Hob.とは何か――ハイドン研究と演奏に欠かせない作曲目録の読み方と使い方
序論:Hob. 表記の意味と重要性
クラシック音楽の文献や演奏会のプログラム、CD解説で頻繁に見かける「Hob.」という表記は、ヨーゼフ・ハイドン(Joseph Haydn, 1732–1809)の作品を参照するために用いられる作曲目録の略号です。単に作品番号やOp.(オーパス)だけでは混乱が生じることが多いハイドンの広範な作品群を、ジャンル別に整然と整理した点で、研究者や演奏家にとって不可欠なツールとなっています。
起源と編纂者
「Hob.」は、編纂者であるアンソニー・ヴァン・ホーボーケン(Anthony van Hoboken)にちなむ略称です。ヴァン・ホーボーケンは20世紀中葉に、ハイドンの作品を体系的に収集・分類し、主題(旋律の冒頭)を示したテーマ目録と詳細な書誌情報をまとめました。この目録は、ハイドン研究の標準参照となり、作品の識別と比較検討を容易にしました。
目録の構成と表記法
Hoboken 目録はジャンルごとにローマ数字のカテゴリーを付与し、その中で個々の作品に通し番号を与える形式をとります。一般的な表記は「Hob. I:94」のように、コロンで区切って示されます。ローマ数字は作品群(例:交響曲、弦楽四重奏曲、ピアノソナタ、宗教曲など)を示し、続くアラビア数字がそのジャンル内の通し番号です。
- 例:Hob. I:94 — 交響曲第94番「驚愕」(Symphony No.94)
- 例:Hob. I:104 — 交響曲第104番「ロンドン」(Symphony No.104)
このように、Hob.表記は同一の「交響曲第○番」という呼称だけでは区別しにくい作品を正確に示すために役立ちます。オーパス番号や出版番号が存在しない、あるいは不統一な作品群に対して一貫した参照を提供するのが特徴です。
Hob. の実務的な使い方
演奏会プログラムやレコーディングのクレジット、学術論文での引用などでHob.表記は頻繁に用いられます。特に次のような場合に有用です。
- 同名異曲が多いジャンル(例:交響曲)での混同防止。
- 作品の真偽(正作か偽作か)をめぐる議論の参照時。
- 古い版や復刻版と原典資料(自筆譜、校訂譜)を比較する研究時。
また、音楽データベースや図書館カタログでもHob.番号を用いることで検索性が向上します。例えば、ある交響曲を探す際に「Hob. I:94」と検索すれば、該当するスコアや録音、解説書が確実に絞り込めます。
Hob. と他の目録との関係
作曲家ごとに編纂された目録は多く、モーツァルトのK(Köchel)番号、バッハのBWV番号などと同様に、ハイドン研究の基礎を成します。Hob.はジャンル別整理を基軸にしており、オーパス番号が存在する作品についてはOp.番号と併記されることも多いです。これは演奏家や聴衆にとって双方の利点を兼ね備えた表記法といえます。
注意点と限界
Hob.目録は非常に有用ですが、限界もあります。ハイドンの作品の中には真偽が確定していないもの、別人の作と判明したもの、あるいは新出資料によって属性や成立時期が修正されるものがあり、目録単独では最新の学説や版の違いを反映しきれない場合があります。そのため、重要な研究や版を使った演奏に際しては、必ず最新の研究文献や原典版にあたることが推奨されます。
具体的な研究・演奏上の応用例
例えば、交響曲を全集で集める際、Hob.番号に従えばジャンル内の未収録曲や変奏形、断片の所在も明確になります。また、弦楽四重奏や宗教曲の研究では、Hob.の主題目録(主題の冒頭を表記した項目)を使って類似主題や引用関係を比較検討できます。さらに、録音ディスコグラフィを整理する場合にも、Hob.は異なる版や編曲を区別するための便利な指標です。
近年の動向:デジタル化と目録の補強
デジタル・ヒューマニティーズの進展により、Hob.に基づくデータはオンラインでアクセス可能になりつつあります。スコアのデジタル化、主題のイメージ検索、メタデータの相互参照などにより、目録が補強され、研究者だけでなく一般の聴衆や演奏家にも利用しやすくなっています。一方でデジタル化にともない、信頼できる一次資料と目録情報の照合がますます重要になっています。
まとめ:Hob.をどう活用するか
Hob.はハイドン研究と演奏における共通言語であり、ジャンル別整理と主題目録という形式は、作品の特定・比較・検索に強力な利便性を提供します。ただし、目録はあくまで「道具」であり、最新の研究成果や原典資料との突き合わせが不可欠です。演奏家は演奏に用いる版の出典を明示し、研究者はHob.番号と併せて出典情報を丁寧に示すことで、情報の正確性と透明性を保つことができます。
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参考文献
- Hoboken catalogue — Wikipedia (英語)
- Anthony van Hoboken — Wikipedia (英語)
- Joseph Haydn — Wikipedia (英語)
- IMSLP: Joseph Haydn (楽譜と資料の公開アーカイブ)
- Oxford Music Online(Grove Music Online など、詳細検索は購読が必要)
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