The Move(ザ・ムーヴ)完全ガイド:ロイ・ウッド発の英国ロック名曲・名盤とELOへの系譜
The Move — プロフィール
The Move(ザ・ムーヴ)は、1960年代中盤にイギリスのバーミンガムで結成されたロック・バンドです。中心人物はマルチ楽器奏者で作曲家のロイ・ウッド(Roy Wood)。他の主要メンバーにはボーカリストのカール・ウェイン(Carl Wayne)、ドラマーのベブ・ビーヴァン(Bev Bevan)、ギタリスト/ベーシストのトレヴァー・バートン(Trevor Burton)、そして後にキーボードでリチャード・タンディ(Richard Tandy)が参加しました。1966年のデビュー以来、シングル志向のポップ・センスとサイケデリック、そしてブリティッシュ・ロックのヘヴィな要素を自在に行き来することで注目を浴び、1970年代初頭にかけてヒットを連発しました。
歴史的背景と転機
The Moveは「シングルで成功を掴む」ことを重視するブリティッシュ・ポップの伝統を受け継ぎつつ、ロイ・ウッドの旺盛な創作力によりスタジオ実験をも取り入れていきました。1967年ごろのサイケデリック期を経て、1968年前後にはよりメロディ重視のポップ寄りナンバーやビート色の強いロック、さらにはバロック的なアレンジまで多彩な音楽性を提示しました。
バンドの後期にはロイ・ウッドとビーヴ・ビーヴァンが、ジェフ・リン(Jeff Lynne)らとともにElectric Light Orchestra(ELO)を立ち上げる動きが出始め、The Moveはその成り立ちと音楽的架け橋としての役割も果たしました。ロイ・ウッド自身はその後Wizzardを結成し、さらなる実験と派手なステージ表現へ向かいます。
音楽的特徴と魅力の深掘り
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多彩な作曲センスと編曲力
ロイ・ウッドの作曲はポップなメロディラインを軸に、クラシック的なストリングスやブラスの投入、オルガンや変則コード進行などを組み合わせることが多く、短いシングル曲の中に “凝ったアレンジ” を詰め込むのが特徴です。結果として一聴して耳に残るキャッチーさと、聴き込むほどに発見のある層を持ちます。
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ジャンル間を横断する柔軟性
初期のサイケデリック・ポップから、ビート感あるロック、メロウなバロック・ポップ、さらにはハードなギターサウンドまで、The Moveはジャンルの境界にこだわらず楽曲ごとに色を変えました。この“移動(move)”するようなスタイルはバンド名にも通じる自由さです。
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シングル志向の強さ
1960年代の英国シーンにおける“ヒットを狙う”作法を持ちながらも、単なる商業主義にとどまらず、A面曲に凝ったアイデアを詰めることで一曲ごとに強い印象を残しました。短時間で耳をつかむフック作りの巧みさは突出しています。
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ステージ表現とビジュアル
ライブではテンポの良い演奏や曲ごとの表情の切り替えが映え、同時代のバンドと比べても演奏の幅広さが魅力でした。ロイ・ウッドの後のWizzardで見られる派手な衣装や演出は、The Move期からの延長線上にあります。
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ELOへと繋がる音楽的ブリッジ
The Move後期の楽曲にはオーケストレーション志向やクラシカルなアプローチの兆しがあり、これがELO誕生の土壌になりました。メンバーの一部がELOに参加/協力したこともあり、The Moveは70年代のサウンド進化に直接影響を与えています。
代表曲と名盤(聴きどころガイド)
以下はThe Moveを知る上で押さえておきたい代表曲と、初めて聴く人におすすめのアルバムです。
代表曲(抜粋)
- Night of Fear(1966)— デビュー期のサイケデリック色が強いヒット。スリリングなリフとキャッチーなコーラスが印象的。
- I Can Hear the Grass Grow(1967)— メロウでありながら不思議な浮遊感がある曲。ロイ・ウッドのポップ感覚がよく出ています。
- Flowers in the Rain(1967)— 当時大きな話題になったシングル。リリースを巡る広報活動が物議を醸したことでも知られています。
- Fire Brigade(1968)— ガレージ/ビート感の強いロック・ナンバー。エネルギッシュでライブ向けの一曲。
- Blackberry Way(1968)— よりポップ寄りで英国チャートのトップに立った楽曲。メロディの美しさが際立ちます。
- Brontosaurus(1970)— ハードなギターと力強い演奏で、バンドのロック志向を前面に出した曲。
- Do Ya(1971)— ロックンロール的な勢いを持ち、後にジェフ・リン率いるELOでも再録されるほど強いメロディを持つ曲。
おすすめアルバム
- Move(デビュー・アルバム) — 初期の多彩な側面(サイケ/ポップ/ビート)が詰まった作品。シングル曲のエッセンスが濃く感じられます。
- Looking On(1970) — よりロック寄りの音作りが強まり、演奏力やアンサンブルの厚みが増した1枚。バンドの進化を理解するのに適しています。
- Message from the Country(1971) — The Moveの後期を代表するアルバムで、ポップとロックの融合、そしてELOへとつながる要素が色濃く出ています。名曲「Do Ya」などを収録。
- ベスト/コンピレーション — シングル中心のバンドなので、編集盤やベスト盤で主要シングルをまとめて聴くのも入門として非常に有効です。
演奏とレコード的な聴き方(音楽体験の提案)
The Moveは“一本の曲に意外性を詰め込む”ことが多いため、繰り返し聴くことでアレンジの妙や細部の演奏表現が見えてきます。シングルA面のキャッチーさを第一に楽しみつつ、アルバム単位で聴くと曲間の流れやスタジオでの実験性がよく分かります。
影響と遺産
The Moveは1970年代以降のブリティッシュ・ポップ/ロックに複数の影響を残しました。特にロイ・ウッドのメロディメイキングと編曲感覚はELOやWizzardを通じて発展し、短い楽曲に凝縮されたアイデアは後のミュージシャンにも刺激を与えています。また、シングル中心でありながらアルバム表現でも強い存在感を示した点は、60年代末から70年代初頭の音楽的移行期を示す重要な事例です。
聴く順・入門ガイド
- まずは代表的シングル(Night of Fear / I Can Hear the Grass Grow / Flowers in the Rain / Fire Brigade / Blackberry Way)で「顔」をつかむ。
- 次に『Move』→『Looking On』→『Message from the Country』の順でアルバムを聴き、バンドの変遷と音楽性の広がりを追う。
- さらに興味があれば、ロイ・ウッドやELO、Wizzardの作品を聴いて派生したサウンドとの対比を楽しむと理解が深まります。
まとめ — The Move をどう楽しむか
The Moveは短い曲の中に豊かなアイデアを詰め込み、ポップでありながら実験性も持つバンドです。その多面的な魅力は、シングルのキャッチーさ、アルバムでの深掘り、そして後のELOやWizzardへと続く創造性の連鎖にあります。ロイ・ウッドという特異な作家性とバンドメンバーの演奏力が合わさった結果生まれた音楽群は、60〜70年代のロックを俯瞰するうえで欠かせない存在です。まずは代表曲で耳を掴み、アルバムで全体像を味わってみてください。
参考文献
- The Move - Wikipedia
- The Move Biography — AllMusic
- BBC Music — The Move(関連記事)
- The Move — Discogs(ディスコグラフィ参照)
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