タックコートとは?舗装工事で欠かせない接着層の役割と施工ポイントを徹底解説

道路舗装の耐久性を高めるために欠かせない工程のひとつが**タックコート(Tack Coat)**です。
アスファルト舗装の現場では、表層・基層・上層を重ねて舗設する際、層同士の密着を強化するためにタックコートが必ずと言ってよいほど使用されます。

本記事では、タックコートの役割、材料、施工方法、注意点まで、舗装工事の品質を左右する重要ポイントを分かりやすく解説します。


タックコートとは?

タックコートとは、アスファルト舗装における層間(インターレイヤー)の接着力を高めるために、既設の舗装面や基層面に散布するアスファルト乳剤のことです。

舗装は複数の層(路盤 → 基層 → 表層)で構成されますが、層間が剥離すると:

  • わだち掘れ
  • ひび割れ(クラック)
  • 表層の浮き・剥離
  • 道路寿命の短縮

といった不具合の原因となります。

これを防ぐため、次の舗装層を施工する前に接着剤として乳剤(アスファルトエマルジョン)を散布する工程がタックコートです。


タックコートの役割

● 1. 層間の接着力を高める

舗装層同士をしっかり密着させることで、走行荷重が均等に伝わり耐久性が向上します。

● 2. 層間剥離を防止

雨水の侵入や交通荷重による剥離を防ぎ、舗装の長寿命化につながります。

● 3. 工事品質の安定化

施工ムラがあると道路寿命に大きく影響します。適切な散布量と乾燥時間が重要です。


タックコートに使われる材料

一般的には次のアスファルト乳剤が使用されます。

● PK-3(高粘度速乾型乳剤)

→ もっとも一般的。速乾性が高く、通常の道路舗装で広く使用。

● RSS-1、RS-2など(ラピッドセット型)

→ 乾燥が早く、交通規制時間が短い現場に向く。

● 高粘度型(ストロングタイプ)

→ 交通量が多い道路や重交通向け。

材料の選定は自治体仕様書・現場条件によって異なります。


タックコートの施工方法

一般的な施工手順は次の通りです。

1. 舗装面の清掃

  • 砂・ほこり・泥・剥離物を完全に除去
  • 清掃が不十分だと接着力が低下する

2. アスファルト乳剤の散布

散布方法は主に2つ:

  • 散布車(スプレーヤー)で均一に散布
  • 端部や細かい部分は手動噴霧器で補完

3. 乳剤の破乳を待つ(乾燥時間)

乳剤が黒く変わり、粘着力を持つ状態まで乾燥させる。

※乾燥前に舗設すると剥離の原因となる。

4. 次層のアスファルトを舗設

ローラー転圧で密着性を高め、施工品質を確保する。


適切な散布量の目安

タックコートの散布量は仕様により異なりますが、
一般的な目安は 0.2〜0.5 L/㎡(乳剤のまま散布した場合)

  • 少なすぎる → 接着力不足
  • 多すぎる → 乳剤が浮いて滑りの原因になる

舗装品質に直結するため、散布量の管理は非常に重要です。


タックコート施工の注意点

● 乾燥前に施工しない

「破乳(はにゅう)して黒く変わる」までは絶対に待つ。

● 雨天では施工しない

乳剤が流れてしまい、接着不良の原因になる。

● 清掃不良を避ける

砂・泥の上に散布しても接着性は得られない。

● 散布ムラを防ぐ

特に端部・縁石まわりはムラが起きやすいため、手作業で丁寧に補完する。

● 養生時間と交通開放の管理

乾燥時間が十分でないまま交通を開放すると、剥離を誘発する。


タックコートとプライムコートの違い

舗装工事では混同されやすいが、役割は異なります。

種類用途・役割
タックコート舗装層同士の密着強化(基層と表層間など)
プライムコート路盤と基層の接着、防塵、防水

タックコートは「層間」、プライムコートは「路盤と舗装の間」に使用する点が大きな違いです。


まとめ

タックコートは、アスファルト舗装における層間の接着力を確保するための重要工程です。
施工ムラや乾燥不足があると道路寿命に大きく影響し、不具合の原因となります。

  • 適切な散布量
  • 破乳を待つ
  • 清掃の徹底
  • ムラのない散布

これらが品質確保のカギとなり、耐久性の高い道路を造るための重要ポイントです。


参考文献