ヴィニシウス・デ・モラエス入門:ボサノヴァ&アフロ=サンバのおすすめ名盤5選と選盤・購入ガイド
はじめに — ヴィニシウス・デ・モラエスという存在
Vinícius de Moraes(ヴィニシウス・デ・モラエス、1913–1980)は、ブラジルを代表する詩人であり作詞家、そして音楽シーンに深い影響を与えた文化人です。詩的で情感豊かなポエトリーはボサノヴァやサンバの名曲群に命を吹き込み、多くのミュージシャンと共作を行いました。本コラムでは、ヴィニシウスの作品世界を聞くうえで特におすすめしたいレコード(アルバム)を掘り下げ、曲の背景や聴きどころ、購入や選盤でのポイントまで詳しく解説します。
ヴィニシウス入門:知っておきたい背景
- 詩人としてのスタート:モラエスはまず詩人・作家として知られ、文学的感性がリリックに色濃く表れます。
- 重要な共作者:アントニオ・カルロス・ジョビン(Tom Jobim)、バーデン・パウエル(Baden Powell)、Toquinho、そして多くの歌手たちと連携。
- リリックの特徴:愛、憂愁、宗教的・民族的モチーフ(特にアフロ=ブラジリアン要素)を繊細に表現。
おすすめレコード 1:Canção do Amor Demais(Elizete Cardoso, 1958)
なぜ聴くべきか:技術的にはElizete Cardosoのアルバムですが、ヴィニシウスとトム・ジョビンの作風が結実した“初期ボサノヴァの象徴”とされる一枚です。歴史的意義が大きく、ヴィニシウスの歌詞がボサノヴァ・ムーブメントに与えた影響を理解するうえで必携です。
- 代表曲(本作で重要なもの): 「Chega de Saudade」(ジョビン作曲、ヴィニシウス作詞)など
- 聴きどころ:エリゼッチ・カルドーゾの歌唱を通じて響く詩語の抑揚、トムやジョアン・ジルベルト(※ギター参加)のアレンジ感覚。
- 選盤のヒント:オリジナル盤(ブラジル盤)は音色に独特の温度感がありますが、良いリマスターCDや高品質な再発盤でも充分にその価値は味わえます。
おすすめレコード 2:Os Afro-Sambas(Baden Powell & Vinícius de Moraes, 1966)
なぜ聴くべきか:ヴィニシウスとバーデン・パウエルが共同で取り組んだアルバムで、アフロ=ブラジリアンの宗教的リズム(カンドンブレ等)とサンバ/ジャズの融合を試みた傑作。歌詞は民俗的・宗教的イメージに満ち、ヴィニシウスの詩才が新たな文脈で開花します。
- 代表曲例: 「Canto de Ossanha」や「Berimbau」など(いずれも深い宗教的・リズミックな色合いを持つ)
- 聴きどころ:打楽器と弦楽が織りなす独特のテクスチャー、ヴィニシウスの詩的比喩や祭祀的イメージの強さ。
- 選盤のヒント:オリジナルのアナログはコレクターズアイテム。再発では音質・ライナー解説の充実度をチェックすると良いでしょう。
おすすめレコード 3:En La Fusa — Vinícius, Toquinho & Maria Creuza (Live)
なぜ聴くべきか:1970年前後に録音されたライブ盤で、ヴィニシウスの朗読的な歌唱とToquinho(ギター)およびMaria Creuzaの歌声が絶妙に調和した人気作です。大衆に寄り添うレパートリーから深い詩情を感じさせる曲まで、ライブならではの温度と即興感が魅力。
- 代表曲例: 「Garota de Ipanema(イパネマの娘)」をはじめ、ヴィニシウス/ジョビン作品や新録アレンジのライブ・バージョンが多数。
- 聴きどころ:ヴィニシウスの語り(ポエトリー)とトキーニョのギター・フレーズ、Maria Creuza のナイーブで深い歌唱の掛け合い。
- 選盤のヒント:ライブ盤は複数のタイトル/ジャケットで流通していることが多いので、曲目と録音年(会場)を確認して名演録音を選びましょう。
おすすめレコード 4:Black Orpheus 関連録音(映画『黒いオルフェ』の楽曲集)
なぜ聴くべきか:ヴィニシウスは映画『黒いオルフェ(Orfeu Negro)』に関連する楽曲群(「A Felicidade」「Manhã de Carnaval」など)で知られ、これらは国際的にブラジル音楽を代表するレパートリーとなりました。詩と旋律が映画の情景に深く溶け込み、ヴィニシウスの言葉が世界へ届いた好例です。
- 代表曲: 「A Felicidade」「Manhã de Carnaval」など(トム・ジョビンなどとの共作)
- 聴きどころ:映画的な情感、ノスタルジックなメロディと詩の結びつき。原語ポルトガル語の響きを重視して聴くのがおすすめです。
- 選盤のヒント:サウンドトラックやトリビュート盤など形態は様々。オリジナル・サントラやクオリティの高いコンピ盤を選ぶと良いでしょう。
おすすめレコード 5:Vinícius & Toquinho(共同作品群)
なぜ聴くべきか:1970年代以降、ヴィニシウスはToquinhoと密接にコラボレーションし、より親しみやすい小曲から即興的ライブまで幅広い活動を展開しました。二人のデュオ作品はメロウで親密、詩情たっぷりの“人生の小品”が詰まっています。
- 聴きどころ:Toquinhoのギター技巧とアレンジ、ヴィニシウスの成熟した朗読・歌唱が織りなす会話的演奏。
- 選盤のヒント:ライブ盤・スタジオ盤を適度に聴き比べると、ヴィニシウスの表現の幅が感じられます。
聴き方のガイド:歌詞と訳詞の扱い方
ヴィニシウスの魅力の大きな部分は“文章(詩)”そのものにあります。ポルトガル語の響きとリズムは英訳では変化するため、可能なら原語で歌詞を追い、対訳を合わせて読むことをおすすめします。詩的メタファーや宗教的イメージ(特にAfro-Sambasでは顕著)に注目すると、新たな発見が生まれます。
選盤・購入の実用アドバイス
- オリジナル・プレスの魅力:初期のリリース(1950s–60s)のオリジナル盤は音色と空気感が魅力。ただし価格は高め。
- リマスター/再発:近年のリマスターは音の鮮明さが増す反面、音像の「古さ」が薄れることもあるため好みで選ぶ。
- ライナーノーツとクレジット確認:ヴィニシウスは共作者や演者との関係性が重要。作詞家・作曲家クレジットを確認するとその曲の背景理解に役立ちます。
- ライブ録音の年代差:70年代以降のライブは演奏がより親しみやすく会話的。初期のスタジオ録音はムーブメント史の資料的価値が高いです。
まとめ:ヴィニシウスの音楽が与えるもの
ヴィニシウス・デ・モラエスの仕事は、単に「歌詞を書いた人」という枠を超え、詩と音楽の接点を拡張しました。ここで挙げたアルバム群は、彼の多様な面(ボサノヴァの起点、アフロ=ブラジルの探求、親密なデュオ作品、映画音楽の普及)をそれぞれ異なる角度から示しています。初めて触れる方は「Canção do Amor Demais」や「Os Afro-Sambas」、そしてToquinhoとのライブ盤から入り、詩の世界を少しずつ深めていくのが良いでしょう。
参考文献
- Vinícius de Moraes — Wikipedia (English)
- Canção do Amor Demais — Wikipedia (English)
- Afro-sambas / Os Afro-Sambas — Wikipedia (English)
- Vinícius de Moraes — Discogs
- Vinícius de Moraes — AllMusic
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