Television(テレヴィジョン)徹底ガイド:Marquee Moonとツインギターが切り開いたCBGB発ニューヨーク・ロックの革新
Television — プロフィールと音楽的魅力の深掘りコラム
1970年代のニューヨーク、CBGBを発信点として登場したTelevisionは、パンク/ニューウェーブという括りの中にありながらも、楽曲構造やギターワーク、詩的な歌唱で当時の価値観を刷新したバンドです。本稿ではバンドの経歴、音楽的特徴、代表作、ライブ/制作面での魅力、後続への影響をできるだけ詳しく掘り下げます。
簡単なプロフィール
- 結成年:1973年(ニューヨーク)
- 中心人物:Tom Verlaine(ボーカル・ギター)、Richard Lloyd(ギター)、Billy Ficca(ドラム)
- ベース変遷:初期にRichard Hellが在籍(後にThe Voidoids結成)、最終的にはFred Smithが長く参加
- 代表作:Marquee Moon(1977)をはじめとする作品群
- 音楽的立ち位置:パンク/ニューウェーブの文脈にあるが、ジャズやアートロック的な即興性とギターの対位法で独自性を確立
歴史的経緯とシーンとの関係
TelevisionはCBGBの初期シーンで他のパンク・アクトと並んで活動を始めましたが、サウンド面では単純な短い破壊的楽曲よりも、長尺で複雑な構成やギターの綾なす即興的な展開を志向しました。Richard Hellの脱退とFred Smith加入、1977年のデビュー・アルバム『Marquee Moon』の登場、続く『Adventure』(1978)を経て一度解散します。その後メンバーはソロや他バンドでの活動を展開し、時折の再結成やツアーも行われました。
音楽的特徴 — なぜ彼らは特別か
- ツインギターの対位法
Tom VerlaineとRichard Lloydによるギターは、単なるリズム/リードの役割分担ではなく、互いにメロディを補完しあう対位法的アプローチが特徴です。和音ではなく「線」を重ねることで、ジャズの即興性のような開放感とロックの推進力が同居します。 - 余白を活かす簡潔なリズム隊
Billy FiccaのドラムとFred Smithのベースは、無駄をそぎ落としたリズムでギターの展開を支える役割に徹します。過度に刻むことがなく、ギターのフレーズが際立つような空間作りが巧みです。 - 詩的・抽象的な歌詞と声
Tom Verlaineの歌詞は風景や断片的イメージを並べる詩的手法を取り、決定的な物語を示さないことで反復や余韻を生み出します。ボーカル自体も語りかけるような、時に儚いトーンで楽曲の雰囲気を決定づけます。 - 曲の長尺化と展開のドラマ性
代表曲の長尺パート(「Marquee Moon」など)に見られるように、テーマの提示→展開→即興的ソロという構造を取ることで、ポップ/パンクの枠を超えたロック的ドラマを提示します。 - プロダクションの透明感
ギターを前面にクリアに配置するミックスや、空間(リバーブや残響)を活かした録音が多く、細かなフレーズまではっきり聴かせることで、その演奏性を余すところなく伝えます。
代表曲・名盤とその聴きどころ
- Marquee Moon(1977、アルバム)
バンドの代名詞的名盤。タイトル曲「Marquee Moon」は10分を超える大作で、テーマやリフの反復の中から長尺のギター・ソロ/対位が展開される様は圧巻。アルバム全体を通してツインギターの化学反応、Tomの詩的世界観、リズム隊の隙間の美学が詰まっています。 - Little Johnny Jewel(初期シングル/Ork)
長尺でミニマルな即興性を早期から示したトラック。CBGB時代の影響力を伝える重要な記録です。 - Adventure(1978、アルバム)
より歌ものに接近した面も見せつつ、洗練されたアンサンブルと演奏力の高さを提示。前作からの流れを受け継ぎつつ成熟を感じさせる一枚です。 - その他注目曲
「See No Evil」「Guiding Light」「Foxhole」など、短めの曲でも歌とギターの緊張感が際立ちます。
ライブでの魅力
CBGBに代表される初期のクラブ公演から大規模なツアーまで、Televisionはスタジオ音源とはまた違った即興的展開をライブで聞かせることで知られました。ツインギター同士の掛け合いは毎回微妙に変化し、同じ曲でも別の顔を見せる。観客との距離を活かした演奏表現、フロントマンの存在感よりも「バンドで作る瞬間」を重視する姿勢が、ライブの魅力を高めています。
なぜ今でも重要なのか — 影響と遺産
- ポストパンク/インディーギター・ミュージックへの影響
直線的・三和音中心のパンクとは対照的なギターワークは、後のポストパンク/インディーバンドに大きな影響を与えました。ギターのテクスチャとメロディ重視のアプローチは、80年代以降の多くのギターバンドに継承されています。 - ギタリストに与えた示唆
音色の選び方、フレーズの組み立て方、空間の使い方など、演奏の美学そのものが多くのギタリストに影響を与えました。即興を恐れず、メロディとリズムの境界を行き来する姿勢は今も新鮮です。 - 「アート・ロック」としての評価
商業的なヒットだけを目指さない、実験的で詩的な表現をロックの形式で追求した点が評価され、批評的名盤としてしばしば取り上げられます。
サウンドの聴き方・楽しみ方のヒント
- ツインギターのどちらがメロディを弾いているのかという「役割の交代」に注目して聴くと、対話的構造が見えてきます。
- 長尺曲ではテーマの反復と変奏に注目。小さなフレーズの変化が大きなドラマを生むことが多いです。
- Tom Verlaineの歌詞は断片的でイメージ重視。意味を完全に解釈しようとするより、浮かび上がる情景を味わう聴き方が合います。
まとめ
Televisionはパンクの場から生まれながら、その枠組みを拡張していった稀有な存在です。ツインギターの対位法、詩的なボーカル、即興性を許容する構成美は、彼らを単なる“当時のバンド”ではなく、現代のギターミュージックにとって参照すべき重要な座標にしています。初めて聴く方はまず『Marquee Moon』をじっくりと通して味わい、ライブ盤やシングル初期録音でその変化や即興性を確かめると良いでしょう。
参考文献
- AllMusic — Television Biography
- Rolling Stone — 記事(Television / Marquee Moon 関連)
- NME — 特集記事(Television と 70s NYC シーン)
- Pitchfork — Marquee Moon retrospective
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