Pixinguinhaのショーロ入門レコード完全ガイド—初心者向けおすすめ盤と原盤の探し方

はじめに — Pixinguinhaとは

Pixinguinha(アルフレード・ダ・ロシャ・ヴィアナ・フィーリョ、1897–1973)は、ブラジル音楽、とくにショーロ(choro)を近代化・普及させた最重要人物の一人です。クラリネット/フルート/アレンジ能力に長け、20世紀初頭から中葉にかけて数多くの作品と録音を残しました。本コラムでは「レコード(盤)で聴く」ことを前提に、Pixinguinhaのおすすめ盤(原盤や代表的な再発コンピレーション)を深掘りして解説します。初心者がまず手に入れるべきものから、コレクターが狙うべきオリジナル盤の目印まで、音楽的観点と歴史的価値の両面で紹介します。

おすすめレコードの選び方の基本

  • 時代(1920s の初期録音/1940s の室内的な編成/戦後以降のラジオ録音やLP収録)を意識する:演奏スタイルと録音クオリティが大きく異なります。

  • 参加メンバーに注目する:初期はグループ「Oito Batutas」(オイト・バタタス)での活気ある編成、1940年代はフルート奏者ベネジート・ラセーダ(Benedito Lacerda)とのデュオ/小編成で洗練されたアレンジが特徴です。

  • 盤の種類で価値が変わる:78回転原盤(オリジナル・スタンパー)は史料価値が高く、後年のLP/CDは音質補正や選曲が編集されていることが多いです。まずは「良い編集のコンピレーション」→「興味が深まれば原盤収集」という流れが実用的です。

必聴の録音カテゴリとおすすめ(概説)

  • 1) Oito Batutas 時代の78回転(1920年代) — 歴史的出発点

    Pixinguinhaが若き日に率いたOito Batutasの録音は、リズムの推進力と斬新なアンサンブル感が生きています。レーベルは当時の主流であったOdeonなど。音質は原盤のままだと当然モノラルで限界はありますが、音楽的なエネルギーと編成の面白さは格別です。コレクターズ・アイテムとして価値が高い一群です。

  • 2) Pixinguinha e Benedito Lacerda(1940年代) — ショーロの成熟形

    フルート奏者ベネジート・ラセーダとの長期的な共演は、Pixinguinhaの作曲・アレンジの洗練を示します。管中心の軽やかなアンサンブル、メロディと装飾のやりとりが聴きどころ。78回転のシングルや、後にLP/コンピレーションでまとめられたものが入手しやすいです。演奏の「聴きやすさ」と「音楽的深さ」のバランスが良く、最初に聴くならここから入るのが定石です。

  • 3) 戦後〜ラジオ/スタジオ録音のLP・CD再発 — 音質重視で選ぶ

    1950〜60年代の録音や、後年に編集されたコンピレーションは、現代的なリマスターが施されているものもあり「音質重視」のリスナーにはおすすめです。選ぶ際は、充実した解説(ブックレット)や収録曲の出典が明記されている再発を選ぶと、曲の背景や演奏編成を理解しやすいです。

  • 4) 代表曲をまとめた「入門コンピレーション」

    まずPixinguinhaを知るには、代表曲を網羅した良質なコンピレーション盤が最短ルートです。曲の解説や時代の文脈が添えられているものを選べば、作風の変遷(初期のダンサブルな側面→中期以降のメロウで高度な編曲)を効率的に追うことができます。

具体的に狙いたい盤(探し方・狙い目)

  • オリジナル78回転シングル(Odeon, Victor 等)

    歴史的価値を重視するならこれ。盤面やレーベル表記、マトリクス番号(音溝に刻まれた番号)でオリジナルか再発かが判別できます。録音年が1920年代のものは特にコレクター人気が高く、市場では希少になっています。

  • 「Pixinguinha e Benedito Lacerda」と表記された78/LP集

    この共演名義の音源群は、曲の完成度が高く演奏も安定しているため、入手して損はありません。後年のLPやCDで「Pixinguinha e Benedito Lacerda」とまとめられているものを探してみてください。

  • 解説充実の近年リイシュー/編集盤

    近年のリイシュー盤では、オリジナルの78回転から丁寧に復刻・修復されたものや、文献に基づく正確な曲目解説が付くものがあります。音質・情報量の両面で利点が大きいので、まずはこうした編集盤を1枚入手して聴き、興味が深まったら原盤に手を広げると良いでしょう。

聴きどころ(曲と演奏のポイント)

  • 旋律の装飾と即興性:Pixinguinhaはクラリネットやサックスを使い、歌ものにも通じる豊かな旋律装飾を行います。メロディラインの微妙な揺らぎや装飾に注目してください。

  • アンサンブルの会話性:特に小編成(フルート+ギター+カヴァキーニョ/ギター/ピアノ等)の録音では、楽器間の応答(call-and-response)が魅力です。

  • ハーモニーと編曲の巧みさ:単純な伴奏にとどまらない、和声的・リズム的な工夫が随所に現れます。原曲の構造と編曲の違いを比べると発見が多いです。

コレクションのすすめ方(実践的な探し方)

  • まずは信頼できる現代的リイシューや編集盤を1枚:入門用としては音質が良く解説が付いたCD/配信盤が効率的です。

  • ディスコグラフィを見る:Discogsやウィキペディアのディスコグラフィ欄で、オリジナルの出品情報(レーベル名・年・カタログ番号)を確認して、狙うべき原盤の目星をつけましょう。

  • オリジナル78回転を狙うなら、出所(信頼できるレコード店やオークション説明)と盤状態の写真を必ずチェック:オリジナルかプレス再発か、マトリクス番号やラベルの細部で判断します。

  • 解説書・文献を並行して読む:曲の成立や共演者、録音状況を知ることで聴取が深化します。英語・ポルトガル語の研究資料やライナーノーツがお勧めです。

まとめ — まず聴くべき一歩

入門者には「Pixinguinha と Benedito Lacerda の共演を中心とした良質なコンピレーション盤」から入るのが最も手堅い道です。そこからOito Batutasの初期録音、さらにオリジナル78回転へと興味を広げていくと、演奏スタイルの変遷とブラジル近代音楽史の一端が立体的に見えてきます。音楽的にも歴史的にも奥が深いアーティストなので、盤を軸に聴いていく楽しさは格別です。

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参考文献