Nelson Riddleの編曲テクニック徹底解説:歌を生かすオーケストレーションと名盤ガイド
Nelson Riddle — 概要と魅力
Nelson Riddle(ネルソン・リドル、1921–1985)は、20世紀中盤のアメリカを代表する編曲家/指揮者の一人です。フランク・シナトラ、リンダ・ロンシュタット、エラ・フィッツジェラルド、ナット・キング・コールら大物歌手との共演を通じて、「歌を引き立てるオーケストレーション」を確立しました。シンプルな伴奏にとどまらず、楽曲のムードを即座に翻案する巧みな色彩感覚、ホーンや弦の精緻なブレンド、そして歌手の息づかいを生かす間合いの取り方が彼の最大の特徴です。
聴きどころ:Riddle流の編曲テクニック
- 歌を中心に据える構成:歌のフレーズに合わせて楽器が寄り添い、歌の表情を引き出すアレンジが多い。
- 色彩豊かな管弦楽の使い分け:弦、木管、トロンボーン、トランペットなどを場面ごとに最適な配分で組み合わせる。
- リズムとプレイフルさ:軽快なスウィングから繊細なバラードまで、リズムの扱いが巧みで曲ごとの「間」を作る。
- カウンターメロディの活用:主旋律を邪魔しない範囲で控えめに別線を走らせ、曲に厚みを与える。
おすすめレコード:Riddle の仕事を味わうための10枚
以下は「初めてRiddleをしっかり聴いてみたい」という方に向けた推奨盤です。Riddleがアレンジ/指揮を担ったもの、彼自身がリーダーを務めたインスト盤、TV/映画音楽の代表作をバランスよく選びました。
Frank Sinatra — Songs for Swingin' Lovers! (Capitol, 1956)
なめらかなスウィング感と起伏のあるホーン・アレンジが際立つ一枚。Riddleの典型的な「歌中心」アプローチと、吹き替え的に挿入される管楽器の応答を確認できます。代表曲:「I've Got You Under My Skin」など。
Frank Sinatra — Only the Lonely (Capitol, 1958)
「コンセプト・アルバム」として名高いバラード集。Riddleの暗く深い弦の書法、密閉感のあるサウンドデザインが、シナトラの孤独な語り口に寄り添います。聴きどころは緊張感のあるイントロや間奏のストリングス。
Frank Sinatra — Nice 'n' Easy (1960)
よりリラックスした風合いのアルバムで、Riddleの色彩感がよく出ています。柔らかい管弦楽とヴォーカルの溶け合いを楽しんでください。代表曲:「Nice 'n' Easy」。
Linda Ronstadt — What's New (Asylum, 1983)
Riddleが晩年に取り組んだプロジェクトの一つ。ポップ/ロック出身のロンシュタットがトラディショナルなバラード集に挑んだアルバムで、Riddleの編曲が歌の説得力を増幅しています。若いリスナーにも届くモダンな録音と古典的アプローチの好例。
Linda Ronstadt — Lush Life (Asylum, 1984)
ジャズスタンダード志向が強い作品で、Riddleの細やかな弦編曲や管楽の色づけが際立ちます。ロンシュタットの声質に合わせた温度調整が巧みです。
Nelson Riddle — Hey...Let Yourself Go! (Capitol, 1957)
Riddle自身がリーダーを務めたインスト・アルバム。彼のオーケストレーションをヴォーカル抜きで純粋に楽しめるため、編曲の細部(ブラスの刻み、弦のレイヤー、リズムの処理)をじっくり聴くのに最適です。
Nelson Riddle — Sea of Dreams (Capitol, 1958)
バラード中心のインスト作品。幻想的なストリングス配列や木管の色彩付けなど、Riddleの「夢想的」な側面が出ています。夜に聴く一枚としておすすめ。
TV/映画音楽集 — Route 66 & TV Themes
Riddleはテレビ/映画音楽でも多数の仕事を残しました。特にTVシリーズ「Route 66」のテーマ曲などは、短いフレーズで強い印象を残すアレンジの見本です。サウンドトラック盤やコンピレーションでまとめて聴くとその多才さがよくわかります。
選集/コンピレーション盤 — Nelson Riddleのアンソロジー
Riddleの仕事は幅が広いので、様々な歌手との共演曲やインスト作品を横断的に聴けるコンピ盤も有用です。初めは「ベスト・オブ」的な選集から入ると全体像がつかみやすいでしょう。
共演作(追加でチェック)— Ella Fitzgerald / Nat King Cole / Peggy Lee 等
Riddleは多くのトップ・シンガーのレコーディングに参加しています。歌手名で「Riddleが編曲を担当したアルバム」を辿ると、彼がどのように歌を支えているかがわかります。気になる歌手の代表作のクレジットを確認してみてください。
リスニング・ガイド(聴くときのポイント)
- まずは「イントロ〜1番」だけで、編曲がどのように歌へ導くかに注目する。序盤の管弦楽の設計が全体のトーンを決めることが多いです。
- 歌が途切れる間奏やアウトロのアレンジに耳を傾ける。Riddleは短い間でも独自の色付けを施します。
- 同一曲の別録音(別編曲)と比較するのも有効。Riddle版と他の編曲家版とを比べることで、彼の特徴がより鮮明になります。
- インスト作品は「色彩の設計書」と考え、各セクションの音色配置(弦・ホーン・木管)の違いを追いかけると面白いです。
買う・聴くときの目安
- クレジット表記を確認する:LPやCDの帯やライナーノーツで「arranged/conducted by Nelson Riddle」とあるかをチェック。
- リマスター盤は室内楽的なディテールを聴き取りやすいことが多いので、初めてなら信頼できるリマスター/再発盤を選ぶのも手です。
- ライブ録音はスタジオ盤とは質感が異なる場合があるので、Riddleの繊細な色彩感を確認したいならスタジオ盤を優先すると良いでしょう。
まとめ
Nelson Riddleの魅力は、まさに「歌を生かす」その手腕にあります。彼のアレンジは派手さよりも丁寧な色彩設計と間合いの妙に依拠しているため、何度も聴くごとに新しい発見があります。まずはシナトラの名盤群と、ロンシュタットでの復権シリーズ、そして彼自身のインスト盤を順に聴いていくことをおすすめします。
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参考文献
- Nelson Riddle — Wikipedia
- Songs for Swingin' Lovers! — Wikipedia
- Only the Lonely — Wikipedia
- Nice 'n' Easy — Wikipedia
- What's New (Linda Ronstadt) — Wikipedia
- Lush Life (Linda Ronstadt) — Wikipedia
- Route 66 (TV series) — Wikipedia (テーマ曲と音楽について)
- Nelson Riddle — AllMusic(バイオグラフィー)


