クラシックの「作品番号(Op.)」とは何か:歴史・分類・実務での使い方を徹底解説

作品番号(Op.)とは何か — 基本の理解

「Op.」はラテン語の opus(作品)の略記で、作曲家の作品を識別するために付される番号です。出版物や楽譜、演奏会のプログラム、録音のメタデータなどで広く使われ、たとえば『ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 Op.73』(ベートーヴェン)や『ノクターン Op.9-2』(ショパン)のように、作品を特定する重要な手がかりになります。

重要なのは、Op.が「作曲順」の厳密な記号ではないという点です。伝統的には出版社や作曲家自身が付与した番号であり、時に出版時期に基づく順序、あるいは作品群をまとめて付けられる場合があります。そのため、Op.の数字が厳密に作曲年代を反映しないことが多々あります。

歴史的背景と発展

作品番号は18〜19世紀に出版文化とともに広がりました。楽譜の普及と商業的な出版が進む中で、出版社が作品を管理・販売するために番号を付けることが一般化しました。作曲家自身が番号付けを行う場合もありますが、多くは出版社の裁量に委ねられ、結果として同一作曲家の作品群に不連続や抜けが生じることになりました。

また、近代音楽学の発展に伴い、Op.だけでは補えない作品を包括的に整理する必要が生じ、個別作家に対する専門のカタログ(作品目録)が作られるようになりました。これが今日見られる BWV、K.、D.、Hob. などの体系につながります。

代表的なカタログとその意味

  • BWV(Bach-Werke-Verzeichnis):J.S.バッハの作品目録。BWV番号はジャンル別に配列されており、必ずしも作曲順ではありません。
  • K.(Köchel):モーツァルト作品目録。ルートヴィヒ・フォン・ケッヘルが編纂したため K.(または KV)で表記され、基本的には作曲年代順に並べられています。
  • D.(Deutsch):シューベルトの作品番号。オットー・エーリヒ・ドイチュによる編纂で、D.番号は学術的に広く使われます。
  • Hob.(Hoboken):ハイドンの作品目録。アンソニー・ヴァン・ホボーケンによる分類で、ジャンルごとに番号が割り当てられています。
  • B.(Brown):ショパンの無番号作品や補助番号に用いられる場合があり、モーリス・ブラウンの研究に由来します。
  • S.(Searle):リストの作品番号。ハムフリー・シールのカタログから来ています。
  • B.(Burghauser):ドヴォルザークの作品目録(Burghauser番号)。
  • HWV(Händel-Werke-Verzeichnis):ヘンデルの作品目録。

これらのカタログは、Op.だけでは不十分な場合に作品を一意に示す手段として重宝されます。たとえば、J.S.バッハに Op. という概念は存在しないため、BWV番号が標準的に用いられます。

Op.表記のバリエーションと注意点

  • Op. と op.:慣習的には大文字・小文字どちらも見られますが、印刷上は「Op.」が一般的です。
  • Op. posth.:死後に出版された作品には「Op. posth.(遺作の番号)」が付されることがあります。これも作曲順や成立時期と必ずしも一致しません。
  • 番号のまとめ方:複数曲をまとめて一つの Op. 番号に収めることがあります(例:曲集としての Op.)。そのため Op. の番号のみでは単一作品を特定しにくい場合があります(例:『ピアノ小品集 Op.10』の中の何番か)。
  • 改訂・再出版での番号変更:古い版では別番号が振られていたり、出版社が異なる番号を与えたりする例もあり、資料によって表記が揺れることがあります。

Op.だけに頼れない具体例

いくつかの代表的な具体例を挙げると、Op.番号だけで混乱が生じる状況がよくわかります。

  • ベートーヴェン:Op.番号のない作品群は WoO(Werke ohne Opuszahl)で整理されます。さらに、発見や編纂の都合で Hess 番号など別の索引が用いられることもあります。
  • モーツァルト:Op.の概念自体がほとんど使われないため、Köchel(K.)番号が主流です(例:Eine kleine Nachtmusik = K.525)。
  • バッハ:BWV番号が一般的で、ジャンル別に整理されているため単純な通し番号ではありません(例:ブランデンブルク協奏曲第3番 = BWV 1048)。
  • シューベルト:作曲年代順の混乱や出版順のズレが多く、D.(Deutsch番号)が使われます(例:歌曲集『冬の旅』 = D.911)。

リスナーや研究者にとっての実用的アドバイス

Op.表記を見て作品を正しく理解・検索するためのポイントを挙げます。

  • Op.は「目安」として使う:作曲年代や作風を推測する手がかりになりますが、厳密な年代判断にはならないことを意識しましょう。
  • 作曲家別のカタログ番号を合わせて確認する:バッハ(BWV)、モーツァルト(K.)、シューベルト(D.)など、該当するカタログ番号があれば併記で探すと確実です。
  • 演奏会プログラムや録音の表記が違うときは楽譜・図版・学術書を参照する:特に古い録音や楽譜では違う番号体系が使われていることがあります。
  • デジタル資料を活用する:IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)や音楽学のデータベースで、作品の複数の表記(Op.、BWV、K.など)を横断的に確認できます。

図書館・楽譜購入・データ管理での留意点

図書館やコレクション、配信メタデータの世界では、作品を一意に特定することが重要です。Op.のみで索引すると同名作品や複数版に混乱が生じます。可能であれば以下を同時に記載すると検索性が向上します。

  • 作曲家名(フルネーム)
  • 作品名(原語・通称の両方)
  • Op.番号と副次番号(Op.10-1 など)
  • 該当する学術カタログ番号(BWV、K., D., Hob. など)
  • 編年・版情報(初版年、改訂版の有無)

よくある誤解とその修正

誤解1:Op.の数字=作曲順。→ 実際には出版順や作品集順である場合が多く、成立順とずれることがある。

誤解2:すべての作曲家にOp.がある。→ バッハやモーツァルト、初期の作家など、多くは固有のカタログ番号で管理される。

誤解3:Op.は絶対的な識別子。→ Op.は便宜的な識別子であり、学術的には各作家の標準カタログ番号がより精確です。

現代の視点:デジタル時代と作品番号

デジタル化の進展により、作品の識別子はますます重要になっています。データベースやストリーミングサービス、図書館目録では複数の識別子(Op.、学術カタログ番号、ISWCやMusicBrainzの識別子など)を併記することで、誤表記や重複を避ける運用が進んでいます。利用者としては、検索時に複数のキー(作曲者名+Op.、または作品名+カタログ番号)で探すと確実です。

まとめ

作品番号(Op.)はクラシック音楽を識別する便利な手がかりですが、万能ではありません。歴史的経緯や出版社の事情、作曲家ごとのカタログの存在を理解した上で使うことが重要です。リスナー、演奏者、研究者いずれにも、Op.に加えて学術カタログ番号や版情報を参照する習慣をつけることで、誤解や混乱を防げます。

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参考文献

IMSLP / International Music Score Library Project(楽譜データベース)

Opus number - Wikipedia(概要、歴史的背景)

Bach-Werke-Verzeichnis (BWV) - Wikipedia

Köchel catalogue - Wikipedia(モーツァルト)

Deutsch catalogue (D.) - Wikipedia(シューベルト)

Hoboken catalogue (Hob.) - Wikipedia(ハイドン)

Maurice J. E. Brown(ショパン研究・Brown番号に関する情報) - Wikipedia

Humphrey Searle(リスト目録 S.) - Wikipedia

Jarmil Burghauser(ドヴォルザーク目録 B.) - Wikipedia

Händel-Werke-Verzeichnis (HWV) - Wikipedia