エンニオ・モリコーネをレコードで聴く極意:代表作と掘り出し盤で味わう映画サウンドトラック

はじめに — エンニオ・モリコーネという作曲家をレコードで聴く意義

エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone, 1928–2020)は、映画音楽の枠を超えた独創的なサウンドで世界中のリスナーを魅了してきました。スパゲッティ・ウェスタンでの象徴的なサウンドから、宗教的な合唱、ミニマルな室内楽、実験的なノイズまで幅広く手がけたため、LPというアナログ媒体で聴くことで「音の空間」やディテールの厚みがより伝わります。本コラムでは、レコードで持っておきたいおすすめ盤を中心に、各作品の聴きどころや探すべきエディションのポイントを解説します。なお、再生・保管・メンテナンスの実務的な解説は含めません。

モリコーネの音楽的特徴 (短く)

  • 多彩な音色:トランペットやホイッスル、電気ギター、合唱、口笛、非西洋的パーカッションなどを効果的に混ぜる。

  • テーマの力:短いモチーフを変奏・展開し、映画の情感を一貫して支える。

  • ジャンル横断性:クラシック、ジャズ、現代音楽、ポップ的要素を自由に横断する。

おすすめレコード(必携・代表作)

  • Il buono, il brutto, il cattivo(『夕陽のガンマン/続・夕陽のガンマン』) — 1966

    代表曲「The Ecstasy of Gold」をはじめ、ホイッスルやトランペット、合唱が交錯する象徴的サウンドトラック。映画音楽史上のマスターピースで、LPジャケットもアイコニック。探すならオリジナル・イタリア盤(ジャケット/インナーの印刷がオリジナルのもの)や近年の180gリマスター盤(アナログ由来のマスター使用を明記したもの)が狙い目です。

  • C'era una volta il West(『ウエスタン』(Once Upon a Time in the West)) — 1968

    長いテーマと繊細な楽器配置、リリカルなメロディが特徴。ギターとオーケストラの対比、女性ボーカルの使い方など、モリコーネの作曲技法が凝縮されています。サントラLPはオリジナルと良質なマスターからのリイシューで音の色合いがかなり変わるため、マスタリング表記をチェックして選びましょう。

  • Once Upon a Time in America(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』) — 1984

    映画の叙情性に寄り添う長尺のテーマ群。甘くも切ないメロディが多く、ナイロン・ギターやピアノの余韻が美しい。映画版とアルバム版で編集が異なるため、完全版スタイルのリリースや拡張盤(ボーナストラック付)を探す価値があります。

  • The Mission(『ミッション』) — 1986

    モリコーネの宗教的・叙事詩的な面が色濃く出た傑作。ソプラノや合唱、弦楽器の静謐な厚みと、民族楽器の融合が特徴。2000年代以降に複数回リマスターが出ているため、ダイナミックレンジやアナログ転送の有無で選ぶと良いでしょう。

  • Cinema Paradiso(『ニュー・シネマ・パラダイス』) — 1988

    映画のノスタルジーを体現する暖かいメロディ群。ピアノや弦のアンサンブルが美しく、映画音楽の「感情を直球で伝える」力を示します。オリジナル・サウンドトラックLPや、拡張版の二枚組などを用途に応じて選んでください。

  • A Fistful of Dollars / For a Few Dollars More / The Good, the Bad and the Ugly(スパゲッティ・ウェスタン三部作)

    3作をまとめて聴くことでモリコーネのウェスタン期の発展がよく分かります。単体で名盤扱いの盤も多いですが、まとめたアンソロジーやコンピレーションLPも存在します。オリジナル音源由来のリイシューを優先しましょう。

  • The Hateful Eight(2015)

    タランティーノ作品のために書き下ろしたスコアで、モリコーネが再びアカデミー賞(作曲賞)を受賞した作品。冬景色を思わせる冷たいオーケストレーションと緊張感のあるサウンドが魅力。新しい録音なので、180gや限定カラーヴァイナルなどコレクター向けエディションが多く流通しています。

  • Investigation of a Citizen Above Suspicion(『汚れた英雄』(1970)などのドラマ作)

    メロディアスな作品ばかりでない、サスペンスや社会派映画のための重厚なスコアも聴きどころ。映画のムードを強く反映した抑制的な楽曲が多く、コンセプト的に楽しめます。こうしたマイナー題材こそLPで探す楽しみがあります。

コアなコレクター向け:掘り出し盤・レア盤の紹介

  • 初期イタリア盤(Cinevox等) — 映画公開当時に出た初版プレスはジャケットやインナーに独特のフォントや印刷が残っていることが多く、コレクションとして価値があります。

  • 未発表曲・拡張版(Deluxe/Expanded Edition) — デジタルリミックスや発掘音源を含む2枚組/多枚組は、映画の編集差や別録音を比較でき、ディープリスナーにおすすめです。

  • リマスター系(180g、アナログ転送明記) — 現代の再発ではマスターの出所(アナログ・テープからの新規転送かどうか)、マスタリングエンジニアのクレジットをチェックすることで音質の当たり外れを回避できます。

レコード選びの実用的なポイント(音楽的観点)

  • マスターの出所を確認する — 「original analogue master」「mastered from original tapes」などの表記があると、アナログの質感が保たれている可能性が高いです。

  • モノラル/ステレオの違い — 1960年代の一部作品にはモノラルの初期盤が存在します。ミックスの違いで音像感やバランスが大きく変わることがあるため、好みに応じて選びましょう。

  • リイシューのスタッフ情報 — マスタリングエンジニア(例:切り替えやノイズ除去の方法)が分かれば音質予測に役立ちます。

  • 付属資料(ライナーノーツ、スコア断片、写真) — モリコーネの場合、解説や映画スチールが豊富なエディションは資料価値も高いです。

聴くときに注目したい音楽的ディテール

  • 短いモチーフの変奏:同じフレーズが楽器やアレンジで繰り返されることで情景が変わる様子を追ってみてください。

  • 音色の組み合わせ:口笛+女性合唱、電気ギター+弦楽など「意外な組合せ」から生まれる効果を聴き分けましょう。

  • 沈黙の使い方:余白や間(ま)を大事にする場面が多く、そこでの静かな表現が強い印象を残します。

少しマニアックに掘るなら

  • テレビ用や短篇映画のスコア、未発表トラック集など。大箱のサントラに入らない実験的・現代音楽寄りの作品群は、作風の幅広さを再発見させてくれます。

  • 共作や編曲を担当した作品(他監督作品のアレンジなど)もチェックすると、モリコーネの支援的な役割やアレンジ力が分かります。

まとめ

Ennio Morricone のレコード・コレクションは「映画音楽の名曲集」を超え、作曲家の多面性を示す音楽史的な資料とも言えます。まずは代表作(『夕陽のガンマン』『ウエスタン』『ニュー・シネマ・パラダイス』『ミッション』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』など)を押さえ、その後にリマスター差や初出LPの違いを楽しみながら掘っていくのがおすすめです。

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参考文献