モータウンの心臓を支えたThe Funk Brothers—聴きどころと演奏技術を徹底解説
イントロダクション:モータウンの心臓 — The Funk Brothersとは
The Funk Brothers(ザ・ファンク・ブラザーズ)は、1959年から1970年代初頭にかけてデトロイトのモータウン・レコーディング・スタジオ(通称「ヒッツヴィルUSA」)で膨大な数のヒット曲を支えたハウス・バンドです。彼らは歌手個人の名義こそ前に出るものの、そのサウンドの核となる「演奏」を一手に担い、モータウン・サウンドの“無名の英雄”として今日でも高く評価されています。
なぜレコードを聴くべきか:The Funk Brothersの聴きどころ
- ベースライン(ジェームス・ジャマーソン)のメロディ化された動き。曲の骨格を担いつつ独立した旋律的役割を果たす。
- ドラムの“ポケット感”(ベニー・ベンジャミン、リチャード・“ピストル”・アレン等)。グルーヴの微妙な遅れ/進みが歌を前に押し出す。
- ギターのカッティングやフィル(ロバート・ホワイト、エディ・ウィリス、ジョー・メッシーナ)。シンプルだが効果的な“隙間の処理”。
- ピアノ/オルガン類(アール・ヴァン・ダイク等)のフレーズで曲の色づけを行う技術。
- アレンジ全体の一体感:ホーン、ストリングスとリズム隊の掛け合いで形成される“モータウンの鳴り”。
おすすめレコード(代表的シングル/アルバムと聴きどころ)
The Temptations — 「My Girl」(シングル, 1964)
推薦理由:ジェームス・ジャマーソンの跳ねるベースライン、そしてシンプルだが強靭なビートが曲全体を支えます。イントロのギターとベースの絡みはFunk Brothersの職人芸が光る好例です。
The Supremes — 「Stop! In the Name of Love / Where Did Our Love Go」(シングル/アルバム群, mid-1960s)
推薦理由:モータウン・ポップの完成形。ハンドクラップやタンバリンのアクセント、リズム隊の“前ノリ”と“引き”が歌メロを際立たせます。スタジオのまとまりを聴くのに最適。
Marvin Gaye — 「I Heard It Through the Grapevine」(シングル/アルバム, 1968)
推薦理由:ダークで重厚なムードを作り出す低域の存在感が印象的。ジャマーソンの巧みなベースとリズムセクションの緊張感が楽曲ドラマを牽引します。
Martha and the Vandellas — 「Dancing in the Street」(シングル, 1964)
推薦理由:ストリート感あふれるアップテンポ・ナンバー。ホーンとリズムの掛け合い、グルーヴの押し引きがわかりやすく、バンドのダイナミクスを楽しめます。
Mary Wells — 「My Guy」(シングル, 1964)
推薦理由:シンプルでながらも隙のないリズム・ワークと温かいサウンド。バックの演奏の“余裕”がボーカルの魅力を引き立てる典型です。
Smokey Robinson & The Miracles — 「Shop Around」「The Tears of a Clown」など(シングル群)
推薦理由:ポップ/ソウルの細やかな間合いを演奏で作り出す技術が詰まっています。アレンジの緻密さとグルーヴの両立を学ぶのに最適。
The Funk Brothers — 「Standing in the Shadows of Motown」(サウンドトラック/アルバム, ドキュメンタリー関連)
推薦理由:映画『Standing in the Shadows of Motown』と連動したアルバムで、長年スポットライトを浴びなかったメンバー本人たちの演奏をフィーチャーした貴重な記録。ゲスト・ボーカリストを迎えた再現演奏で、彼らの力量を現代的に提示しています。
聴き方のヒント:細部に注目するポイント
- 低域の動き:ベースが「単なるリズム」ではなくメロディの一部を担っている箇所を追ってみてください。
- リズムの微妙な“遅れ/先行”:「グルーヴ」が生まれる瞬間は、ドラマーとベーシストの呼吸合わせにあります。
- 隙間を埋める音:ギターの小さなカッティングや鍵盤の短いフレーズが曲のフックになっていることが多いです。
- モノラル・シングル・ミックスを比較:当時のシングル(モノ)ミックスはラジオ/ダンスフロア向けに最適化されており、演奏のエッジが立って聞こえることが多いです。
コレクション/リスニングのおすすめ方針
- 個別アーティストの代表曲のシングル(オリジナル・モノ・シングル)を押さえると、Funk Brothersの“仕事”が直に分かります。
- コンピレーション(例:「The Complete Motown Singles」シリーズや「Motown Chartbusters」など)を利用すると、多様な楽曲で演奏スタイルの違いが比較できます。
- ドキュメンタリーやメンバー本人のインタビュー(映像資料)を併せて見ると、スタジオでの立ち回りや演奏哲学が理解しやすくなります。
深掘り:主要メンバーとその役割(聴き分けの手がかり)
- James Jamerson(ベース) — メロディックで複雑なベースライン。多くの楽曲で「耳に残る」低音を作った立役者。
- Benny Benjamin / Richard “Pistol” Allen / Uriel Jones(ドラム) — 曲によって使い分けられた名手たち。スネアの抜け感やハイハットの刻み方に個性あり。
- Earl Van Dyke / Joe Hunter(キーボード) — 楽曲の色付け、イントロやブレイクでのキーボード・フレーズが印象的。
- Robert White / Eddie Willis / Joe Messina(ギター) — カッティングやリフで曲のリズム感を支える“隠れたフック”の名手たち。
- ホーン・アレンジ担当(複数) — 曲に華やかさとパンチを与える重要要素。
さらに掘りたいときに:ドキュメンタリーと再現盤
映画『Standing in the Shadows of Motown』は彼らの功績をまとめた代表的ドキュメンタリーで、サウンドトラック盤も合わせて聴くと理解が深まります。また、オールタイムのヒットを時系列で追うコンピレーション盤を使えば、演奏スタイルの変遷やスタジオでの工夫が見えてきます。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- The Funk Brothers — Wikipedia
- Standing in the Shadows of Motown(ドキュメンタリー/書籍) — Wikipedia
- The Funk Brothers — AllMusic


