Kishori Amonkarの聴き方とおすすめ録音—初心者向け完全ガイド
Kishori Amonkar — 音楽家としての位置づけ
Kishori Amonkar(1932–2017)は、ヒンドゥスターニー古典声楽の巨匠であり、流派(ガラーナ)の枠を越えて個人的で感情表現豊かな解釈を追求したことで知られます。技術的な正確さだけでなく「ラサ(情感)」に重心を置き、アラープ(序奏)からヴィラーミ(停頓)やテンポ変化を駆使して曲の内面を深く掘り下げる歌唱スタイルは、多くの聴衆や演奏家に影響を与えました。
おすすめレコード(リスニングの順と理由)
以下はレコード(LP/CD/デジタル)は問いません。Kishori Amonkar の多面性を味わえる代表的な録音群を、初心者〜中級リスナー向けの「聞きどころ」を添えて紹介します。
1)基本に触れる:Yaman系・Todi系のスタジオ録音(HMV / Saregama 等)
Yaman、Miyan ki Todi、Marwa、Bhairavi などの伝統的なラガを収めたスタジオ録音は、彼女のアラープの構築、音色の変化、フェルマ(フレーズの言い回し)を学ぶのに適しています。スタジオ録音は音響が整っているため、声の微細なニュアンスやロングトーンの余韻が聴き取りやすいのが利点です。
聴きどころ:ゆっくりと展開するアラープでの微妙なビブラートとアクセント、ボリュームを抑えたパッセージから急に感情を高める瞬間。
2)ライブ録音:即興のスリルと対話を味わう
ライブ録音は伴奏者との化学反応、テンポの自由度、客席の空気感が加わり、スタジオとは異なるダイナミズムを見せます。コンサート録音では、アルプの長さやリズム(タール)との掛け合いが大きく変化し、彼女の即興力とドラマティックな表現が際立ちます。
聴きどころ:長いアラープの解釈の変化、ティハイ(節回し)やラヤのコントラスト、観衆の反応が入り込む瞬間。
3)軽演目(Thumri / Bhajan)集
Kishori Amonkar はカヤール(Khayal)だけでなく、トゥムリやバジャンの情感表現にも秀でていました。これらは短い曲の中で言葉(歌詞)と音楽表現を直截に結びつけるため、声の抑揚・語りかけるような歌唱が光ります。
聴きどころ:歌詞と音楽が直結する表現、語りかけるようなテンポ感、微妙な語尾の処理。
4)編集盤/ベスト盤・リマスター盤
近年は複数のレーベルが彼女の歴史的録音をセレクトして編集盤やリマスター盤を出しています。複数ラガを跨いで彼女の歌唱の変遷を追えるので、初めて聴く人にもおすすめです。デジタル配信で入手しやすいものも多く、まずはこうした「入門的編集盤」から始めるのが聴きやすいルートです。
聴きどころ:年代による表現の変化、スタジオ音質とライブ音質の違い、代表ラガのダイジェスト。
5)珍しいセッション/共演作(伴奏者との対話を楽しむ)
サラング(サラーンギ)やヴァイオリン、名タブラー奏者との共演盤は、伴奏楽器との掛け合いをより意識して聴けます。伴奏がどのように歌に応答するか、また彼女がどのように伴奏のアンサーを引き出すかを注目して聴くと、別の魅力が見えてきます。
聴きどころ:コール&レスポンス、伴奏が提示するフレーズへの即興的応答。
初心者向け:おすすめの聴き方と順番
まずは短めのトゥムリやバジャンで声に慣れる(言葉と表現が直感的に入ってきます)。
次に Yaman などメロディックで落ち着いたラガを聴き、アラープの展開を追う。
慣れてきたら Todi、Marwa、Malkauns といった深さのあるラガに進み、長いアラープやリズムとの駆け引きを味わう。
気に入った録音が見つかったら、同じラガを別録音(スタジオ vs ライブ)で聴き比べると解釈の違いが分かります。
聞きどころガイド:Kishori Amonkar の「聴き方」
アラープの「沈黙」を聴く:音が鳴っていない瞬間の余韻や間合いが表現の要です。
フレージングの緩急:同じフレーズでも微妙なテンポの揺らぎで感情が変化します。
言葉の扱い:歌詞表現(特にトゥムリやバジャン)で声が唄う“意味”をどう補強するかに注目。
伴奏との会話:サラングやタブラーとの即興的掛け合いが演奏のドラマを作ります。
入手のヒント
HMV(現 Saregama)由来の古いLPやCDは定番のソース。リマスターCDや配信で聴ける場合が多いです。
コンサートのライブ録音は音質や編集がまちまちなので、信頼できるレーベル(公演主催者や主要レーベルの公式リリース)を選ぶと安心です。
サブスクや大手配信サービスにも公式音源が増えています。まずは編集盤で代表曲に触れてから好きなラガのフル演奏を探す流れが効率的です。
音楽史的な意義(短評)
Kishori Amonkar の録音は、ヒンドゥスターニー声楽の「伝統」と「個性の革新」が同居する重要な資料です。技術的熟練に裏付けされた自由な解釈は、歌の内面性を掘り下げる現代の聴き手にも強い共鳴を与えます。レコード(あるいは配信)を通して彼女の表現の変遷を追うことは、同時代の演奏実践を理解する良い手がかりになります。
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