
- 複雑なリズム構造を聴きやすく美しく鳴らす「審美眼」と演奏技術。
- 長年にわたる多様なプロジェクト(バンドやソロ、ジャズユニット)で培った柔軟性とリーダーシップ。
聴く/学ぶためのポイント
- 個々の楽曲で「何を語っているか」を意識してドラムのフレーズを追う。フレーズはリズムだけでなくメロディやテクスチャに反応している。
- 変拍子やポリリズムの箇所では、ベースやギター/キーボードとの「対話」に注目すると理解が深まる。
- 音量差や間(ま)の使い方、強打しない場面の美しさを意識して聴くとブリフォード流の表現が見えてくる。
- Bruford期やEarthworks期など時期ごとのサウンドの違いに注目すると、その時々の音楽的志向が掴める。
影響と遺産
Bill Brufordはプログレッシブ・ロック/ジャズ双方の界隈で重要な存在です。後続のドラマーたちに「複雑なリズムを音楽的に表現する」ことの可能性を示し、またバンド内での“会話”を重視する姿勢はアンサンブルのあり方自体に影響を及ぼしました。テクノロジーの導入に積極的だったことも、現代のドラム演奏の多様化に寄与しています。
まとめ
Bill Brufordの魅力は「技巧」ではなく「音楽的判断」にあります。彼の演奏はリズムを超えて旋律やハーモニーと絡み合い、聴き手にストーリーを伝えます。YesやKing Crimsonのプログレッシブな名曲群での躍動から、Bruford自身のバンドやEarthworksで見せたジャズ的探究心まで、幅広い作品を通じてその多面的な魅力を味わうことができます。ドラムを学ぶ人はもちろん、音楽全般を深く聴きたい人にとっても、Brufordの演奏は学びと刺激に満ちています。
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