ジョン・マクラフリン入門:マハヴィシュヌ〜シャクティ名盤と聴きどころガイド
John McLaughlin — 概要とプロフィール
ジョン・マクラフリン(John McLaughlin、1942年1月4日生まれ)は、イギリス出身のギタリスト/作曲家で、ジャズ・フュージョンのパイオニアの一人として知られます。1960年代後半のマイルス・デイヴィスの電化期の録音に参加したことをきっかけに、エレクトリックなサウンドと高度な即興、インド音楽などの非西洋的要素を統合した独自の音楽世界を切り拓きました。バンド・リーダーとしての代表作には、マハヴィシュヌ・オーケストラ(Mahavishnu Orchestra)やシャクティ(Shakti)、アコースティック・トリオでの活動など、多岐にわたるプロジェクトがあります。
キャリアの主な流れ
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セッション/初期活動:
1960年代にイギリスのロック/R&Bシーンやジャズ界で経験を積み、やがてアメリカの先鋭的なジャズミュージシャンと共演する機会を得ます。
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マイルス・デイヴィスとの共演:
1969年前後、マイルス・デイヴィスの電化時代のセッションに参加。これによりエレクトリック・ジャズとロックの融合(フュージョン)へ踏み出す重要な基盤を築きました。
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マハヴィシュヌ・オーケストラ:
1970年代初頭に結成したこのバンドは、ロックのエネルギー、ジャズの即興性、クラシック的な構築感、インド的リズム感を組み合わせ、激烈で洗練されたサウンドを提示しました。以降、フュージョンの代名詞的存在になります。
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シャクティ(Shakti):
インド古典音楽の打楽器や旋法を深く取り入れたアコースティック・プロジェクト。ナイロン弦ギターとタブラ等の即興的対話により、東西の音楽的語彙を豊かに交差させました。
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アコースティック・トリオとその他のコラボレーション:
パコ・デ・ルシア(Paco de Lucía)やアル・ディ・メオラ(Al Di Meola)との共演など、クラシック/フラメンコの要素も取り込んだ幅広い活動を行いました。
演奏スタイルとその魅力(深掘り)
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テクニックの多層性:
非常に速いピッキング、流麗かつ切れ味のあるシングル・ライン、ポリリズム(複数拍子の同時進行)や複雑な拍節の中での正確なフレージングが特徴です。エレクトリックでは過激なドライブとサスティンを、アコースティックでは繊細なタッチと豊かな倍音を使い分けます。
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ハーモニーとモード感:
単なるコード進行に依存せず、モード(旋法)を用いた即興を多用します。これによりメロディが「循環」するのではなく「空間的に展開」するような印象を与え、スケール感や色彩感が強調されます。
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リズム観の革新:
インド音楽由来のリズム感(タラ)や西洋的な変拍子を組み合わせ、ドラムやタブラとの厳密で緊張感ある対話を行います。その結果、聴き手に強い推進力と同時に予測不能な即興性を提供します。
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音色とサウンドメイク:
ギターのトーンはしばしばヴァイオリンのように伸びるサステインを持ち、エフェクトやアンプの歪みを積極的に用いて「攻撃的かつ表現豊か」な音像を作り上げます。一方でナイロン弦やアコースティック・ギターを用いる際は非常に繊細で詩的な音色を引き出します。
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精神性と音楽観:
彼の音楽にはしばしば精神的・宗教的な志向が見え、即興が単なる技巧の見せ場に留まらず、瞑想的・祈りめいた側面を帯びることがあります。これが演奏に独特の深みを与えています。
代表曲・名盤(初心者にも押さえてほしい作品)
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The Inner Mounting Flame (Mahavishnu Orchestra, 1971)
マハヴィシュヌのデビュー。激烈で構築的なフュージョンの金字塔。代表曲「You Know, You Know」など、圧倒的なエネルギーと技術の結晶です。
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Birds of Fire (Mahavishnu Orchestra, 1973)
初期マハヴィシュヌの完成度をさらに高めた作品。複雑なリズムと壮大なメロディが混ざり合います。
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My Goal's Beyond (1971)
エレクトリックから一旦離れ、精神性とインド音楽的要素が色濃く出たソロ作。内省的で深い音世界を提示します。
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Shakti (Shakti, mid-1970s)
インド伝統の打楽器と組んだアコースティック・ユニット。マクラフリンの別の顔である「インド旋法との深い融合」を味わえます。
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Friday Night in San Francisco (Paco de Lucía / Al Di Meola / John McLaughlin, 1981)
アコースティック・ギターの名手三人によるライブ盤。即興と対話の妙が詰まった名演で、幅広い層に愛される一枚です。
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To the One (John McLaughlin & the 4th Dimension, 2010)
後年の作品ながら創造力は衰えず、現代ジャズへの深い敬意と新たな試みを示したアルバム。コルトレーンへのオマージュ的側面もあります。
どこが聴きどころか — 初めて聴く人へのガイド
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エレクトリック期(Mahavishnuなど):
まずは圧倒的なバンド・サウンドのダイナミズムと、ギターがバンドの中でどのようにリード/対話するかに注目してください。リズムの変化やソロの襲来が強烈に感じられるはずです。
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アコースティック期(ShaktiやFriday Night〜):
音の余白、呼吸、タブラやパンディーノとの掛け合いに耳を傾けると、緻密な即興の美しさがわかります。
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ソロ/小編成:
メロディの選択、モードの展開、静と動のコントラストに注目すると、技術だけでない表現の深さを感じられます。
影響・遺産
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ジョン・マクラフリンは、フュージョン以降のギタリスト(アル・ディ・メオラ、パット・メセニーをはじめとする多数)に大きな影響を与えました。また、ジャズとワールド・ミュージックの架け橋として、異文化交流的な演奏/作曲のモデルを提示しました。
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彼のアプローチは「高度なテクニックを精神性や構成美と結びつける」点にあり、単なる速弾きや技巧性の追求では終わらない深い表現性が後進に継承されています。
まとめ
ジョン・マクラフリンは、技術的な驚異であると同時に、多様な音楽伝統を誠実に学び、それを自己の音楽へと昇華してきた稀有なギタリストです。エレクトリックな爆発力から、アコースティックな精神性まで幅広い表現を持ち、聴き手に常に「新しい聴取体験」を促します。初めて触れるなら、まずはマハヴィシュヌの代表作とアコースティックでの共演盤を聞き比べ、彼の多面的な魅力を味わってみてください。
参考文献
- John McLaughlin — Wikipedia
- John McLaughlin — AllMusic Biography
- John McLaughlin — Encyclopaedia Britannica
- John McLaughlin — Official Site
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