The KLF 完全ガイド|90年代電子音楽の名盤と聴き比べで楽しむコレクター必携リスト
The KLF — 簡単なイントロダクション
The KLF(ビル・ドラムンド / ジミー・コーティ)は1980年代後半〜90年代前半に活動したイギリスの電子音楽ユニットで、アンビエントからアシッドハウス、チャート志向のポップ/スタジアム・ハウスまで自在に横断した点が特徴です。プランダーフォニクス(sample文化を大胆に用いる手法)、アートとパフォーマンスを結びつけた諸行為(例えばBRITsでの物議を醸したパフォーマンスや後年の出版物、資金燃焼事件など)を通じて音楽史に強烈な痕跡を残しました。
おすすめレコード(概説)
以下では、リスナー/コレクター双方におすすめしたい代表盤やシングルを厳選して紹介します。作品の「何が特別か」「どのバージョンを狙うべきか」「コレクター視点での注目点」を中心に解説します。
Chill Out(1990)
ジャンル:アンビエント・ハウス / サウンドコラージュ
- なぜ重要か:KLFの最も評価が高い長尺作品の一つで、連続したサウンドスケープとして構成されたアルバム。夜のアメリカ横断を思わせる旅情と、膨大なサンプリングによるドリーミーな景観が特徴です。アンビエント/ハウス双方のリスナーに広く刺さる名作。
- おすすめの盤:オリジナルLP(KLF Communications初出盤)は雰囲気やマスタリングの質で評価が高い。ただしマスターやリイシューで差があるため、試聴が可能なら内容で判断してください。
- 注目ポイント:曲間で途切れずに流れる構成、フィールド録音や声ネタの配置による「物語性」。ヘッドフォンや夜間のゆったりした環境での再生がおすすめ。
The White Room(1991)
ジャンル:ダンス/エレクトロニック/ポップ
- なぜ重要か:映画のサウンドトラックとして企図された楽曲群をポップ寄りにまとめた作品。シングルカットされた「3 a.m. Eternal」「Last Train to Trancentral」など、クラブヒットとポップヒットの橋渡しをしたアルバムです。
- おすすめの盤:オリジナルLPはアートワークや収録バージョンが最もオリジナルに近く、資料性が高い。シングル・ミックスとアルバム・ミックスで印象が異なる曲が多いので、どのミックスを重視するかで選び分けると良いです。
- 注目ポイント:制作背景にあるKLFの映画プロジェクト(未完)や「スタジアム化」したリミックス感が作品全体に反映されています。
What Time Is Love?(代表的なシングル/複数ヴァージョン)
ジャンル:アシッドハウス/アンセム系
- なぜ重要か:KLFを象徴するトラックのひとつ。初期の「Pure Trance」系のミニマルでうねるクラブトラックとしての面と、後年にリワークされたより大仰な“スタジアム”アレンジの両方があり、同一曲の進化を追える点が興味深い。
- おすすめの盤/ヴァージョン:クラブ向けの“Pure Trance”系はDJ用途やダンスフロアでの説得力が高い。対して“Live at Trancentral”系は大仰なブレイクと展開を楽しみたい向け。シングルは複数ミックスが存在するため、狙うサウンドによって選んでください。
- 注目ポイント:同曲の複数形態を並べて聴くことで、彼らの編集・リミックスに対するアプローチの幅がよく分かります。
3 a.m. Eternal(シングル/1991)
ジャンル:スタジアムハウス/アンセム
- なぜ重要か:KLFが商業的に最も成功した楽曲の一つ。轟音のビートと分かりやすいメロディ、そして物議を醸したパフォーマンス(BRITsなど)によって、彼らのポップ文化への介入を象徴する作品です。
- おすすめの盤:シングルにはエクステンデッドやリミックスが多く存在するため、好きなアレンジを狙って入手するのが良いです。オリジナル・シングルはコレクターズアイテムとしての価値も高め。
- 注目ポイント:『The White Room』収録版とシングル/リミックス版では印象が変わるので比較して楽しんでください。
Justified & Ancient(featuring Tammy Wynette)(1991)
ジャンル:ポップ/コラージュ
- なぜ重要か:カントリー歌手タミー・ワイネットをフィーチャーしたヴァージョンなど、ジャンルの垣根を超えたコラボレーションで話題になった曲。KLFの“ユーモア+商業性”のバランス感覚をよく示しています。
- おすすめの盤:シングル・カットでヒットしたため多種多様なプレスが存在。アートワークやラベル違いでコレクター心をくすぐる箇所があるので、状態と盤の仕様をチェックしてください。
- 注目ポイント:サンプリング文化とアーティスト・ブランディングの融合例としても興味深い作品です。
Who Killed The JAMs? / The JAMs(初期作品)
ジャンル:プランダーフォニクス/サンプル・コラージュ
- なぜ重要か:The KLF以前の「The Justified Ancients of Mu Mu(JAMs)」名義の作品は、サンプリングを押し出した過激な編集が特徴。著作権問題で論争を巻き起こした歴史的資料として音楽史的価値が高い。
- おすすめの盤:初期プレスは入手困難でコレクター価値が高め。音楽的にも当時のサンプル文化を追うには最適です。
- 注目ポイント:初期JAMsの暴力的なまでのサンプリング感覚が、その後のKLF作品の基盤になっています。
Doctorin' the Tardis / The Timelords(1988)
ジャンル:ポップ・ノベルティ(大ヒット)
- なぜ重要か:Timelords名義によるこのシングルはドクター・フーのテーマとゲイ・ホーム・パーティ的な楽曲要素を掛け合わせたもので、英チャートでナンバー1を獲得。KLFの商業感覚とユーモアを示す一作。
- おすすめの盤:シングルとして楽しむのはもちろん、彼らが“ヒット”を演出する手腕を見る上で重要な資料です。
楽しみ方・聴き比べのコツ
- 同一曲の複数ヴァージョンを並べて聴く:KLFは曲をリミックス/再構築することを好んだため、原曲→リミックス→ライブ風アレンジの流れを追うと発見が多い。
- 背景知識を持って聴く:JAMsの神話(Mu Mu)や、彼らのメディア的パフォーマンス(挑発的な行為や出版物)を知っておくと、曲やアートワークの意図が一層見えてきます。
- 音像の違いに注意:アンビエント寄りの『Chill Out』とポップ/スタジアム指向の『The White Room』では求められる再生環境や音量感が異なります。リラックスして聴く曲、フロアで盛り上がる曲を使い分けてください。
コレクター向けの注意点(購入時に見るべき点)
- 盤の状態(VG〜NM)やジャケット傷は価格に直結。写真で判断する場合はラベルやマトリクス情報、ジャケットの印刷ズレなどをチェック。
- リイシューとオリジナルの差:リイシューは価格が手頃で音質も改善されていることがある一方、オリジナル盤は所有欲・資料性が高い。何を重視するかで選ぶと良いです。
- 複数ミックスの存在:同一シングルに複数のミックスが存在するため、トラックリストと版元(ラベル表記)で狙いのミックスか確認を。
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