ソニー・スティット完全ガイド:ビバップを極めたアルト/テナー奏者の名盤と聴き方ガイド
プロフィール
ソニー・スティット(Sonny Stitt、1924年2月~1982年7月)は、アメリカのジャズ・サクソフォニスト。アルトとテナー両方を自在に操ったビバップ/ポストビバップ期を代表するプレイヤーの一人です。1940年代から1980年代にかけて非常に多作で、スタジオ/ライブ両面で膨大な録音を残しました。チャーリー・パーカーと比較されることが多い一方で、そのテクニック、即興の語彙、感情表現には独自性と深みがあります。
音楽的特徴と演奏技術の深掘り
ビバップ語彙の申し子:スティットはビバップの言語(スケール、クロマチック・アプローチ、不協和音の処理、短いフレーズの連結など)を極めて自然に使いこなし、流麗で論理的なソロを築きます。
アルト/テナーの二刀流:アルトではパーカー的な鋭さと速いパッセージ、テナーではより太くブルージーな音色と伸びやかなフレージングを聴かせます。同一奏者が楽器ごとに異なる「声」を持つ点が魅力です。
音色とアーティキュレーション:アタックがクリアで、タンギングの表現が鮮やか。速いパッセージでもフレーズの輪郭を失わず、聞き手に「語っている」感覚を与えます。
コード感の把握とメロディ化:複雑なコード進行のアウトラインを的確に舐めるように弾き、時にシンプルなブルース志向へと収斂させることで、難解さと親密さを同居させます。
情緒表現と技巧のバランス:単なる速弾きや技巧の誇示に留まらず、バラードや中庸のテンポでは温かさや哀愁を前面に出すなど、感情表現を大切にしました。
代表作・名盤(聴きどころ付き)
Sonny Side Up(※共演:Dizzy Gillespie, Sonny Rollins) — 「Eternal Triangle」など、ソニー・ロリンズとの切磋琢磨が光る一枚。バトル的なインタープレイを楽しめます。
Boss Tenors(Gene Ammonsとの共演) — テナー同士のデュオ感あふれるセッション。シカゴ/シカゴ系の太いテナー・サウンドとビバップ語法の融合が聴けます。
Stitt Plays Bird — チャーリー・パーカーへのオマージュ的な内容ながら、スティット自身の解釈とフレージングの個性が明確に示された作品です。
(その他)多数のプレスティッジ/ルーレット等での録音群 — 彼は多くのリーダー作と共演作を残しており、ハードバップからソウルフルな小編成プレイまで幅広く網羅できます。入門者は上記の数タイトルを起点に、時代や編成を横断して聴くと良いでしょう。
聴きどころの具体的なポイント
テーマの歌わせ方:ヘッド(主題)を単なる導入とせず、その旋律をソロのモチーフに取り込みながら発展させる手法に注目してください。
対位法的バトル:共演者との「会話」の中で、応酬するフレーズの構築力と即興の組み立て方に耳を傾けると、スティットの構築力がわかります。
アルトとテナーの比較リスニング:同じ曲をアルト/テナーで聴き比べると、彼の楽器ごとの表現の使い分けが明瞭に理解できます。
コラボレーションと活動史の要点
スティットは戦後のジャズシーンで多くの有名ミュージシャンと共演しました。ビバップ期からハードバップ・ソウルジャズ期まで活躍し、レコーディング数は膨大です。特にジーン・アマンズとのテナー共演や、ディジー・ガレスピー/ソニー・ロリンズとのセッションはハイライトとして語られます。小編成のリード・アルト/テナーとしての即興能力、そしてセッションマンとしての順応性が、需要の高さに繋がりました。
なぜ魅力的なのか — 深掘りした魅力の構成要素
技術と感情の両立:高速で複雑なフレーズもただの技巧ではなく、感情や歌心に結びつけて提示することで、聞き手の心に残る即興を作ります。
一貫したビバップ美学:ビバップの理論を土台にしつつ、各時代のジャズ潮流(ハードバップ、ソウルジャズ等)を柔軟に取り込み、古びない表現を維持しました。
膨大な録音量が示す多面性:大量のセッション録音は、即興者としての変化球(ブルース、バラード、ドライヴィング・アップテンポ等)に対する適応力と発想の幅を示します。
直接的な「語り」の魅力:フレーズが言葉のように展開するため、ジャズ初心者にも「話が通じる」感触で親しみやすい面があります。
遺産と影響
スティットの遺産は「ビバップの語彙の体現者」としての側面と、「実践的な即興の教科書」のような側面にあります。多くの若手サックス奏者が彼の録音を学習素材として取り上げ、技術的かつ表現的な側面を吸収してきました。批評的にはパーカーとの比較で議論されることもありますが、今日ではその独自の声と膨大な作品群を高く評価する声が主流です。
聴き方・学び方の実践的アドバイス
まずは代表作数枚(前述)を繰り返し聴き、フレーズの繰り返しや語尾の処理に注目する。
気に入ったソロをトランスクライブ(写譜)し、フレーズを自身の器で吹いてみる。語尾・間の取り方に学びが多い。
アルトとテナー両方の演奏を比較して、音色とフレージングの違いを体感する。
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参考文献
- Sonny Stitt — Wikipedia
- Sonny Stitt — AllMusic
- Sonny Stitt — Britannica
- Sonny Stitt Discography — JazzDisco.org


