もらい錆とは?原因・仕組み・防止策を建築・土木の現場視点で徹底解説
建築現場や設備工事、土木構造物の施工時によく発生するトラブルの一つが 「もらい錆(もらいさび)」 です。特にステンレス製手すりや配管、屋外設備などに茶色い点状の錆が発生し、見た目の劣化や品質不良として問題になります。
この記事では、もらい錆の原因・仕組み・発生しやすい場所・防止方法・対策 を、建築・設備・土木の技術者向けに詳しく解説します。
もらい錆とは?
もらい錆とは、ステンレスなど本来錆びにくい素材の表面に、他の鉄粉や金属片が付着することで発生する錆のことです。
重要なポイントは以下の通りです。
- ステンレス自体が錆びているわけではない
- 表面に付着した異物(鉄粉)が空気中の水分と反応して錆びる
- 茶色い点状の錆や汚れとして見える
つまり、「もらい錆」は外部から“もらって”発生する錆であり、素材自体の腐食ではありません。
なぜステンレスで“もらい錆”が起きるのか?
ステンレスはクロムを含むため、表面に「不動態皮膜」という非常に強い酸化膜を形成し、これが防錆性能を発揮しています。
しかし 外部から付着した鉄粉が酸化(錆)することは防げません。
- 研磨作業で飛散した鉄粉
- 製品搬入時についた鉄片
- 工事現場の鉄骨加工粉
- 工場周辺の鉄粉汚染
こうした鉄系の異物がステンレス表面に付くと、そこが酸化し、結果的に「錆が出たように見える」現象が起こります。
もらい錆が発生しやすい場所
建築・土木現場では特定の条件下で発生しやすくなります。
■ 手すり・屋外階段・バルコニーのステンレス
雨水に鉄粉が混じることで発生。
■ ステンレス配管(特にSUS304)
溶接作業や鋼材切断作業の近くで要注意。
■ 工事現場全般(鉄骨工事の近く)
グラインダーやサンダー粉が原因となる典型例。
■ 車両通行が多い現場周辺
ブレーキダスト(鉄粉)が飛散して付着することがある。
■ 工場地域(製鉄所の近くなど)
環境中の鉄粉濃度が高い地域で起こりやすい。
もらい錆の見分け方
以下に当てはまる場合、ほぼ「もらい錆」です。
- 点状の茶色い錆
- こすって落ちる、クリーナーで除去できる
- 素材表面が凹んでいない
- ステンレスやアルミなど、通常は錆びにくい素材に発生
素材自体が腐食していない点が特徴です。
もらい錆の除去方法
現場ですぐに対応できる方法を紹介します。
■ 1. ステンレスクリーナーによる除去
市販のステンレス用クリーナーで落ちる場合が多い。
■ 2. 酸性洗浄(フッ化物を含まないタイプ)
酸性の洗浄剤で鉄粉だけを溶解除去可能。
■ 3. ピックリング(酸洗い)
溶接焼けなども含めて広範囲を処理できる。
強力だが扱いに注意。
■ 4. 研磨処理
スコッチブライトなどで表面を軽く研磨。
※やりすぎると表面が荒れるので注意。
もらい錆の防止策(予防が最も重要)
建築・土木の現場では「もらい錆の予防」が非常に重要です。
■ 1. 鉄粉が舞う作業の近くにステンレスを置かない
- 鉄骨切断
- グラインダー作業
- 研磨作業
特に新築工事では養生が必須。
■ 2. 施工後すぐに養生シートで保護する
運搬時・施工後に傷がついたときの鉄粉付着を防ぐ。
■ 3. 周辺環境(工場地帯・沿岸部)は定期洗浄する
海風と鉄粉が混ざると錆の発生率が高くなる。
■ 4. 製品表面の仕上げを適切に選ぶ
- ヘアライン仕上げ → 鉄粉が溜まりやすい
- 鏡面仕上げ → 汚れ・鉄粉が付着しにくい
用途に応じて選定することが重要。
■ 5. 施工直後にステンレス保護剤を塗布
不動態皮膜を強化し、鉄粉の付着を防止。
もらい錆と「本錆」の違い
| 種類 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| もらい錆 | 鉄粉など異物の錆 | 清掃・研磨で除去できる |
| 本錆(腐食) | 素材そのものが腐食 | 材質変更・部分交換が必要 |
**もらい錆は素材の欠陥ではなく“汚れの一種”**である点を理解しておくことが重要です。
まとめ
もらい錆とは、ステンレスなどの素材に付着した鉄粉が錆びることで発生する現象であり、素材自体が腐食しているわけではありません。建築・土木現場では鉄粉が舞う環境が多く、養生不足や施工環境によって簡単に発生します。
- 原因 → 鉄粉の付着
- 対策 → 養生・環境管理・定期清掃
- 除去 → 洗浄・研磨・酸洗い
正しい知識を持つことで、外観品質の維持やクレーム予防につながります。


