クラレンス・クレモンズの生涯とサックスの歌心:E Street Bandの象徴が紡ぐロックとソウル

プロフィール — Clarence Clemons(クラレンス・クレモンズ)とは

Clarence Clemons(クラレンス・“ザ・ビッグ・マン”・クレモンズ、1942年1月11日–2011年6月18日)は、アメリカ出身のテナーサクソフォン奏者。ブルース、ソウル、ロックを自在に横断するパワフルかつ歌うようなサクソフォン・プレイで、ブルース・スプリングスティーン率いるE Street Bandの象徴的存在として知られる。豊かな音色と大柄な体躯(ニックネームは“The Big Man”)、ステージ上での存在感から多くのファンに愛された。

生い立ちとキャリアの概略

  • 出自:バージニア州ノーフォークで生まれ、音楽的ルーツはゴスペルやR&B、ジャンプ・ブルースなどに基づく。
  • E Street Band加入:1970年代初頭にブルース・スプリングスティーンと出会い、E Street Bandの核メンバーとして活躍。バンドの初期作から晩年のライヴまで長期にわたり重要な役割を果たした。
  • ソロ/客演活動:1980年代以降、ソロ名義や多数のアーティストのレコーディングやツアーに参加。特にジャクソン・ブラウンやアレサ・フランクリンらとの共演、晩年ではレディー・ガガの「The Edge of Glory」(2011)での共演が話題となった。
  • 晩年:自らのバンド「Clarence Clemons & The Temple of Soul」を率いてツアーを行い、ソウルフルな方向性を追求。2011年に急逝したが、その音楽的遺産は現在も色濃く残る。

演奏スタイルと音色の魅力(深掘り)

クラレンスの演奏魅力は一言で言えば「人間の声の延長としてのサクソフォン」。単なるリフやオブリガートに留まらず、メロディを歌うように語り、感情をぶつける力がある。

  • 太いテナーの音色:豊かな低域と明るい倍音が混じった、骨太で温度感のあるサウンド。ロックの大量音圧の中でも埋もれず、かつ馴染む。
  • フレージングの「人間性」:ビブラートや息づかい、語尾の伸ばし方などで“語る”演奏をする。これが聴き手の感情に直接訴えかける。
  • ドラマ志向の構築力:歌のクライマックスや物語の終盤に配置される長いソロ(例:Junglelandのエンディング)では、短編小説のような“語りの構成力”を発揮する。
  • ロック/R&Bの橋渡し:ブラックミュージック由来のニュアンスをロックの文脈に自然に持ち込み、両者のリスナーを結ぶ役割を担った。

ステージでの魅力 — 見せ方とチームワーク

クラレンスは“演奏するサクソフォン奏者”であると同時に“ショーの演出者”でもあった。大柄な身体を活かしたダイナミックな動き、フロントマンのブルースとのバックステージ的親密さが観客に強い印象を残す。

  • ブルース・スプリングスティーンとの掛け合い:楽曲中でのコール&レスポンスや終盤の抱擁・ハイタッチなど、聴覚と視覚で物語を補強した。
  • 観客との距離感:ソロでの「目線」を使った語り、歌心あるフレーズの繰り出しで客席に寄り添うような瞬間を多く作った。
  • ステージ人格:穏やかで気さくな人柄が舞台上にも表れており、豪快さと繊細さが共存するパフォーマンスを提供した。

代表曲・名盤(E Street Bandおよびソロ)

以下はクラレンスの“プレゼンス”が特に強く感じられる楽曲・アルバムの例。

  • Jungleland(Bruce Springsteen & The E Street Band) — 曲のラストを飾る長大なテナー・ソロはクラレンスの代名詞的名演。
  • Born to Run(アルバムおよび楽曲) — 都市の疾走感とサックスのブレイクが楽曲世界を押し上げる。
  • Tenth Avenue Freeze-Out(楽曲) — 歌詞の中で“the big man joined the band”と歌われるほどクラレンスの存在が楽曲化されている。
  • The Chief(Clarence Clemons、1985) — ソロ名義での代表作。シングル「You're a Friend of Mine」(Jackson Browneとの共演)などを収録。
  • Aretha Franklin – Freeway of Love(客演) — ポップ/R&Bのヒット曲に彩りを添えたサックスでの参加例。
  • Lady Gaga – The Edge of Glory(客演) — 晩年のコラボレーションで新たな世代にその音色を印象付けた。

テクニックとアプローチの具体点(実践的な視点)

演奏家としてクラレンスを分析すると、以下の要素が際立つ。

  • フレーズの“歌わせ方”:スラーとタンギングの使い分けで“言葉”のようにフレーズを構築する。
  • ダイナミクスの操作:強い音圧とこもった密やかな音を行き来させ、聴感上のドラマを作り出す。
  • トーン・コントロール:口元(アンブシュア)と息量で明快な芯も、暖かい丸みも瞬時に切り替える。
  • 音楽的語彙の融合:ジャズ的一音の装飾、R&Bのブルーノート、ロック的なストレートなリズム感を自在に混ぜる。

人柄・エピソードとコミュニティへの影響

クラレンスは単なる名手に留まらず、仲間思いで知られる人格者でもあった。E Street Band内での兄貴分的存在、若手ミュージシャンへの惜しみない支援、地元コミュニティへの貢献など、音楽の外側でも多くの影響を残した。

  • 舞台裏での信頼関係:ブルースとの長年のパートナーシップは、互いの音楽性を高め合う関係の典型。
  • 世代をまたいだ共演:年代やジャンルを越えて共演を重ね、サクソフォンの魅力を幅広いリスナー層に伝えた。
  • 遺産としての継承:没後もライブ映像や録音を通して、演奏法や“舞台上での振る舞い”が後進に学ばれている。

どう聴けばクラレンスの魅力が見えるか — 聴取ガイド

  • まずは“Jungleland”のラストソロを通しで聴く:物語性とフレージングの妙が分かる。
  • 次に“Born to Run”や“Tenth Avenue Freeze-Out”で短いフレーズの効用を確認:コンパクトな一声で曲を高揚させる技術を体感できる。
  • ソロ曲や客演作(The ChiefやArethaの音源)で、ロックとソウルの領域を横断する語彙を聴き比べる。
  • ライブ映像を見る:視覚的な掛け合い(身振り、表情、ブルースとのやり取り)が音楽体験を豊かにする。

クラレンスが残したもの — 総括

Clarence Clemonsは、“太い音”という物理的魅力だけではなく、サックスを通して物語を語るミュージシャンだった。彼の存在はE Street Bandの音像を決定づけ、ロックのステージ表現にサクソフォンを定着させた。技術、音色、ステージング、人間性が一体となったその魅力は、時代を越えて多くの演奏家と聴衆を動かし続けている。

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参考文献