Clyde Stubblefieldの生涯と影響—ファンクのリズムを創出したFunky Drummerとサンプリング史

プロフィール — Clyde Stubblefieldとは

Clyde Stubblefield(クライド・スタブルフェールド、1943年7月18日 – 2017年2月18日)は、アメリカのドラマー。特にジェームス・ブラウン(James Brown)のバンドでの活動で知られ、そのタイトでグルーヴィーなビートは「ファンク・ドラムの教科書」とも称されます。彼の名字が直接的に広く知られているわけではないにもかかわらず、彼が刻んだリズムはヒップホップやポップ、ダンス・ミュージックのサンプリング文化において欠かせない存在となりました。

経歴の概略

  • 出自と初期:テネシー州チャタヌーガ生まれ。若い頃からローカルバンドで演奏を重ね、1960年代中盤にプロとしてのキャリアをスタートさせます。
  • ジェームス・ブラウン時代:1960年代後半から1970年代初頭にかけて、ジェームス・ブラウンのバンド(ザ・ファームス・オブ・ジェームス・ブラウン)で主要ドラマーとして活躍。ここで録音された多数の曲で彼のドラムが核となりました。
  • その後の活動:ジェームス・ブラウン在籍後もスタジオワークやセッション、ツアー、ドラム・クリニック、地元(マディソン、ウィスコンシン)を拠点にした演奏活動などを続け、若手への指導や地域での演奏活動を通じて影響を与え続けました。
  • 晩年:健康や経済的な困難に直面する時期もありましたが、コミュニティやミュージシャン仲間の支援もあって最後まで音楽に関わり続けました。2017年に逝去。

代表的な録音(代表曲・名盤)

  • Funky Drummer(ジェームス・ブラウン) — 彼の右足と両手が生み出す「ファンク・ブレイク」は、後の世代に決定的な影響を与えた一本。多くのプロデューサーがこのドラム・パターンをサンプリングしました。
  • Cold Sweat(ジェームス・ブラウン) — ファンク初期の重要曲の一つで、リズム面での革新が感じられる録音。スタブルフェールドのグルーヴは曲の原動力です。
  • その他のセッションワーク — ジェームス・ブラウンの多くの有名ナンバーや、その後のコラボレーション作品群において、彼のドラミングが土台を支えています。

プレイの特徴とテクニック

Clyde Stubblefield の魅力は「技術よりもグルーヴ」に重心がある点です。以下の要素が彼のサウンドを特徴づけています。

  • ポケット感(Pocket)の徹底:音量やアタックをコントロールしてベースと完璧に噛み合う「間」を作る。こちらが聴き手に“止められない推進力”を感じさせます。
  • ゴーストノートの活用:スネアの小さな打鍵(ゴーストノート)でリズムの細かな揺らぎとグルーヴを作り出す。派手なフィルよりも細かい表情で曲を動かすのが得意です。
  • ハイハット/キックの精妙な制御:ハイハットの開閉やキックの位置取りで音像に緩急を与え、同じ8ビートでも常に新鮮な「波」を作ります。
  • ライン感(Linear/ポリリズム的な接近):左右の手足を独立させつつも全体として「一本のグルーヴ」に聞こえる演奏。複雑さを感じさせずに高度なリズム処理を行います。

なぜ“魅力的”なのか — 音楽史的・文化的意義

スタブルフェールドの魅力は単に「上手い」ことではなく、そのビートが文化的に何度も再利用され、世代を超えて蘇った点にあります。彼のドラム・ブレイクはヒップホップの初期サンプリング文化における“燃料”となり、多数のプロデューサーがループして使用しました。結果として、彼のリズムは数え切れないほどの全く異なる楽曲の基礎を成しています。

また、演奏スタイル自体が「機械的ではないグルーヴ」、「ヒトの温度を感じさせるリズム」を体現しており、デジタル時代のリズム制作にも逆に新鮮さを与え続けています。

サンプリング問題と社会的側面

「Funky Drummer」等のブレイクは広くサンプリングされましたが、当時はサンプリングの法的・経済的取り扱いが未整備で、スタブルフェールド自身はその利用から十分な報酬を受け取ることができませんでした。この事実は、アーティストの労働価値や著作権・演奏者の権利について議論を促す一つの事例となりました。

聴き方・プレイから学ぶポイント(ドラマー/音楽愛好家向け)

  • 原曲をループして聴く:スネアの微妙な強弱、ゴーストノートの位置を耳で追い、身体で感じる。
  • 少ない音数で表現する練習:スタブルフェールドは派手なフレーズを多用しない。最小限の音で最大のグルーヴを出す意識を持つ。
  • ベースと合わせる練習:低音楽器と合わせたときに“ポケット”がどう変わるかを確認する。
  • リスニングの幅を広げる:ファンク以外のジャンルで使われた彼のブレイク(ヒップホップ、ポップ、電子音楽など)も聴き、再利用のされ方から学ぶ。

パーソナリティと遺産

スタブルフェールドは技術自慢をするような人物ではなく、仲間や若いミュージシャンに対しても温かく指導的な姿勢を見せていました。彼の死後も彼のビートは数多く参照され続け、ドラム・アプローチや「グルーヴの美学」は現在のリズム音楽にも生き続けています。

おすすめの入り口(聴く順番の例)

  • まずは「Funky Drummer」を通してドラムのブレイク部分を単独で聴く。
  • 次に「Cold Sweat」などジェームス・ブラウン期の楽曲を通してバンドとの相互作用を確認する。
  • サンプリング作品を数曲聴き、オリジナルと比較してリズムがどのように再解釈されているかを楽しむ。

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

エバープレイオンラインショップのバナー

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery

参考文献