セブンスコード入門：理論・機能・実践的アレンジとボイシング

2025年12月2日 最終更新日時 : 2025年12月2日 エバープレイ編集部

はじめに

セブンスコード（7th chord）は、3度を重ねて出来る四和音であり、和声の動きや色彩を大きく左右する重要な要素です。クラシック、ポピュラー、ジャズなどあらゆる音楽ジャンルで不可欠な存在であり、単なるコードへの付加的な響きに留まらず、機能的な進行やテンションの形成、メロディとの絡み合いに深く関与します。本稿では、セブンスコードの基礎から応用、実践的なボイシングや耳のトレーニング法までを幅広く、かつ厳密に解説します。

セブンスコードの構成と基本的な種類

セブンスコードは、根音（1度）に長3度または短3度を重ね、その上にさらに3度を重ねることで作られる四和音です。基本的な種類は次のとおりです。

  • メジャー7（Maj7, Δ, M7）：根音・長3度・完全5度・長7度。例：Cmaj7 = C–E–G–B。やわらかく安定した響き。
  • ドミナント7（dom7, 7）：根音・長3度・完全5度・短7度。例：C7 = C–E–G–Bb。V7の機能で強い導音感を持つ。
  • マイナー7（m7）：根音・短3度・完全5度・短7度。例：Cm7 = C–Eb–G–Bb。落ち着いたがやや不安定な響き。
  • ハーフ・ディミニッシュ（m7♭5, ø7）：根音・短3度・減5度・短7度。例：Cø = C–Eb–Gb–Bb。短調のiiøやviiøで現れることが多い。
  • フル・ディミニッシュ（dim7, °7）：根音・短3度・減5度・減7度（すなわち6度の enharmonic）。例：C°7 = C–Eb–Gb–Bbb（実際にはA）。対称構造を持ち、転回が容易。

表記と記号

ポピュラーとジャズの表記は簡略化されがちです。代表的な表記例を挙げます。

  • Cmaj7, CΔ, CM7 → メジャー7
  • C7 → ドミナント7（特に「7」のみで短7度を意味することが多い）
  • Cm7 → マイナー7
  • Cm(Maj7) → マイナー・メジャー7（短3度と長7度を持つ。映画音楽等でスコアリングに使われる）
  • Cø7, Cm7b5 → ハーフ・ディミニッシュ
  • C°7 → ディミニッシュ7（完全対称の動きで転回しても形が変わらない）

機能と進行—なぜ7thが重要か

セブンスは和音の機能を明示し、特にドミナント7は解決の力が強いことで知られます。ドミナント7の3度（導音）は主音へ上行、短7度（副導音）は主音の長3度へ下行するというトライトーン（増4度/減5度）の解決が基本です。例えばG7（G–B–D–F）はCmaj7へ進行すると、B→C、F→Eという動きで強い終止感を生みます。

また、セブンスは二次的な機能にも多用されます。V/V（属の属）などの二次ドミナントや、ii–V–I（短調では iiø–V–i）のような連続は、和声進行を滑らかかつ方向性のあるものにします。短調ではVII7（降七のドミナント）や借用和音としての応用も多く、色彩を豊かにします。

ボイシングと実践的アレンジ

ピアノやギターにおけるセブンスのボイシングは、機能とジャンルによって変わります。重要なのは「ガイドトーン（3度と7度）」を意識することです。これら2音の動きだけで和声の方向性が分かることが多いからです。

  • ピアノ：ルートを省いたルートレスVoicing（例：右手に3rd,7th,9thを置く）はコンピングで有効。ドロップ2、ドロップ3などのクラシック由来の配置も使われます。
  • ギター：ドミナント7はバレーや開放弦で特徴的なシェイプが存在。ルートをベースにしつつ3度と7度を中音域に置くことでコードの機能を出しやすい。
  • シェルVoicing：3度と7度、5度のみの簡潔な形でコンピングに適する。テンションを加えたい場合は9thや13thを上に入れる。

エクステンションとアルタレーション

セブンスコードは上に9th,11th,13thを積むことでテンションを生みます。特にジャズではこれらを高度に操作します。

  • 9th（9,♭9,♯9）：柔らかい色から刺激的な色まで表現可能。ドミナント上の♭9は強い解決感を生む。
  • 11th（11,♯11）：ナチュラル11は時に3度と衝突するため注意。♯11はリディアンスケール的な明るさ。
  • 13th（13,♭13）：テンションの拡張で、和音の温度を変える。ドミナントにおける♭13はaltered系の響きになる。

アルタード・スケール（Super Locrian）や半音/全音スケールなど、スケール選択はテンションとアルタレーションを正しく演奏するために不可欠です。

分析と楽曲への応用例

ポピュラー音楽では、セブンスは進行に滑らかさとブルース的な色を与えます。ブルース・ロックではI7-IV7-V7が典型。ジャズではii–V–Iが基礎で、様々な置換（tritone substitution：例えばDb7をG7の代わりに使う）や循環進行により豊かなハーモニーが作られます。クラシックでは四和音は機能和声内で部分的に使われ、特にロマン派以降は色彩的な用法が増えました。

耳のトレーニングと実践的練習法

セブンスを聴き分け、即座に使えるようにするには段階的な練習が有効です。

  • 聞き分け：メジャー7とドミナント7、マイナー7の違いを反復して聴く。短7度と長7度の違い（安定感の違い）に注目する。
  • ガイドトーン練習：コード進行で3度と7度だけを弾き、どのように解決するかを確認する。
  • スケール適用：各セブンスに対するスケール（メジャー、ミクソリディアン、ドリアン、ロクリアン、アルタードなど）を実際にソロで使ってみる。
  • 声部書法：四声体で各音の動きを書き出し、なめらかな声部進行を作る練習。

まとめ

セブンスコードは和声の方向性を決定し、豊かな色彩と機能性を与える中心的な要素です。理論的には単純な「三度の積み重ね」ですが、そのバリエーションと運用は非常に広く、ジャンルごとに異なる慣用や技法があります。特にガイドトーン（3度と7度）とテンションの関係を理解し、実際の演奏でボイシングとスケールを使い分けられることが、実践的な上達の鍵となります。

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