ロンゴ番号とは何か:スカルラッティ鍵盤ソナタの番号付けを巡る歴史と実務ガイド

導入 — ロンゴ番号を知る意義

「ロンゴ番号」(Longo番号)は、ドメニコ・スカルラッティ(Domenico Scarlatti, 1685–1757)の鍵盤ソナタ集に付された番号体系の一つで、イタリアの音楽学者・ピアニストであるアレッサンドロ・ロンゴ(Alessandro Longo, 1864–1945)が編纂した版に由来します。スカルラッティのソナタは全体で五百五十五曲前後とされ、作曲年代が一定しないため、作品を特定し参照するために番号体系が不可欠になりました。本稿ではロンゴ番号の成立背景、特徴、後のカタログ(特にカークパトリック番号)との関係、演奏・研究での扱い方、注意点、参考情報源までを詳しく解説します。

ロンゴ番号の成立とアレッサンドロ・ロンゴ

アレッサンドロ・ロンゴは19世紀末から20世紀初頭にかけてスカルラッティの鍵盤ソナタ集の編集に取り組みました。彼は既存の写本や刊本を整理し、実用的なピアノ版として多くのソナタを選定・校訂して出版しました。その際に付した通し番号が「ロンゴ番号」として知られるようになりました。ロンゴの版は当時の演奏者や出版の標準となり、長く流通したため、今日でも録音や楽譜でロンゴ番号が併記されていることが多いのはこのためです。

ロンゴ番号の特徴

  • 編纂目的が実用的:ロンゴは演奏用のピアノ版を意識して編集しており、写譜の揺らぎを整理し便宜的な改変を加えた箇所もあります。

  • 番号付けの基準が厳密な年代順ではない:ロンゴは主に調性や演奏上の配列を考慮して番号を付けたため、必ずしも作曲年代順を反映していません。

  • 広く普及:20世紀前半に広く受け入れられたため、古い文献や録音ではロンゴ番号で言及されることが多いです。

カークパトリック番号との違い(K./Kk. 番号)

ロンゴ番号が編纂上の便宜を重視したのに対し、ラルフ・カークパトリック(Ralph Kirkpatrick, 1911–1984)は1953年にスカルラッティ鍵盤ソナタの体系的なカタログを作成し、より学術的・年代的な観点から番号付け(一般にK.またはKk.と表記される)を行いました。カークパトリックは写本の系譜やスタイル分析を駆使して作品群を再編成したため、現在では学術研究や新しい楽譜版でK番号が標準的に使われることが多いです。

なぜ複数の番号が存在するのか — 実務的な影響

複数の番号体系がある理由は、スカルラッティの作品群が非常に多く、原典資料が分散・錯綜していたこと、そして編集者ごとに重視する基準が異なったためです。実務上は次のような影響があります。

  • 楽譜や録音の表記が混在:古いLPや旧版楽譜ではロンゴ番号のみ、近年の版や論文ではK番号が優先されることがあります。

  • 検索・照合の手間:両方の番号を知っていると文献や音源を確実に特定できます。多くのデータベースや図書館目録は両者を併記しています。

  • 解釈の差:ロンゴの編集には章立てや繋ぎ、抜粋の選択など編集的判断が入っているため、原典重視の演奏家や研究者はカークパトリックや原典版を参照する傾向があります。

演奏家・聴衆のための実践ガイド

  • 楽譜を選ぶ際:演奏目的が歴史的演奏法の再現や学術的研究であればカークパトリック番号に基づく校訂版(および原典版)を推奨します。便利さや入手性を重視する場合はロンゴ版も有用です。

  • プログラム表記:聴衆やプログラムのために曲目を表記する際は「ソナタ K.123(L.456)」のように両方併記すると混乱を避けられます。どちらか一方だけを示す場合は、使用した楽譜版に従ってください。

  • 録音やデータベース検索:音源やスコアを探すときは、両方の番号で検索するとヒット率が上がります。特に古い録音や輸入盤ではロンゴ番号のみが表記されていることがあります。

ロンゴ版の編集上の特徴と批判点

ロンゴの校訂には長所と短所があります。長所は演奏しやすい体裁に整えられた点、広く普及したことによる標準化効果です。一方で、短所としては原典主義的観点から見ると任意の装飾や移調、連結などが施されている場合があり、作曲当時の原爆写譜のニュアンスが失われていると批判されることがあります。このため、現代の歴史考証を重視する演奏家は原典版やカークパトリックの校訂を参照することが多いです。

ロンゴ番号と現代のデータベース・資料

現在、インターネット上の主要音楽資料(IMSLP、各種図書館カタログ、レコード会社のデータベースなど)では、作品識別の便宜上ロンゴ番号とカークパトリック番号の両方を併記していることが多いです。相互参照表(コンコルダンス)も公開されており、これを使えば番号間の対応を調べられます。検索時には作品の調(例:ホ長調)、典型的なモチーフ、演奏時間などの情報も合わせて使うと特定が容易になります。

よくある誤解と注意点

  • ロンゴ番号=正確な年代順ではない:ロンゴ番号は便宜的な並びであり、作曲年代を示すものではありません。

  • 必ずしも全曲がロンゴに含まれるわけではない:ロンゴ版の選集に基づく番号のため、版によって収録曲が異なることがあります。

  • 呼び方の表記揺れ:L.、Longo、ロンゴ、K.、Kk.など表記が混在するため、文献を扱う際は表記規則に注意してください。

実例的な検索・参照方法

例えば学術論文やプログラムエントリーで特定のソナタを示す際には、次のように記すと親切です:作曲者名、ソナタ名(調性)、K番号(ロンゴ番号)。実際の楽譜や録音を探す場合は、IMSLPやレコード会社のカタログ、大学図書館のOPACで双方の番号を入力して比較確認してください。また、近年の総合的なスカルラッティ研究書には必ずコンコルダンス(番号対照表)が付されていることが多いので、そうした一次資料を参照するのが確実です。

まとめ — ロンゴ番号をどう活用するか

ロンゴ番号は長年にわたってスカルラッティ作品の流通と普及に寄与してきた重要な番号体系です。学術的精密さを要する場面ではカークパトリック番号や原典版の参照が望ましい一方で、演奏実務や歴史的録音の把握においてはロンゴ番号の知識も依然として有用です。最終的には目的(演奏、研究、録音、教育)に応じて適切な版と番号体系を選び、併記しておく習慣をつけることが、混乱を避ける最良の方法です。

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参考文献