Illinois Jacquetを聴くためのおすすめレコード徹底解説—初心者からコレクターまでの聴きどころと選び方
Illinois Jacquet(イリノイ・ジャケー)を聴くための推薦レコード深堀コラム
テナーサックス奏者イリノイ・ジャケー(1918–2004)は、ジャンルの境界を軽々と越える“ホンキング(honking)”スタイルと、ブルースやR&B的なグルーヴ感をジャズに取り込んだ先駆者です。本コラムでは初心者〜中級〜コレクター向けに、「これを聴け!」というレコード/録音をピックアップし、それぞれの聴きどころと入手・選盤の観点から深掘りして解説します(レコードの再生・保管・メンテナンスの技術的な解説は含めません)。
イリノイ・ジャケーを理解するための3つの鍵
ホンキング・テナー:力強いリードと“叫ぶ”ような音色。初期のソロ(特にライブ感のあるセッション)に顕著です。
シングル〜小編成での表現力:ビッグバンド時代の大ヒットソロだけでなく、トリオ〜クインテット編成での繊細なバラード表現も魅力です。
ジャンル横断性:スウィング、ビバップ、R&B的ソウル感、さらには後年のソウルジャズや商業的路線まで幅広く残しています。
おすすめレコード(選りすぐり)
Lionel Hampton — "Flying Home"(1942 セッション)
イリノイ・ジャケーを語るうえで欠かせない一発。ライオネル・ハンプトン楽団でのこの演奏は、ジャケーの“ホンキング”が一躍注目を集めた代表的なソロです。単曲ではありますが、ジャケーの存在感と当時のダンスホールの興奮がそのまま伝わる録音で、彼を理解する最短ルート。
聴きどころ:後半のソロでのエネルギーの放出、リズム・セクションとの応酬。
代表的な「1940sコンピレーション」(Savoy/Clefなどの初期録音を集めた編集盤)
ジャケーの初期〜隆盛期のシングル群をまとめた編集盤は、彼の基礎を押さえる上で有益です。複数のシングルやセッションを時系列で追えるため、ホンキング・スタイルの成長や編成ごとの違いがよく分かります。
聴きどころ:初期のエッジの効いたソロ、短い演奏での“決め”の妙。
1950s〜60s の小編成アルバム(Verve / Clef / Prestige 等のリリースを含む編集盤やオリジナルLP)
この時期のリーダー作には、ジャケーのバラードの情緒とハードに攻めるホンキング双方が良く現れます。オーケストラ的な録音とは異なり、伴奏との対話や音色の変化をじっくり味わえます。
聴きどころ:テンポや編成を変えた時のソロのアプローチ、声のようなトーンの表現。
ライブ録音(クラブ・音楽祭のライヴ盤)
ジャケーはライブでの即興的高揚感が魅力の一つ。観客の反応を受けてどんどん盛り上がるソロはLPスタジオ録音では味わえないダイナミズムがあります。可能ならばライブ盤を一枚は聴くことをおすすめします。
聴きどころ:長尺ソロの構成、コール&レスポンス的パート、即興によるフレーズの拡張。
後年のソウルジャズ/商業路線のアルバム(1960s〜1970s)
この時期は商業的要素が強くなるものの、ジャケーの“歌う”テナーはより幅を増します。R&B的なグルーヴや歌心を重視した演奏は、ジャズ以外のリスナーにも入りやすい音像です。入門編としてもおすすめ。
聴きどころ:メロディの歌い回し、バックのビートとの親和性。
ベスト/アンソロジー盤(「ベスト・オブ」「コンプリート」系コンピレーション)
初めてジャケーに触れるなら、編集盤やアンソロジーはコストパフォーマンスが高い選択です。代表的なシングルからレアなセッションまで網羅するタイプもあり、好みの時期や編成を探る足がかりになります。
選び方のコツ:ライナーノーツの充実度、音源の出典明記(ステレオ/モノラル、マスター音源の有無)を確認。
各レコードをより深く楽しむための聴きどころ解説
「フレーズの“刺し身”」を味わう:ジャケーのソロは短いパンチのあるフレーズを積み重ねていくタイプが多いです。1フレーズごとの形、そして次への繋ぎを見ることで即興構築のセンスが分かります。
「音色の変化」に注目:強く吹く“叫び”と、スローで繊細なバラードの息づかい。同じ楽器でも表現が劇的に変わる点に注目すると、演奏家としてのレンジを実感できます。
「バックのリズムに対する応答」:特に小編成では、ピアノ/ギター/ドラムとの呼吸が重要です。ジャケーがリズムの“隙間”をどう埋めるかを追ってみてください。
入手・選盤の実務的アドバイス
オリジナルLPかリイシューか:オリジナル盤はマニア向け。音質重視ならマスターを使った良質なリマスター盤(国内外の再発レーベル)を探すのが現実的です。編集盤は曲の重複が多いので、収録曲をチェックしてから購入。
ライナーノーツと音源出典を確認:誰が参加しているか、どのセッションかが明記されている盤を選ぶと、聴き方が深まります。セッション年月日や共演者の名前は重要な手がかり。
デジタル配信・ストリーミングの利用:まずはストリーミングで代表曲・代表盤をチェックして、気に入ったら盤で揃えるという流れが効率的です。
聞き比べ・コレクションの楽しみ方
同一曲の異なる録音を聴き比べる:たとえば「Flying Home」系の異なるライブ・スタジオ録音を数種類聴くと、即興表現の幅がよく分かります。
共演者で切り分ける:ピアニストやリズム隊が変わるとジャケーのソロ構成も変化します。相性の良いピアニストやギタリストがいる録音を中心に集めるのも一案です。
最後に:何を基準に「良盤」とするか
ジャケーの魅力は「荒々しさ」と「豊かな歌心」の両立にあります。音質や編集の良し悪しも大事ですが、まずは“その演奏が心を動かすか”を第一に。時代ごとの録音背景を知りつつ、気持ちよく何度も聴ける盤を基準に選ぶと良いコレクションになります。
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参考文献
- Illinois Jacquet — Wikipedia
- Flying Home — Wikipedia(代表曲の解説)
- Illinois Jacquet — AllMusic(ディスコグラフィと解説)
- Illinois Jacquet — Discogs(リリース一覧)
- Illinois Jacquet Sessionography — JazzDisco.org(レコーディング・セッション情報)


