タンゴの拍動を刻む巨匠:エクトル・バレラの生涯と遺産
エクトル・バレラはサルスティアーノ・パコ・バレラとして1914年に生まれ、会計士の資格を持ちながらタンゴへの情熱から16歳でプロのバンドネオン奏者としてデビュー。
やがて“タンゴのリズムの王様”ディアリエンソ楽団で10年、のちに自身の楽団を率いて黄金時代を築いた人物です。
彼は数百曲におよぶ録音を残し、国内外でのツアーやテレビ・映画出演などを通じてタンゴ文化の普及と革新に大きく貢献しました。
概要
エクトル・バレラは、Salustiano Paco Varelaとして1914年1月29日にブエノスアイレス州アベジャネーダで生まれ、1987年1月30日に同地でその生涯を閉じたアルゼンチンのバンドネオン奏者、指揮者、作曲家です。
幼少期と教育
エクトルは中流階級の家庭に生まれ、両親の意向でブエノスアイレス大学で会計学を学び、公認会計士の資格を取得しましたが、実務には携わらなかったと伝えられています。
一方で、幼少期から地元の音楽教師に師事し、後にエラディオ・ブランコ音楽院でバンドネオンの技術を磨きました。
キャリアの始まり
16歳の1930年、Salvador Grupillo楽団に参加しプロデビューを果たしました。
その後まもなくAlberto Gambino楽団に移り、ラジオ番組「Chispazos de Tradición」にも度々出演しています。
また、1930年代初頭にはTita MerelloやLibertad Lamarqueといった大歌手の伴奏も務めました。
ディアリエンソ楽団での黄金時代
1934年、タンゴの“リズムの王様”Juan D’Arienzo楽団に第一バンドネオン奏者として迎えられ、約10年にわたり中心的なアレンジャー兼演奏者として活躍しました。
この時期に「Chichiponía」「Don Alfonso」「Bien polenta」「Te espero en Rodríguez Peña」「Salí de perdedor」「Sí supieras que la extraño」などの名曲を生み出し、楽団の人気を不動のものにしました。
自身の楽団結成とスタイル確立
1939年に最初の自前楽団を結成し、1940年に再度D’Arienzo楽団に戻った後、1951年に本格的に自身のオルケスタを再編成しました。当初はヴァイオリンのCayetano PuglisiやピアノのFulvio Salamancaらを擁し、ダンサーを意識した俊敏かつ正確なビートを追求しました。そして1950年代には歌手Armando Laborde、Rodolfo Lesica、のちにArgentino Ledesmaを迎え、国境を越えた人気を博しました。
豊富な録音と国際的展開
Varela楽団は長年にわたり383曲もの録音を残し、その中にはColumbiaレーベルからリリースされた最後のシングル「Que no muera este amor」も含まれます。アルゼンチン国内のツアーに加え、モンテビデオのホテル・カリヤスコやリオデジャネイロなど南米各地で公演を行い、1950年代後半には日本にも招かれました。
メディア出演と映画
1960~70年代にはテレビ番組「Grandes Valores del Tango」にレギュラー出演し、タンゴの伝統普及に貢献しました。さらに1979年公開のミュージカル映画『La carpa del amor』にも楽団として参加し、多彩な文化活動を展開しました。
代表曲とディスコグラフィ
代表曲には「Fumando espero」「Noches de Brasil」「Mi corazón es un violín」「Viejo rincón」「Eras como la flor」などが挙げられ、これらの録音はDiscogsやAllMusicで広く紹介されています。
影響と遺産
エクトル・バレラは、ディアリエンソ以来の伝統を受け継ぎつつ、より洗練されたアレンジと躍動感あふれるリズムを追求したことで知られ、「情熱と革新の象徴」と評されます。彼の録音と映像は現在もストリーミングやCDで入手可能であり、世界中のタンゴ愛好家に愛聴され続けています。
本稿を通じて、エクトル・バレラという一人の巨匠がタンゴの歴史にもたらした足跡と、その普遍的な魅力を感じ取っていただければ幸いです。
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