Art Ensemble of Chicago(AEoC)を徹底解説:入門から深掘りまでの聴き方ガイドとおすすめアルバム
はじめに:Art Ensemble of Chicagoとは
Art Ensemble of Chicago(以下AEoC)は、シカゴのAACM(Association for the Advancement of Creative Musicians)に端を発する前衛ジャズ・コレクティブです。複数の管楽器奏者が互いに楽器を持ち替えながら演奏し、「リトル・インストゥルメンツ」(小物打楽器や日用品的音響)や仮面・舞台演出を取り入れたパフォーマンスで知られます。即興と構築的作曲を自在に行き来するその音楽性は、ジャズのみならず現代音楽、パフォーマンス・アート、ワールドミュージックへも大きな影響を与えました。
聴き方のガイド(入門〜深掘り)
- まずは「作曲と即興のバランス」を感じてください。曲の骨格(メロディやリズム)と、その上で展開する自由な即興が特徴です。
- メンバーの持ち替え演奏や“空間の使い方”に注目すると、同じ楽器編成でも曲ごとに異なる表情が見えてきます。
- パフォーマンス的要素(声、効果音、掛け声など)も作品の一部です。楽曲を「物語」や「場面」だと捉えて聴くと理解が深まります。
- 入門順のおすすめ:まずは比較的構造が明快な作品→サウンドワールドが深い長尺作品→歴史的に重要な初期作、という流れで。
おすすめレコード — 深掘り解説
1. Les Stances à Sophie
ポイント:映画サウンドトラックとして制作され、ヴォーカル曲が効果的に配された一枚。Fontella Bass の歌唱が大きなアクセントになっており、AEoCの多様性を分かりやすく示す好例です。
- 聴きどころ:表題曲のヴォーカル/コーラスと、管楽器群が織りなすダイナミックな対比。
- なぜおすすめか:映画音楽という枠組みを通して、劇性の高い短い場面(断片)の連続が楽しめます。AEoCの“歌もの”の側面を知るには最適。
2. People in Sorrow
ポイント:長尺の組曲(スイート)を通じて、空間と時間をじっくり使った深い即興美を展開する代表作。瞑想的で重層的な音響世界が広がります。
- 聴きどころ:静寂や間(ま)を活かした展開、各メンバーの呼吸感や“音の細部”に注意。
- なぜおすすめか:AEoCの哲学的/儀式的な側面が色濃く表れた作品で、彼らの深淵な表現力を体感できます。
3. A Jackson in Your House
ポイント:多彩なサウンドパレットを持つ一枚。ジョークめいた瞬間から硬質な即興まで、曲ごとに表情が大きく変わるのが魅力。
- 聴きどころ:リズム・グルーヴとアブストラクトなセクションのコントラスト、各曲のキャラクターの違いに注目。
- なぜおすすめか:初期の実験精神とバンド内のユーモア、切れ味の良さがコンパクトにまとまっています。
4. Fanfare for the Warriors
ポイント:AEoCがアメリカ本国でより広い聴衆に届き始めた時期の、構成と即興のバランスが取れた名盤。ファンファーレ的な楽曲から哀愁あるテーマまで、多面的な魅力があります。
- 聴きどころ:テーマの明快さとアンサンブルの厚み。トランペットやパーカッションのリーダーシップにも注目。
- なぜおすすめか:初心者にも入りやすい一方で、聴き込むほど細部が見えてくる内容。ライブ感ある演奏も含まれているため、バンドの“生々しさ”を感じられます。
5. Nice Guys
ポイント:音響バランスやプロダクションが洗練された時期の作品で、作曲性が強く出ています。個々のソロの質の高さが際立つアルバムです。
- 聴きどころ:メロディの美しさ、編曲の緻密さ。時にポップな側面も覗かせる多様性。
- なぜおすすめか:自由即興が苦手なリスナーにも届きやすい“曲としての魅力”が強く、聴きやすさと深みを両立しています。
6. Urban Bushmen
ポイント:成熟期の強固なアンサンブルとライブ感。民族的リズム、儀式的要素、エネルギッシュな即興が融合した力作です。
- 聴きどころ:打楽器群のリズム感、集団即興としてのダイナミクス、コール&レスポンスの場面。
- なぜおすすめか:バンドが長年培った演奏力と表現の深さを感じられる一枚。ライブ盤的な臨場感も持ち合わせています。
どの盤から聴くか(おすすめの一覧)
- まずは聴きやすさ重視:Fanfare for the Warriors → Les Stances à Sophie
- 深く入る:People in Sorrow → Urban Bushmen
- 作曲性・アレンジを楽しむ:Nice Guys → A Jackson in Your House
メンバー別の注目ポイント(聴きどころ)
- Lester Bowie(トランペット系): ユーモアとエッジの効いた音色。時に荒々しく、時に哀愁をたたえます。
- Roscoe Mitchell(サックス/フルート類): 構造感と音響志向のアプローチ。ミニマル的要素や音色探求に長けています。
- Joseph Jarman(木管/打楽器/声): 仮面的・儀式的表現が強い。多彩な色合いを加える役割。
- Malachi Favors(ベース/声): グルーヴと土台を作る力。歌・声の使い方も特徴的です。
- Don Moye(パーカッション): リズムの多層性を生み、アンサンブルの推進力を担います(参加は途中から)。
レーベル・プレスの注意点(簡単に)
初期はヨーロッパのインディーレーベルで録音された作品が多く、その後アメリカの大手レーベルでの録音が増えます。音質・編集・トラック順はエディションによって差が出ることがあるため、興味のあるアルバムは信頼できるリイシューや公式リマスター盤をチェックするのがおすすめです。
聴きどころのまとめ(短く)
- 劇的な「場面転換」と瞬間瞬間の即興表現に耳を澄ます。
- それぞれのメンバーが「楽器を超えて」音色と役割を切り替える点に注目。
- 歌や外部音(効果音、日用品)の扱いが作品の物語性を強めている。
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参考文献
- Art Ensemble of Chicago — Wikipedia
- Art Ensemble of Chicago — AllMusic
- Art Ensemble of Chicago — Discogs
- Les Stances à Sophie — Wikipedia
- People in Sorrow — Wikipedia
- Urban Bushmen — ECM Records


