Jekyllとは?GitHub Pages対応の静的サイトジェネレーターを徹底解説 — 仕組み・メリット・他SSG比較と運用ベストプラクティス
Jekyll とは — 概要と位置づけ
Jekyll は「静的サイトジェネレーター(Static Site Generator: SSG)」のひとつで、Ruby 言語で実装されています。Markdown や HTML、Liquid テンプレート、YAML フロントマターなどを組み合わせて、あらかじめ HTML ファイルを生成する仕組みを提供します。元々は Tom Preston-Werner(GitHub の共同創業者の一人)によって作られ、特に GitHub Pages と自然に連携できることから、個人ブログやドキュメントサイト、ポートフォリオサイトなどで広く使われています。
基本的な仕組み
Jekyll の基本的なワークフローは次の通りです。ソース(Markdown、テンプレート、設定ファイルなど)をローカルに準備し、Jekyll のビルドコマンドを実行すると、静的な HTML/CSS/JS ファイル群が _site というディレクトリに生成されます。生成物は任意の静的ホスティング(GitHub Pages、Netlify、Vercel、S3 等)にデプロイして公開できます。
- ソースファイル: Markdown(.md/.markdown)、HTML、YAML(_config.yml)など
- フロントマター: 各 Markdown ファイル冒頭の YAML でメタデータを指定(例:title, layout, date)
- テンプレート: Liquid テンプレートエンジンを使用してレイアウトや変数の埋め込みを行う
- 出力: _site 配下に静的な HTML 等を生成
主要な機能と構成要素
Jekyll には静的サイト構築でよく使われる機能が標準または拡張で揃っています。
- Liquid テンプレート — Shopify が開発したテンプレート言語で、変数埋め込み、条件分岐、ループ、フィルタが使える。
- YAML フロントマター — 各ページのメタ情報を記述し、テンプレートから参照可能。
- Markdown サポート — Markdown を HTML に変換(既定では kramdown を利用する環境が多い)。
- レイアウトとインクルード — 共通の layout(_layouts)、再利用部品(_includes)を使ったテンプレート分割。
- コレクション — 投稿(_posts)以外の論理的グループ(例:ドキュメント、レシピ)を管理する _collections。
- データファイル — _data フォルダ内の YAML/JSON/CSV を読み込んでサイト生成に利用。
- プラグイン(Gems) — ビルド処理を拡張するためのプラグインを RubyGems で導入可能。
- Sass/SCSS 対応 — 組み込みの Sass コンバータでスタイルをプリプロセス。
- パギネーション、タグ、カテゴリ — ブログ系サイトで便利な機能もサポート。
典型的な開発・公開フロー
よくある始め方とコマンドの例を示します(環境によっては Bundler を使った実行が推奨されます)。
gem install jekyll bundler
jekyll new mysite
cd mysite
bundle exec jekyll serve
ローカルで確認したら、GitHub リポジトリに push して GitHub Pages で公開するか、ビルド結果を Netlify 等にデプロイします。GitHub Pages は Jekyll をネイティブにサポートしていますが、セキュリティの観点から許可されたプラグインのみ動作する点に注意が必要です。カスタムプラグインを使いたい場合は、GitHub Actions や別の CI を使ってビルドした成果物を公開するワークフローが一般的です。
利点(メリット)
- 高速で軽量 — サーバー側で動的にレンダリングする必要がないため、ホスティングコストが低く、配信も速い。
- セキュア — 動的言語での実行が不要なため攻撃面が少ない(サーバーサイド処理がないことが主因)。
- バージョン管理が容易 — コンテンツがファイルベースなので Git と相性が良く、差分管理やレビューが行いやすい。
- 豊富なテンプレート/テーマ — Gem ベースのテーマや既存テンプレートが多く、素早くサイトを立ち上げられる。
- GitHub Pages と親和性が高い — 個人・プロジェクトページのホスティングが簡単。
注意点・デメリット
