ムラトゥ・アスタトゥケ徹底解説:エチオジャズの父が描く伝統と現代の融合

イントロダクション:ムラトゥ・アスタトゥケとは

ムラトゥ・アスタトゥケ(Mulatu Astatke)は、エチオピア出身の作曲家・編曲家・ヴィブラフォン奏者で、しばしば「エチオジャズの父」と称されます。エチオピアの伝統的な旋法(ケネット)とアメリカやラテンのジャズ/ラテン・リズムを融合させた独自のサウンドによって、1960〜70年代に国内外で高い評価を得ました。1990年代以降の「Ethiopiques」シリーズで世界的に再評価され、2000年代以降は国際的なコラボレーションやツアーを通じてさらなる注目を集めています。

経歴の概略(ポイント)

  • 出自:1943年(出生日の表記には諸説あります)にエチオピアの地方で生まれ、幼い頃から音楽に親しむ。

  • 海外留学:若き日に欧米で音楽を学び、トリニティ音楽院(ロンドン)や米国の音楽学校でジャズと編曲を学んだ経験が、彼の音楽的基盤を形成しました。

  • 帰国と活動:アディスアベバに戻り、スタジオミュージシャン/編曲家として活躍。エチオピアの伝統的旋律をモダンなアンサンブルにつなげる実験を進めました。

  • レコーディングと国際的評価:1960〜70年代に録音した作品が後年「Ethiopiques」シリーズなどで再編集され、世界的な注目を浴びるようになりました。

  • 近年:海外アーティストとのコラボや新録音、ツアーにより、伝統と現代を結ぶ存在として現在も活躍しています。

ムラトゥの音楽的魅力と特徴

  • ケネット(qenet)とモダン・ハーモニーの融合:エチオピアの伝統的な旋法(ティズィタ、バティ、アンバッセル、アンチホイなど)を、ジャズ的なコード進行やハーモニー、モダンなアレンジに溶け込ませています。結果として、どこか懐かしくも洗練された響きが生まれます。

  • リズムの多彩さ:ラテン/カリブのパーカッションやスウィング感を取り入れ、独特のグルーヴを作ります。これがエチオピアの旋律と組み合わさることで、聴き手に新鮮なフィールを提供します。

  • ヴィブラフォンの主導:ヴィブラフォンをフロントに据えた演奏が多く、金属的で温かい響きが彼の音楽の“顔”になっています。ピアノやホーン・アンサンブルとの対話も印象的です。

  • メロディの「歌心」:器楽曲でありながら歌を思わせる流麗なメロディが多く、エモーショナルな表現力があります。

  • 簡潔で効果的な編曲:装飾を抑え、テーマを明瞭に提示してからアンサンブルで色付けする構成が多く、初めてのリスナーにも入りやすい設計です。

代表曲・名盤(入門と深掘りのためのリスト)

  • Ethiopiques, Vol. 4(ムラトゥの初期録音を集めたコンピレーション) — 彼の60年代〜70年代の作品群をまとめた入門盤。エチオジャズの誕生と核心が分かります。

  • Mulatu of Ethiopia(旧作・オリジナル盤/再発あり) — スタジオ録音を中心とした、その時期ならではのサウンドを味わえます。

  • 「Yekermo Sew」などの代表曲 — メロディの美しさとグルーヴが同居する作品群。タイトル表記には変種があるため、曲名検索時は複数表記を試すとよいです。

  • Mulatu Astatke & The Heliocentrics — Inspiration Information(国際的コラボ作) — 2000年代以降の再評価時に生まれた作品で、サイケデリック/現代的なプロダクションを通してムラトゥの音楽が新しい文脈で提示されます。

  • 近年のライブ盤やコラボレーション作品 — ムラトゥは国内外のアーティストと共演を重ねており、ライブ録音でそのダイナミズムを体感できます。

聴き方のポイント:初めて聴く人へのガイド

  • まずはEthiopiques Vol. 4などのコンピレーションから:時代を超えた名曲群を一度に掴めます。

  • メロディに注目する:ヴァイブやピアノがメロディを歌う部分は、歌ものと同じ感情の輪郭が示されます。歌詞がなくても“歌心”を追ってください。

  • リズムの層を聴き分ける:打楽器、ベース、ホーンの役割分担を意識すると、アレンジの巧みさが分かります。

  • 原曲とリミックス/コラボ版を比較する:古い録音と現代的プロダクションを比較すると、ムラトゥの音楽が時代を越えて変化し続ける様子が分かります。

影響と遺産

  • エチオピア国内での影響:ムラトゥは地元ミュージシャンにモダン・アレンジの手法をもたらし、エチオピアン・ポップや映画音楽の発展に寄与しました。

  • ワールドミュージック/ジャズへの貢献:Ethiopiquesシリーズによる再評価で、世界中のミュージシャンやリスナーに強い影響を与え、新たなコラボレーションの潮流を生みました。

  • リスナー層の拡大:ジャズ、エレクトロニカ、ヒップホップ系のプロデューサーやリミキサーにも注目され、サンプリングやカバーを通じて現代音楽へと接続されています。

ライブ/コラボレーションの魅力

  • ライブではアンサンブルの即興性とアレンジの遊びが際立ちます。ヴィブラフォンの生音とパーカッションの生の躍動が直に伝わるのが魅力です。

  • 近年のコラボ作品は、ムラトゥの古典的要素を現代的サウンドデザインで再解釈しており、新しいリスナーを獲得する役割を果たしています。

聴く際の情景的なおすすめ

  • 夕暮れの散歩や静かなバーで:ヴィブラフォンの柔らかい残響とメロディが風景に溶け込みやすいです。

  • 集中してヘッドホンで:編曲の細部(ホーンのフレーズ、パーカッションの妙)をじっくり聴くと発見が多いです。

  • 友人と語りながら:バックグラウンドに流すだけでも会話を温かく彩ります。

まとめ

ムラトゥ・アスタトゥケは、伝統とモダニズムの橋渡しを成し遂げた稀有な存在です。エチオピアの旋法が持つ情感を、ジャズやラテンのリズム、現代的なプロダクションと融合させることで、時代を超えて聴かれる普遍性のある音楽を生み出しました。初めての方はコンピレーションから入り、古い録音と新しいコラボを行き来することで、ムラトゥの世界の奥行きをより深く味わえるでしょう。

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

エバープレイオンラインショップのバナー

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery

参考文献