Pharoah Sanders 〜スピリチュアル・ジャズの旅路と名曲解剖〜

Pharoah Sandersはアメリカのフリー・ジャズ/スピリチュアル・ジャズを牽引した巨匠サクソフォーン奏者です。彼はJohn Coltraneのグループで活動した後、1970年代以降はリーダー作を30枚以上発表し、独自のオーバーブローイングや多声音奏法で革新的な表現を追求しました。代表曲には1969年のアルバム『Karma』収録の「The Creator Has a Master Plan」、1980年のアルバム『Journey to the One』および1987年の『Africa』収録の「You’ve Got to Have Freedom」、そして1978年のアルバム『Love Will Find a Way』のタイトル曲「Love Will Find a Way」などがあります。本稿ではこれらの名曲を中心に、その背景と魅力を詳しく解説し、サンダースがもたらしたスピリチュアルな深みを探ります。

Pharoah Sandersの背景と音楽性

1940年10月13日、アーカンソー州リトルロックに生まれたフェレル・リー・サンダースは、後に「Pharoah Sanders」と名乗り活動を始めました。1965年にはJohn Coltraneのグループに参加し、『Ascension』や『Meditations』などで緊張感あふれる即興演奏を展開し、その後スピリチュアル・ジャズの旗手として独自の道を歩みました。彼は30枚以上のリーダー・アルバムを発表し、Leon Thomasとのヨーデル・ヴォーカルや非西洋的なパーカッションを取り入れたサウンドで、多くのミュージシャンに影響を与えました。

『The Creator Has a Master Plan』徹底解剖

1969年5月、Impulse!レーベルから発表されたアルバム『Karma』の冒頭を飾る「The Creator Has a Master Plan」は、32分46秒にわたる大作です。この楽曲ではJulius WatkinsのフレンチホルンやJames Spauldingのフルート、Leon Thomasのヨーデル・ヴォーカル、さらに複数のパーカッションが織りなすオーケストラ的な編成が特徴的です。サンダース自身はオーバーブローイングや多声音奏法(マルチフォニクス)を駆使し、「シート・オブ・サウンド」を彷彿とさせる濃密な即興を展開しています。また、その長尺にもかかわらずFMラジオでのオンエアが実現し、アシッドジャズやヒップホップのアーティストによるサンプリングでも繰り返し引用されるなど、前衛ジャズとしては異例のヒットを記録しました。

『You’ve Got to Have Freedom』の魅力

「You’ve Got to Have Freedom」は1980年リリースのアルバム『Journey to the One』で初登場し、後に1987年の『Africa』にも収録されました。アップテンポでグルーヴ感溢れるモーダル・ジャズであり、サンダースはEddie Hendersonのフリューゲルホルン、Idris Muhammadのドラム、John Hicksのピアノら大編成バンドをバックにダイナミックなソロを披露しています。『Africa』収録版では長さ10分超のパフォーマンスが再確認され、アルバム全体のメロウさと対比を成しています。さらに、1981年録音のライブ盤『Pharoah Sanders Live...』では約14分にも及ぶ情熱的な演奏が収録され、ステージでの定番曲として聴衆を魅了しました。

『Love Will Find a Way』で示したクロスオーバー志向

1978年、サンダース初のアリスタ・レコード作品として発表されたアルバム『Love Will Find a Way』のタイトル曲は、当時のクワイエット・ストームやAORの潮流を取り入れたメロウなナンバーです。多くのトラックでフィーチャーされたシンガーPhyllis Hymanの伸びやかなボーカルと、Norman Connorsのプロデュースによる洗練されたアンサンブルが、サンダースの従来の前衛的イメージを一新しました。ライターTom Terrellは本作を「クワイエット・ストームの名曲」と評し、商業的成功を収めたと指摘しています。

その他の注目曲と現在への影響

1967年発表のデビュー作『Tauhid』に収録された「Upper Egypt & Lower Egypt」は、サンダースのスピリチュアル・ジャズを象徴する代表作の一つです。その後も「Deaf Dumb Blind (Summun Bukmun Umyun)」などを通じて、非西洋的リズムや儀式的即興を追求しました。近年では、2021年にFloating Pointsとの共作アルバム『Promises』が高い評価を受け、異世代コラボレーションの成功例として注目を集めています。

Pharoah Sandersは2022年9月24日にロサンゼルスで81歳にて永眠しました。しかし、その革新的な演奏スタイルと深遠なスピリチュアル性は、現代のジャズや電子音楽、さらにはヒップホップやポストロックのシーンにまで影響を与え続けています。彼が切り拓いたスピリチュアル・ジャズの精神は、今後も世界中のリスナーとミュージシャンの心に息づいていくでしょう。


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