- 動的機能の実装が苦手 — コメント、認証、検索などはクライアントサイド JavaScript か外部サービス(Disqus、Algolia、フォームサービスなど)に頼る必要がある。
- 大規模サイトでのビルド時間 — ページ数が非常に多いとビルド時間が長くなる。Hugo(Go製)などに比べて遅く感じることがある。
- プラグイン制約(GitHub Pages) — GitHub Pages 上では使用できるプラグインが限定されるため、拡張性の面で制限がある。
- Ruby 環境の準備 — 開発には Ruby のセットアップが必要で、特に初心者は環境構築でつまずくことがある。
- ネイティブな国際化(i18n)機能が限定的 — 多言語サイトを構築する場合はプラグインやディレクトリ設計が必要。
実践的な機能(もう少し深掘り)
いくつかの実用的な仕組みを詳しく説明します。
- フロントマター — 各ファイル先頭の YAML セクション(--- で囲む)に title, date, layout, categories などを定義し、テンプレートから参照します。例:
--- title: "はじめての投稿" date: 2025-01-01 layout: post tags: [jekyll, tutorial] --- - コレクション — _posts 以外のコンテンツ集合を定義できます。ドキュメントや事例集を collections として管理し、テンプレートでループ表示できます。
- データ駆動のコンテンツ — _data 内の YAML/JSON を読み込んで、サイトメニューや製品リストをデータベースのように扱うことができます。
- プラグイン — 例えば sitemap.xml を生成する jekyll-sitemap、SEO 用の jekyll-seo-tag、アセット管理の jekyll-assets などが存在します。ただし GitHub Pages の制約に注意。
他の SSG との比較(簡潔に)
代表的な代替として Hugo(Go)、Eleventy(JavaScript)、Gatsby(React)などがあります。簡単に特徴をまとめると:
- Hugo: ビルド速度が非常に高速。Go 製で単一バイナリ。大規模サイトに向く。
- Eleventy: 設定が柔軟で学習コストが低め。JS エコシステムと親和性がある。
- Gatsby: React ベースでリッチな JAMstack アプリを構築可能。ただし学習コストとビルド時間のトレードオフがある。
- Jekyll: Markdown とテンプレート中心でシンプル、GitHub Pages との統合が利点。
運用上のポイントとベストプラクティス
- CI を利用したビルド — カスタムプラグインを使いたい場合や一貫したビルド環境を確保したい場合は、GitHub Actions や Netlify CI を使ってビルド後の成果物を公開する。
- キャッシュとインクリメンタルビルド — 開発中は --incremental オプションやライブリロード(環境により可)を使って効率化する。ただし完全な変更を確実に反映させたいときはフルビルドを行う。
- テーマとカスタマイズの分離 — Gem ベースのテーマを使う場合、カスタマイズは _layouts や _includes を override する形で行うとアップデート管理が楽。
- SEO とメタ情報 — jekyll-seo-tag のようなプラグインやテンプレート内で適切に meta を出力する。
- 外部サービスの活用 — フォーム(Formspree、Netlify Forms 等)、検索(Algolia)、コメント(Disqus)などを組み合わせて動的要素を補う。
まとめ
Jekyll は「シンプルで安定した静的サイトジェネレーター」を求める開発者やコンテンツ制作者にとって有力な選択肢です。特に GitHub Pages と組み合わせることで、低コストかつ簡単に公開できる点が魅力です。一方で、動的機能の実装や超大規模サイトのビルド速度、GitHub Pages 上でのプラグイン制約などは設計段階で考慮が必要です。要件に応じて(速度が最重要なら Hugo、JS エコシステムを活用したいなら Eleventy/Gatsby など)比較検討することをおすすめします。
参考文献
- Jekyll Official Website
- Jekyll — GitHub リポジトリ
- GitHub Pages ドキュメント
- Liquid テンプレート言語(Shopify)
- Hugo(比較参照)
- Eleventy(比較参照)


