Eddie Harris の名盤ガイドと聴き方:ジャズの境界を広げた実験家の音楽を深掘り
イントロダクション — Eddie Harris を聴く理由
Eddie Harris(1934–1996)は、モダンジャズの枠を越えて「ヒット曲を作るジャズマン」「電子楽器を早期に取り入れた実験家」として知られるテナー奏者/作曲家です。ハードバップやソウルジャズにルーツを持ちながら、ポップなメロディ、ダンサブルなグルーヴ、エレクトロニクスの導入などで幅広いリスナー層を獲得しました。ここでは「レコードで聴くべき」おすすめ盤をピックアップし、それぞれの聴きどころ、背景、選盤時のチェックポイントを深掘りします。
Eddie Harris を理解するためのポイント
- 作曲家としての存在感:「Freedom Jazz Dance」など、他の大物が取り上げた楽曲を生み出した才覚。メロディとリズムのアイデアが強い。
- クロスオーバー志向:1960年代後半から70年代にかけてソウル/ファンク感覚を取り入れ、ジャズ外のリスナーを惹きつけた。
- 電子楽器・機材の活用:Varitone(アンプリファイド・サックス)など電子処理を実験的に導入。サウンドの幅を拡張した。
- ライブの説得力:スタジオ盤とは別に、ライヴでの即興とグルーヴ感が強く出る録音が多い。
代表的な名盤とおすすめポイント
Exodus to Jazz(1961)
ブレイク作。タイトル曲「Exodus」のカヴァーがヒットし、若き日のEddie Harrisを広く知らしめた一枚。ハードバップ/ソウルジャズの文脈で、メロディ重視かつ親しみやすいアレンジが多く、入門盤としても最適です。
- 聴きどころ:メロディのキャッチーさ、シンプルで骨太なソウルジャズの演奏。
- なぜおすすめか:商業的成功とジャズとしての堅実さが両立している点。初期のEddie Harrisの音像を知る上で重要。
- チェックポイント:オリジナル・ヴァージョンとリイシューでジャケットやボーナストラックが異なることがあるため、収録曲は盤ごとに確かめると良い。
Swiss Movement(Les McCann & Eddie Harris/1969)
スイス・モントルーでのライヴ録音で、Les McCannとEddie Harrisの共演作。Les McCannのボーカル入り「Compared to What」が大ヒットし、アルバム全体も社会的なムードと強いグルーヴで人気を博しました。ソウル、ゴスペル、ジャズが交差するエネルギッシュな一枚です。
- 聴きどころ:即興の掛け合い、リズムのタイトさ、観客との一体感。Eddieのソロが引き立つ場面が多い。
- なぜおすすめか:ジャズ史上の商業的成功例のひとつで、ジャズとソウルの境界を体感できる。
- チェックポイント:ライヴ盤なので演奏の臨場感が命。音質はプレスやリマスターで差が出ます。
Plug Me In / Electrified期の録音(late 1960s〜1970s)
この時期の作品群は、EddieがVaritoneや各種エフェクトを用いてサックスの電化を試みた時期です。エレクトロニクスによる音色の拡張は賛否両論ですが、彼の音楽的好奇心と先見性が色濃く出ています。
- 聴きどころ:サックスのトーン変化、エフェクトを用いた新たな表現、ファンク〜ソウル寄りのリズム。
- なぜおすすめか:ジャズがエレクトロニクスを取り入れていく過程を実際に聴ける歴史的意味がある。
- チェックポイント:エフェクトの音色やミックス感はリイシューやステレオ/モノラルの違いで印象が変わります。
名作群に収録される代表曲(作・演奏の側面から)
Eddie Harrisは「作曲家」としても強みがあり、以下の楽曲は彼のプレイスタイルや作曲センスを知る上で重要です。
- Freedom Jazz Dance — リズムの捩れとモチーフの繰り返しから生じる緊張感が特徴。後にMiles Davisらに取り上げられたことでも知られる。
- Listen Here、Cold Duck Time 等 — グルーヴ志向で、ライヴでの盛り上がりが映えるナンバー(盤によって収録箇所が異なるため確認を)。
- Compared to What(Les McCann の曲だが、Swiss Movementでの演奏はEddieのプレイの魅力を広く示した例)
聴き方の提案:何を注目して聴くか
- メロディとフレージング:他のテナリストとは違う「歌う」ようなフレーズ作りに注目。
- リズム感とグルーヴ:ソウル/ファンク寄りの節回しやファンクビートとの融合が特徴的。
- 電子化の時期:Varitone期の録音ではサウンドそのものが変わるため、スタンダードな生サックスと比較して聴くと面白い。
- ライヴの即興:Swiss Movementなどでは観客の反応やラフな掛け合いからEddieの人間味が伝わってきます。
選盤のコツ(どの盤を買うか迷ったら)
- 初めてなら:まずは「Exodus to Jazz」と「Swiss Movement」を。初期の名曲性とライヴでの魅力を両方押さえられる。
- 実験期を追いたいなら:Varitone/電化期のアルバムを数枚並べて聴くと、音楽的変遷がわかりやすい。
- オリジナル盤 vs リイシュー:音質とジャケット性はオリジナル盤に魅力がありますが、リマスター/ボーナス収録の利点もある。収録曲・クレジットは盤によって差があるので購入前に必ず確認を。
- 情報源:詳細なクレジットや盤情報はDiscogsやAllMusicで照合するのが確実です。
聴きどころを深掘り(演奏/作曲面)
Eddie Harris のプレイは「ブルースの語り口」と「モダンなリズム感」の接合点にあります。即興ではモチーフを短く切って繰り返しながら変化させることが多く、聴き手にとっては「あ、次はこう来るな」と予測させつつ裏切るフレーズが魅力です。作曲面では比較的短く反復的なテーマが多く、そこから派生するリズムの細工(シンコペーション、ポリリズム)が演奏の原動力になります。
こんな人におすすめ
- ジャズの“歌モノ”的要素を好むリスナー(キャッチーなテーマを求める人)
- ジャズとソウル/ファンクの接点に興味がある人
- 電子楽器やジャズの実験史に関心がある人
- ライヴの熱気・一体感を味わいたい人
最後に
Eddie Harris は「プレイヤー」「作曲家」「実験家」としての顔を持ち、それらが時期ごとに色を変えて現れる稀有な存在です。レコードで追いかけることで、音作りの変遷やライブでのダイナミズムを時系列的に体感できます。まずは代表作で彼の核を掴み、その後で実験期の盤やライヴ録音を掘る、という順で聴くのがおすすめです。
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参考文献
- Eddie Harris — Wikipedia(日本語)
- Eddie Harris — AllMusic(英語)
- Eddie Harris — Discogs(英語)
- Eddie Harris — JazzDisco(英語・セッション一覧)
※収録曲や発売年、クレジット表記は盤によって異なる場合があります。各アルバムの詳細(オリジナル盤情報や特定のリイシューの音質等)は上記のDiscogs/AllMusicページで確認することをおすすめします。


