和ジャズの名盤大全:革新から再評価まで
和ジャズは国内外のジャズ潮流と日本独自の文化的感性が交錯し、1960年代後半から今日に至るまで多彩な作品を生み出してきました。本稿では、フリージャズ的な先駆性、ファンク志向のグルーヴ、クロスオーバーなラテン/ソウル、モダンジャズの本流、そして再評価の動きに焦点を当て、代表的な名盤の制作背景や演奏メンバー、リイシュー情報、そして聴きどころを徹底的に掘り下げます。
背景
和ジャズは、戦後進駐軍によってもたらされたアメリカ文化を下地に、1960年代にハードバップやフリージャズの実験精神を取り込みながら独自の進化を遂げました。日野皓正や菊地雅章らが海外の前衛的な演奏技術を吸収し、日本人ミュージシャンならではの繊細かつ情緒的な表現を融合させることで、新たなサウンドが生まれました。
1970年代には、ジャズ・ファンクやフュージョンの波が到来し、猪俣猛や渡辺貞夫がグルーヴ重視の演奏を展開。1980年代後半からはディスクユニオンやBBEレーベルといった再発プロジェクトを通じ、埋もれていた名盤群が世界的に再評価されるようになります。
1960年代後半~1970年代前半の革新
日野皓正『Alone, Alone And Alone』 (1967)
日野皓正のデビュー作『Alone, Alone And Alone』は、1967年にリリースされたフリージャズ要素とハードバップ的構成美を兼ね備えた記念碑的アルバムです。
セッションには菊地雅章(Electric Piano)、及川基弘(B)、猪俣猛(Ds)が参加し、特にタイトル曲の長尺即興はスピリチュアルジャズ的な響きを持つと評され、後の日本ジャズシーンに大きな影響を与えました。
峰厚介『First』 (1970)
峰厚介のリーダー初作『First』は、マサブミ・キクチ(Electric Piano)、ラリー・ライドリー(B)、レニー・マクブロウン(Ds)という米国勢を迎え、1970年に録音された現代モダンジャズの金字塔です BBE。
「Straight No Chaser」や「McPhee」など、スタンダードの解釈とオリジナル曲を交えた構成は、リリース以来日本国内外で高い評価を維持し、BBEによる45rpm二枚組再発盤には4500語に及ぶライナーノーツが付属するほどの注目作となっています。
1970年代の多様化とファンク化
Jiro Inagaki & Soul Media『Funky Stuff』 (1975)
ジロー・イナガキ率いるSoul Mediaによる『Funky Stuff』は、1975年リリースの和ジャズ・ファンク不朽の名盤です。
ホーンセクションを前面に押し出したタイトなリズムとソウルフルなサックスワークが、レア・グルーヴのコレクターズシーンでいまなお高い評価を受けています。
中嶋雅夫Quartet『Kemo-Sabe』 (1979)
1979年発表の『Kemo-Sabe』は、あえてオーソドックスなピアノトリオ+サックス編成を採用し、当時全盛だった電化フュージョンに一石を投じた意欲作です。
「Tell Me a Bedtime Story」のカバーなど、叙情豊かなインタープレイは、BBE「J Jazz Masterclass」シリーズでの再発によって新たなリスナーにも再発見されています。
1980年代のクロスオーバー・モダンジャズ
渡辺貞夫『California Shower』 (1978)
1978年にロサンゼルスで録音された『California Shower』では、チャック・レイニー(B)、リー・リトナー(Gt)ら米国トップミュージシャンを迎え、ラテンやソウルのエッセンスを大胆に導入しています。
タイトル曲の軽快さは夏のドライブミュージックとしても定番化し、国内外のクロスオーバージャズシーンで支持を集めました。
2000年代以降の再評価ムーブメント
山本剛トリオ『Autumn In Seattle』 (2001録音/2003発売)
シアトルの叙情を反映したタイトル曲を含むトリオ演奏は、抑制の効いたハードバップサウンドの中にエモーショナルな揺らぎを宿しており、2011年のビニール再発でも評価を新たにしました。
高音質プレスによる再発盤は、マスタリングの鮮度向上が好評を博し、国内外のジャズフェス出演にもつながっています。
高瀬アキ・トリオ『Song for Hope』 (1982)
1982年リリースの本作はベルリンジャズフェスでのライブ録音を収め、Takaseの技巧的かつ情熱的なピアノが全面に押し出された一枚です。
BBE「J Jazz Masterclass」第3弾としての再発により、国際的モダンジャズ愛好家からも高い支持を獲得しています。
リイシューと再発プロジェクト
BBE「J Jazz」シリーズ
英国BBEレーベルの『J Jazz Volume 3』は、1960~80年代の日本発モダンジャズ音源を精選し、未発表テイクやプライベートプレスを多数収録するコンピレーションとして話題を呼びました。
Diskunion「NIPPON JAZZ SPIRITS」シリーズ
Diskunion主催の本シリーズでは、68タイトル超の和ジャズ名盤が毎年テーマ別に復刻。帯付きLPや紙ジャケット仕様など、コレクター仕様の装丁も好評を博し、再評価の機運を国内外で高めています。
アーティストの継承と影響
和ジャズの巨頭である日野皓正や渡辺貞夫は、米国ジャズ界でも高い評価を受け、日本人ミュージシャンの国際的プレゼンスを確立しました。
その系譜は峰厚介や高瀬アキ、山本剛らへと受け継がれ、若手ミュージシャンにも受け継がれています。近年はMakoto OzoneやHiromi Ueharaといった世代がグローバルな活躍を見せており、和ジャズの未来を担っています。
リスニング・ガイド&おすすめエディション
オリジナルLPはプレスの個体差が大きいため、DiskunionやBBE再発盤の180g重量盤を選ぶと良質な音質を安定して楽しめます。
特に『First』の45rpm盤は低域の深みとダイナミクスが向上し、リスニング体験を格段に引き上げるため、マニア間で高い評価を受けています。
まとめ
ここまで取り上げた名盤は、各時代のジャズ潮流を巧みに取り込みつつ、日本人ならではの感性を色濃く反映したものばかりです。
オリジナルから再発盤まで、多彩なエディションを聴き比べることで、和ジャズの奥深さと演奏家たちの創造的エネルギーを余すところなく味わっていただけるでしょう。今後も新たなリイシューや未発表音源の発掘により、和ジャズはさらに魅力を増していくことが期待されます。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っておりますので是非一度ご覧ください。
https://everplay.base.shop/
また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery