ジェリー・マリガン入門:クール・ジャズ必聴の厳選レコード6枚と聴きどころ

イントロダクション — ジェリー・マリガンとは

ジェリー・マリガン(Gerry Mulligan)は、バリトンサックス奏者/アレンジャーとしてクール・ジャズの象徴的存在です。軽快かつ詩的なフレージング、音域の広さを生かしたメロディメイク、そして「ピアノを置かない」編成による透明なアンサンブル感覚──これらが彼の演奏とサウンドの特徴です。本コラムでは、ジャズ入門者からコレクターまで楽しめるおすすめレコードをセレクトし、各作の聴きどころや位置づけを深掘りして解説します。

聴く前に押さえておきたいポイント

  • ピアノレス編成の妙:初期の代表的カルテット(特にチェット・ベイカーとのもの)は、ピアノがいない分リズム隊とホーンの対話が鮮明に聞こえ、対位法的なアレンジが際立ちます。
  • 作編曲家としての顔:単なるソロイストではなく、編曲家/バンドリーダーとしての力量が光る作品が多い。コンセプト性の強い大編成(Concert Jazz Band)作品も評価が高いです。
  • コラボレーションの幅:チェット・ベイカー、セロニアス・モンク、ポール・デスモンドなど多彩な相手との共演録音が名演を生んでいます。

おすすめレコード(厳選)

1. Gerry Mulligan Quartet(チェット・ベイカー参加作)

おすすめの入門盤。ピアノを入れないカルテット編成(バリトン、トランペット、ベース、ドラム)で、メロディと対話が主体の演奏が続きます。チェット・ベイカーの歌心あるトランペットとマリガンの軽やかなバリトンが相互に引き立て合う名録音です。

  • 聴きどころ:代表曲「Bernie's Tune」「Line for Lyons」「Walkin' Shoes」など。テーマのシンプルさとそこから広がる即興の会話に注目。
  • おすすめポイント:ピアノがないことで生まれる“呼吸感”を味わえる。アンサンブルの隙間から生まれる凝縮された表現が魅力。
  • 推奨リリース:オリジナル音源をまとめたコンピや良質なCD/高音質配信での聴取を推奨。

2. The Birth of the Cool(マイルス・デイヴィスのコンピだが重要)

厳密にはマイルス・デイヴィス名義のレコーディング集ですが、ジェリー・マリガンは編曲者/バリトン奏者として重要な役割を担っています。クール・ジャズ誕生を象徴する作品として、マリガンのアレンジ感覚や作曲(例:「Jeru」)を知るには最適です。

  • 聴きどころ:ブラス/リードの繊細な響き、管編成での緻密なハーモニー。マリガン作/アレンジ曲を中心に耳を傾けると彼の骨格が見えてきます。
  • おすすめポイント:マリガンの作曲・編曲能力を他の名手たちとの共同作業の中で俯瞰的に理解できる一枚。

3. Mulligan Meets Monk

セロニアス・モンクとの共演作は意外性があり、マリガンの柔軟性がよく分かる録音です。モンクの独特な和声感やリズム感へマリガンがどう対応するか、対照的な個性が刺激的なコントラストを生みます。

  • 聴きどころ:モンクのピアノ(独特の和音・間)に対してマリガンが示す即興的リアクション。予測不能な展開を楽しめます。
  • おすすめポイント:スタイルが異なる二人の掛け合いから、マリガンの“ジャズ的な柔軟性”を確認できます。

4. Two of a Mind(with Paul Desmond)

ポール・デスモンド(アルトサックス)とのデュオ/カルテット的な共演作。両者のトーンの対比と、メロディへのアプローチの違いが美しいアルバムです。会話的なインタープレイ(フレージングの交換)をじっくり味わいたい人向け。

  • 聴きどころ:二人のサックスが織りなすカウンターメロディ、静的な空間を活かした表現。
  • おすすめポイント:表情豊かなバリトンと繊細なアルトの対比は、サックス好きには必聴。

5. Gerry Mulligan Concert Jazz Band(Concert Jazz Band時代の録音)

1950年代後半からのコンセプト的な大編成プロジェクト。マリガン自身のアレンジ力とバンドリーダーとしての手腕が遺憾なく発揮された作品群です。ビッグバンド寄りの迫力と、クールな色合いが同居する独自のサウンドが魅力。

  • 聴きどころ:管のアンサンブルの緻密さ、ソリストのソロ展開、マリガンの構築的なアレンジ。
  • おすすめポイント:小編成とは異なるスケール感を体験でき、彼の曲作りの幅を実感できます。

6. Night Lights(バラード志向の一枚)

より叙情性を前面に出した作品。落ち着いたテンポのバラードやゆったりした雰囲気のナンバーが中心で、マリガンの“歌う”バリトンを堪能できます。

  • 聴きどころ:フレーズの歌心と音色表現、静謐な空気作り。
  • おすすめポイント:夜にゆっくり聴きたい一枚。暖かな音像やメロウな演奏が心地よい。

代表曲・要チェック曲リスト(入門プレイリスト)

  • Line for Lyons(Mulligan Quartet) — 対位法的アプローチが明快。
  • Bernie's Tune(Mulligan Quartet) — メロディの親しみやすさと即興の会話。
  • Walkin' Shoes(Mulligan Quartet) — グルーヴ感と軽妙なフレージング。
  • Jeru(Birth of the Cool) — 編曲家としての才覚が分かる一曲。
  • My Funny Valentine(Mulligan Quartet / variousライブ) — 抑制された歌心の好例。

どう聴くか、各アルバムの楽しみ方

  • 初めて聴く場合:まずはカルテット盤(ベイカーとの録音)で彼の音色とアンサンブル感を掴むのが良いです。短いテーマと会話的ソロが多く、着地点が分かりやすい。
  • 聴き比べ:小編成(カルテット)→デュオ/共演作(モンク、デスモンド)→大編成(Concert Jazz Band)という順で聴き比べると、マリガンの表現スペクトラムがよく見えます。
  • 楽曲の聴きどころに注目:テーマの提示と応答、間(ブレス)の取り方、フレーズの“余白”。これらが彼の演奏の肝です。

コレクションのヒント(選び方)

  • 初期の名演は複数のコンパイル/再発があるため、解説や音源の出典(セッション日)を確認すると良いです。
  • 作品ごとに演奏メンバーが変わることが多いので、共演者の顔ぶれで聴き方を変えるのも楽しみの一つです(例:チェット・ベイカー在籍盤は“歌心”重視)。
  • 大編成系は録音やミキシングの差で印象が大きく変わるため、リマスターや高音質盤の評価をチェックするのがおすすめです。

最後に — マリガンの魅力を一言で言うなら

「声のように語るバリトン」。技術や速弾きよりも、フレーズの選び方、間の取り方、そしてアンサンブル全体を見渡す視点で聴くと、ジェリー・マリガンの真価が伝わってきます。興味のあるアルバムを一枚ずつ深掘りしていくと、細部の違いが味わいになっていくはずです。

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参考文献