Ian Paiceのドラミング解剖—ディープ・パープルの心臓を支えたリズムの極意

イントロダクション — Ian Paiceとは

Ian Paice(イアン・ペイス)はイギリス出身のロックドラマーで、1968年に結成されたディープ・パープル(Deep Purple)の創設メンバーの一人として知られています。生年月日は1948年6月29日。ハードロック/ヘヴィメタルの黎明期から現在に至るまで第一線で活躍し続けている数少ないドラマーの一人であり、バンドのサウンドを支える“心臓部”としての評価が高い人物です。

経歴の概略

  • 初期:地元のバンドでの経験を経て1968年にディープ・パープル結成に参加。初期から卓越したテクニックとグルーヴで注目を集めた。
  • ディープ・パープルの黄金期:1970年代のMK II期(Gillan/Blackmoreらと共に)は特に勢いがあり、『In Rock』『Machine Head』『Made in Japan』といった名盤で重要な役割を果たした。
  • サイドプロジェクト:バンド活動の合間にPaice Ashton Lord(PAL)などのプロジェクトにも参加し、ロック以外の要素も取り入れた演奏を行った。
  • 再結成以降:1984年のディープ・パープル再結成以降も主要メンバーとして活動を継続。長年にわたるツアー/レコーディングで堅実なプレイを提供している。

演奏スタイルと技術的特徴 — なぜ多くのミュージシャンに敬意を払われるのか

Ian Paiceの魅力は単に速さや派手さだけにあるわけではなく、「音楽に寄り添うドラミング」にあります。以下がその主なポイントです。

  • リズム感とグルーヴ:Paiceのドラミングはロックの強さとグルーヴ感を両立させており、ボトムを安定させながら楽曲を推進する力がある。単に"叩く"のではなく、楽曲構造に合わせた揺らぎやアクセントの付け方が巧み。
  • ジャズ的要素の融合:トラディショナルなロックドラミングの範疇にとどまらず、スウィング感や細かなタッチ(ゴーストノートやスネアのニュアンス)を取り入れているため、表現力が豊か。
  • ダイナミクスの使い分け:曲中での強弱・間(ま)・フレージングを意識した演奏が多く、同じフレーズでも曲の展開に応じて音量・強さを効果的に変化させることでドラマを作り出す。
  • フレーズ志向のフィル:フィルインは単なる「埋め」ではなくフレーズとして機能し、ギターやキーボードのリフに対する応答やカウンターラインを作ることが多い。これがバンド全体の相互作用を高める。
  • 安定したスタミナと一貫性:長いツアーやラウドなライブでも崩れない安定感があり、バンドの基盤として信頼される存在である。

代表曲・名盤と聴きどころ

  • In Rock(1970) — ディープ・パープルの音楽性をロック寄りに完成させた重要作。Paiceの力強いビートがアルバム全体を牽引する。
  • Machine Head(1972) — 「Smoke on the Water」を含む不朽の名盤。特に「Highway Star」や「Space Truckin'」では高速かつ精度の高いドラミングが楽しめる。
  • Made in Japan(1972、ライブ) — ライブにおけるPaiceの即興性とエネルギーが色濃く出ている。ライブならではのダイナミクスやドラムソロの冴えを体感できる。
  • Fireball(1971) — 「The Mule」などで聴けるPaiceのソロや変拍子的なフレーズが際立つ作品。
  • Perfect Strangers(1984) — 再結成後の重要作。成熟した技術でバンドを支えつつ、往年のパワーも健在であることを示したアルバム。

ライブでの見どころ — 聴き方のポイント

  • イントロや間奏時に現れる微妙なアクセント(スネアの位置取りやハイハットの開閉)を注目すると、Paiceの「歌心」がより理解できる。
  • ソロパートや長尺のインストでは、単なる速さではなく変化を付けるテクニック(テンポの微妙な増減、ダイナミクスの変化)に耳を傾けると面白い。
  • バンド全体のサウンドにおける「間(ま)」の使い方を見ると、Paiceが如何にして他の楽器と会話しているかがわかる。

人柄とステージ上の存在感

長く第一線にいる理由のひとつに、彼のプロフェッショナリズムと謙虚さが挙げられます。派手なパフォーマンスよりも楽曲に奉仕する姿勢を重んじ、バンドの一部としての役割を全うするタイプです。また、ツアーを重ねても演奏の質を落とさない責任感と体力が、メンバーやファンからの信頼につながっています。

後世への影響と評価

Ian Paiceは、ハードロック/ヘヴィメタルのドラミングの基礎を築いた一人として高く評価されています。テクニックだけでなく“曲を歌わせる”ドラミングは多くのドラマーに影響を与え、ディープ・パープルの音楽的躍動感の要として、その功績は広く認められています。

初心者ドラマーが学べるポイント

  • 楽曲を第一に考える姿勢:派手なフレーズよりも、曲を前進させるビートを優先すること。
  • ダイナミクスの重要性:強弱の使い分けが演奏の説得力を左右する。
  • ジャズ的タッチの応用:ゴーストノートやタイトなライド/ハイハットワークでグルーヴを作る。
  • 安定した基礎体力と反復練習:長時間のステージでの一貫性は技術と体力の双方から生まれる。

まとめ — Ian Paiceの魅力とは

Ian Paiceの魅力は、技巧と感性のバランス、そして「楽曲に奉仕するドラミング」という信念にあります。彼のプレイは単に速く叩くことではなく、リズムで物語を紡ぐことに重きが置かれており、そのために多くのリスナーや演奏者から長年にわたって敬愛されています。ディープ・パープルの歴史を支え続ける“心臓”として、今後もその存在感は色あせることがないでしょう。

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参考文献