バッハ:BWV20『おお永遠よ、いかずちの声よ』――歌詞・音楽・演奏解釈の深堀り
はじめに:BWV20とは何か
ヨハン・ゼバスティアン・バッハのカンタータBWV20「おお永遠よ、いかずちの声よ」(ドイツ語原題:O Ewigkeit, du Donnerwort)は、バッハの教会カンタータ群の中でも特異な存在感を放つ作品です。通称は初行から採られ、原詩は17世紀の賛美歌に由来します。本稿では、テクストと神学的背景、音楽構造、演奏上のポイント、史的受容とおすすめ録音などをできるだけ正確に検証しつつ深堀りしていきます。最後に参考文献を示しますので、詳細はそちらでご確認ください。
テクストと神学的背景
タイトルにもある「永遠(Ewigkeit)」というテーマはルター派の終末観や最後の審判の概念と直結します。賛美歌テキストはヨハン・リスト(Johann Rist)など17世紀の賛美歌詩人が書いたものに基づくとされ、死後の永遠に対する畏怖と、悔い改めを促す道徳的訴えが織り込まれています。カンタータ全体を通じて、個人の罪意識と神の永遠性が対照的に描かれ、聴衆に自己省察を促す構成になっています。
成立時期と位置づけ
BWV番号20は、バッハのコーパスの中で早期に注目されたカンタータの一つで、ライプツィヒ時代(1723年以降)の公的奉仕時期に位置づけられることが多い作品です。多くの音楽学的資料では、バッハがライプツィヒで行った礼拝音楽のサイクルの一部として位置づけられ、讃美歌旋律を主題に据えた“コラール・カンタータ”の伝統的手法の延長にあるものと解釈されています。
楽構成と音楽的特徴
このカンタータの音楽的特徴を押さえると、いくつかの重要なポイントが見えてきます。
- コラール主題の扱い:序曲的な合唱で賛美歌旋律(コラール)が明確に提示され、ソプラノや他声部による装飾や対位法的展開を伴いながら進行します。コラール旋律はしばしばカントゥス・フィルムス(cantus firmus)として配置され、全体構造を支える支柱となります。
- 楽器編成と色彩:祭儀的な場面を想定した場合、金管(トランペットやトロンボーン)や打楽器を含む派手な編成が用いられることが多く、永遠というテーマにふさわしい荘厳さを演出します。一方で、アルトゥスのアリアやレシタティーヴォには通奏低音と弦・木管がきめ細かく伴奏し、内省的な語りを助けます。
- 語句描写とモティーフの連関:バッハらしい語句描写(word painting)が随所に見られます。例えば「雷」の語句には急激なアクセントや和声的緊張、下降するモティーフなどが対応し、テキストの意味を音楽的に体現します。
- 終結のコラール:典型的なコラール・カンタータと同様に、最後は四声コラールで締めくくられ、会衆の賛美歌的参加を想起させる効果を持ちます。
代表的な楽章構成(概観)
作品により細部の編成や配置が異なることがあるため、ここでは典型的なコラール・カンタータのフォーマットに基づく概観を示します。冒頭に大合唱(コラール・ファンタジア的な処理)が置かれ、中央部にアリアやレチタティーヴォが組まれ、最後に四声コラールで結ぶという骨格です。各楽章でコラール旋律が主題的に引用・変形され、テキストの神学的焦点ごとに音楽素材が再編されます。
演奏上の留意点
BWV20を演奏する際に重要なポイントは以下の通りです。
- 音色とバランス:コラール主題が明確に聞こえるように、金管群と合唱のバランスを慎重に調整する必要があります。装飾的な声部や器楽の動きが多層的に絡むため、主題の輪郭を失わない配慮が求められます。
- 語句の明瞭さ:終末的で道徳的なテキストを持つため、レチタティーヴォやアリアでは母語(ドイツ語)の発音とアクセントを明確にして、語句内容が伝わることが第一です。
- テンポとプロポーション:荘厳さを出そうとしてやや遅くなり過ぎると、対位的素材の推進力が失われます。テンポの決定は様式感と歌詞の意味両方を反映させることが必要です。
- 歴史的演奏法の検討:バロック弦や古楽器を用いる場合、ヴィブラートや発音の取り扱いが異なり、合唱のサウンドも変わります。プロップライエタリなアプローチと歴史演奏法の双方を比較検討すると新たな発見があります。
音楽分析の視点(深堀り)
核心的な分析としては、冒頭合唱におけるモード的・調性的処理、対位法的な編成、そしてコラール旋律の定着/変容の仕方に注目すべきです。バッハはコラール旋律を単に提示するだけでなく、内的な動機を引き出して発展させ、各楽章の感情的重心を音楽的に組織します。例えば、終末を表す語句には短調系の和声的揺らぎや増三和音的な不安定さが与えられ、救済や信仰の確信を表す場面では安定した終止へと導く対比が作られます。
史的受容と録音・演奏史
BWV20は19世紀以来のバッハ再評価の潮流の中で長年にわたり注目され、20世紀以降の古楽運動や歴史的意識の高まりに伴い、多様な演奏解釈が登場しました。大編成のロマンティックな演奏から、歴史的楽器による小編成まで幅広く録音が存在します。聴き比べる際は、合唱人数、トランペットやトロンボーンの扱い、通奏低音の楽器構成などに着目すると違いがわかりやすいでしょう。
現代の演奏に向けた提言
現代におけるBWV20演奏では、以下を検討すると良い結果が得られます。
- テキスト第一主義:バッハのカンタータは礼拝音楽としての機能が基本なので、歌詞の意味を最優先する解釈が基本です。
- 楽器編成の理由づけ:歴史的根拠がある場合はそれに従い、ない場合は音楽的効果に基づいて判断すると良いでしょう。
- 聴衆との距離感:作品の終末的なメッセージは聴衆に強い印象を残します。音響設計や歌詞提示(ライナーノーツ、字幕など)を工夫し、注目点を提示することが有益です。
おすすめ録音(入門的・参照用)
録音は演奏方針で大きく印象が変わります。入門的には歴史的楽器を用いる指揮者の録音と、伝統的な合唱編成の録音を聴き比べることを勧めます。具体的な推薦録音は本文では列挙しませんが、主要な古楽団体や著名な指揮者による録音は参考になります。購入や視聴の前に、録音時の演奏方針(合唱人数、楽器編成、ピッチ)を確認しましょう。
まとめ
BWV20「おお永遠よ、いかずちの声よ」は、テキストの厳粛さとバッハの高度な対位法・和声感覚が結びついた作品であり、宗教的メッセージを強くもつカンタータです。演奏者はテキストの理解を中心に据えつつ、音色・バランス・テンポに細心の注意を払うことで、作品の持つ深い精神性を現代の聴衆に伝えることができます。
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参考文献
- Bach Cantatas Website: BWV 20
- Bach Digital (公式データベース)
- IMSLP: Cantata No.20, BWV 20 (スコア)
- Christoph Wolff, "Johann Sebastian Bach: The Learned Musician"(参考書籍)
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