Peter Green: Fleetwood Mac創設者のギター美学と代表曲・影響を紐解く
Peter Green — 簡潔な紹介
Peter Green(本名 Peter Allen Greenbaum、1946年10月29日生〜2020年7月25日没)は、英国ブルース・ロックの重要人物であり、Fleetwood Mac の創設者の一人として知られるギタリスト/ソングライターです。繊細で深みのあるトーン、無駄を削ぎ落としたフレーズ、そして感情の宿るメロディメイキングによって、多くのギタリストや音楽ファンに強い影響を与えました。
経歴の概略
ロンドンの下町で生まれたPeter Greenは、1960年代中盤にブルースの世界で頭角を現しました。John Mayall & the Bluesbreakers に参加した後、Mick Fleetwood と John McVie を誘い1967年に Fleetwood Mac を結成。短期間で英国ブルース・シーンの中心人物となり、1968年のインストゥルメンタル「Albatross」が大ヒットしました。
1970年前後に精神的・健康的な問題からバンドを脱退し、長期間表舞台から姿を消します。その後数年を経て断続的に音楽活動へ復帰し、1990年代後半には Peter Green Splinter Group を結成して再び注目を集めました。
音楽的特徴とプレイの魅力
- メロディ重視のプレイ — 技術的な速弾きや過度な技巧ではなく、短いフレーズに強い表情を込めることを得意としました。一音一音の選び方とタイミングで物語を語るタイプのギタリストです。
- 独特のトーン — 代表的に1959年製のGibson Les Paul(独特な配線に起因する“アウト・オブ・フェイズ”のサウンドも有名)とクリーン〜セミクランチの間を行き来する温かく深いトーンで、音の輪郭が丸く、歌うようなサスティンが魅力です。
- ダイナミクスと間(ま)の使い方 — 音量やタッチの変化、フレーズとフレーズの“間”で感情を伝える能力に長けており、聴き手の注意を引きつけます。
- ブルースに基づく語法 — マイナー・ペンタトニックやブルーノートを基軸にしつつ、モーダルな響きやメロディアスな音使いを織り交ぜ、古典的ブルースを新鮮に聴かせました。
- 簡潔さの美学 — フレーズを“削る”ことで余韻を残し、リスナーの想像力を刺激します。過度な装飾を排した表現こそが、彼の“余白の美”を生み出しました。
代表曲・名盤(解説付き)
- 「Albatross」
静かな海を思わせるスライド感と浮遊感のあるインスト曲。英国でNo.1を記録し、ギター・インストの名作として広く知られています。トーンや空気感で聴かせる作例です。
- 「Black Magic Woman」
Green 作の曲で、オリジナルはFleetwood Macの録音。後にSantanaがカバーして世界的なヒットとなりました。オリジナルはブルース寄りの叙情性を強く感じさせます。
- 「Oh Well」
ハードロック的なRiffと哀愁のメロディが共存する曲。Aパートのリズム主体の部分と、Bパートのメロディックな部分との対比が印象的です。
- 「Man of the World」
シンプルでメランコリックな歌詞とメロディが胸に響く名バラード。Peter Green の当時の精神状態や内省が反映されていると解釈されることが多いナンバーです。
- アルバム「Then Play On」(1969)
Green の作曲的才能とバンドの多様性が表れた名盤。ブルースだけに留まらない音楽的深度があり、後のロック・ギター表現に影響を与えました。
- 「In the Skies」(1979)
長いブランク後の復帰作。より落ち着いた、しかし繊細なギター表現が示されており“復活作”として評価されています。
- Peter Green Splinter Group — 「The Robert Johnson Songbook」(1998)
ロバート・ジョンソン曲を中心にしたアルバムで、Green の原点回帰的なブルース表現が堪能できます。批評家やブルース・ファンから高い評価を受けました。
影響と遺産
- Eric Clapton をはじめ多くのギタリストに影響を与えた存在で、彼の“音を歌わせる”アプローチは現行のギタリストにも受け継がれています。
- Fleetwood Mac の創成期を支えたことで、英国ブルースの隆盛並びにその後のロックシーンに重要な足跡を残しました。
- 「Black Magic Woman」など楽曲の広がりを通じて、世代を越えたリスナーに届くメロディ・ライティングの手本を示しました。
個人的な葛藤とその影響
1960年代末から1970年代初頭にかけて、Green は精神的な問題(薬物や精神疾患の影響が指摘される)や宗教的体験を経験し、一時は音楽活動から離れます。この背景は彼の作風にも影を落とし、時に深い哀愁や不安の匂いを帯びた楽曲や演奏へと繋がりました。復帰後も創作や人生観は変容し、音楽に対する姿勢もより内省的になっていきます。
Peter Green の「魅力」を深掘りするポイント
- 簡潔さこそ力 — 無駄を削ぎ落としたフレーズの中にこそ、強い個性と感情が宿る点。
- 音色で語る — ピッキングの強弱、ギターのセッティング、ボリューム操作などで細かく表情を作る術に長けていた点。
- 歌心あるソロ — ギターが単なる“器楽的な技”に留まらず、人の声のように歌うことを常に優先した点。
- 曲を書く力 — 単なるギタリストに留まらず、エモーショナルなメロディと空気感を生むソングライターとしての才覚。
- 神秘性と人間性の共存 — 天才肌の孤高さと、内面的な葛藤や脆さが同居し、それが作品や演奏に独特の深みを与えている点。
これから聴く人へのおすすめ(入門用プレイリスト)
- Albatross
- Black Magic Woman(Fleetwood Mac版)
- Oh Well
- Man of the World
- Then Play On(アルバム)から数曲(例:「Coming Your Way」など)
- In the Skies(アルバム)から1〜2曲
- Peter Green Splinter Group — The Robert Johnson Songbook から数曲
まとめ
Peter Green はテクニックだけで語られるタイプのギタリストではありません。彼の真価は「何を弾くか」よりも「何を語らせるか」にあり、その寡黙な美学は現代のギター表現においても重要な指針となっています。悲哀や静けさ、そして時折見せる輝きが同居する彼の音楽は、聴けば聴くほど新しい発見を与えてくれるはずです。
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参考文献
- Peter Green — Wikipedia
- AllMusic — Peter Green Biography
- The Guardian — Peter Green obituary
- Rolling Stone — Peter Green obituary
- Rock & Roll Hall of Fame — Fleetwood Mac


