BWVとは何か:バッハ作品目録の仕組みと聴きどころガイド

BWVとは

BWVは「Bach-Werke-Verzeichnis」の略で、日本語では「バッハ作品目録」と訳されます。20世紀半ばにドイツの音楽学者ヴォルフガング・シュミーダー(Wolfgang Schmieder)によって編纂され、J.S.バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685–1750)の作品に一意の番号を与えたカタログです。今日ではバッハ作品を識別・参照するための国際的な標準となっており、演奏会のプログラム、録音、楽譜、学術文献などで広く使用されています。

作成の背景と歴史

19世紀にはバッハの作品はバッハ全集(Bach-Gesellschaft-Ausgabe)などで出版されましたが、作品の整理や参照の統一には限界がありました。シュミーダーは1940年代から1950年代にかけて既知の作品を体系的に整理し、1950年に『Bach-Werke-Verzeichnis』としてまとめて発表しました。シュミーダーの目録は作品を成立年代順ではなく、ジャンルごとに分類して番号を付与する方式を採用した点が特徴です。

BWVの構成と番号付けの原理

BWVの大きな特徴は「ジャンル別の配列」にあります。シュミーダーはバッハの作品をカンタータ、宗教曲、器楽曲、鍵盤楽曲、管弦楽曲、室内楽、オルガン曲などのカテゴリーに分け、それぞれのジャンル内で連続した番号を与えました。このため、BWV番号から作品の種類がおおよそ推測できます(例:チェロ組曲はBWV 1007–1012、鍵盤曲の代表作はBWV 846以下など)。しかし番号は作曲順を示すものではありません。

さらに、真作性や断片的な作品、関連資料などをまとめた付録として『Anh.(Anhang、付録)』が設けられています。Anh.には偽作(後世の作曲家による作品)や作曲者不詳の作品、現存しないとされる作品のリストが含まれており、研究の進展により本編への移動や削除が行われることがあります。

代表的なBWV番号と作品例

  • BWV 1–224(カンタータ群の中心):バッハの教会カンタータや世俗カンタータが多く含まれます。
  • BWV 232:ミサ曲ロ短調(Mass in B minor)— バッハの宗教音楽の最高峰の一つ。
  • BWV 244:マタイ受難曲(St Matthew Passion)— 大規模な受難曲で、宗教曲の金字塔。
  • BWV 245:ヨハネ受難曲(St John Passion)— 受難曲のもう一つの重要作。
  • BWV 248:クリスマス協奏曲(Christmas Oratorio)— クリスマス時期の連作オラトリオ。
  • BWV 846–893:平均律クラヴィーア曲集(The Well-Tempered Clavier)— 2巻からなる鍵盤教材かつ芸術作品。
  • BWV 988:ゴルトベルク変奏曲(Goldberg Variations)— 変奏曲形式の傑作。
  • BWV 1007–1012:チェロ組曲(Cello Suites)— 無伴奏チェロの代表作群。
  • BWV 1046–1051:ブランデンブルク協奏曲(Brandenburg Concertos)— 協奏曲形式の多彩な作品群。
  • BWV 565:トッカータとフーガ ニ短調(Toccata and Fugue in D minor)— オルガン曲として有名ですが、作曲者や起源に関しては議論が続いています。
  • BWV 1079・1080:『音楽の捧げ物』(Musical Offering)や『フーガの技法』(The Art of Fugue)— 対位法と作曲技法の極致。

BWVの学術的意義と現代利用

BWVは単なる番号付けを超え、バッハ研究や演奏史の基盤として機能しています。例えば新発見の写本や楽譜研究により、ある作品の真作性が疑われればBWV本編から付録(Anh.)へ移されることがあり、逆に付録から本編へ復帰することもあります。演奏家やレコード会社はBWV番号を用いて作品を正確に表記し、聴衆や研究者が同一作品を確実に特定できるようにしています。

また、現代では『Bach Digital』(バッハ・デジタル)などのデジタル・アーカイブがBWVに基づいたデータベースを提供し、原典や写本の画像、校訂情報、リストなどを参照できるようになっています。批判校訂としての『Neue Bach-Ausgabe(新バッハ全集)』も、BWVと併せて信頼できる版を提供してきました。

真偽問題とカタログの限界

BWVは非常に有用ですが、完璧ではありません。主な限界は以下のとおりです。

  • 番号は作曲順を示さない:ジャンル別配列のため、成立年代の推定には別途研究が必要です。
  • 真作性の不確定:写本研究やスタイル分析の進展により、従来本編に入っていた作品が偽作と判断される例があります(あるいはその逆もあります)。
  • 新発見への対応:新たに発見された作品は既存の番号体系に組み込むのが難しく、付録扱いにされたり、順序に関係なく高い番号が振られたりします。

例えばBWV 565(トッカータとフーガ ニ短調)は長年バッハの代表的オルガン曲として親しまれてきましたが、近年の音楽学的検討では楽曲の起源や編曲の可能性について議論があり、真作性に懸念を示す研究者もいます。こうした議論はBWVの運用と解釈が静的でないことを示しています。

リスナーと演奏家のための実用ガイド

BWV番号を知っていると、録音や楽譜を探すときに便利です。以下は具体的な活用法です。

  • ストリーミングやCD検索:作品名だけでなくBWV番号で検索すれば同一作品の異なる編曲や演奏を容易に見つけられます(例:"BWV 1007")。
  • 楽譜の照合:IMSLPやBach Digitalなどでスコアを探す際にBWV番号を用いると目的の作品に直行できます。
  • プログラミングとデータ管理:音楽ライブラリを整理する際にBWVはメタデータとして最適です。
  • 研究・解説の参照:学術論文や解説記事ではBWV番号が参照標準なので、出典を辿る際に役立ちます。

まとめ

BWVはシュミーダーによるバッハ作品の体系化という偉業で、現代の音楽文化において欠かせない参照体系となっています。番号はジャンル別に配列されており、真作性の問題や新発見への対応など課題もありますが、演奏家・研究者・リスナーにとって強力な道具です。BWVを手がかりに名作を探し、原典や新版校訂、デジタル資源にあたることで、より深くバッハの音楽理解を深めることができます。

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参考文献