オーネット・コールマン:フリージャズのパイオニアと革新の軌跡
オーネット・コールマン(1930–2015)は、テキサス州フォートワース出身のジャズサクソフォニスト、トランペット奏者、ヴァイオリニスト、そして作曲家です。彼はコード進行や和声の束縛を捨て去り、即興演奏の自由度を最大化する「ハーモロディクス」を提唱し、フリージャズを確立した先駆者として知られています。
1958年のデビュー作『Something Else!!!!』、1959年の『The Shape of Jazz to Come』、1961年の革新的二重カルテット作品『Free Jazz: A Collective Improvisation』など、多くのレコードでジャズの地平を押し広げました。1970年代にはエレクトリック楽器を導入したバンド「プライム・タイム」を結成し、『Dancing in Your Head』でフリー・ファンクの道を切り開き、2006年録音の『Sound Grammar』でプルリッツァー賞を受賞するなど、晩年まで革新を続けました。
その音楽哲学と作品群は、今日のジャズや即興音楽全般に計り知れない影響を与え続けています。
1. 生涯と音楽的背景
出生と幼少期
Randolph Denard Ornette Colemanは1930年3月9日にテキサス州フォートワースで生まれました。幼い頃から家族が所有するラジオやレコードを通じて音楽に親しみ、10代で独学によりサックス演奏を習得しました。
初期キャリア
1950年代初頭、地元フォートワースのR&Bバンドやビバップ・グループで腕を磨いた後、ロサンゼルスへ移り自身のクインテットを結成しました。1959年11月にはニューヨークのファイブスポット・ジャズクラブにて物議を醸す長期レジデンシーを行い、一躍ジャズ界の注目を集めました。
2. ハーモロディクスとフリージャズの革新
ハーモロディクスの理念
コールマンが提唱した「ハーモロディクス」は、和声やコード進行といった既存の枠組みを解体し、各奏者が自由にメロディを展開する演奏理論です。この理念は1970年代以降のフリー・ファンクやジャズ・フュージョンにも大きな影響を与えました。
1959年の革新的潮流
1959年はマイルス・デイヴィス『Kind of Blue』、ジョン・コルトレーン『Giant Steps』と並び、コールマンの『The Shape of Jazz to Come』がフリージャズの扉を大きく開いた年として位置づけられています。
3. 主な代表作とレコードガイド
3.1 Something Else!!!!(1958年)
Contemporaryレーベルからリリースされたデビューアルバム『Something Else!!!! The Music of Ornette Coleman』は、ドン・チェリー(コルネット)、チャーリー・ヘイデン(ベース)、ビリー・ヒギンズ(ドラム)らを迎え、ピアノ不在のクインテット編成でブルースと革新的な即興を融合させました。
3.2 The Shape of Jazz to Come(1959年)
アトランティック・レコード移籍後の初作『The Shape of Jazz to Come』は、コールマン、ドン・チェリー、チャーリー・ヘイデン、ビリー・ヒギンズによるカルテット編成で録音され、『Lonely Woman』などがジャズの新たな定番となりました。
3.3 Free Jazz: A Collective Improvisation(1961年)
「ダブル・カルテット」による全編即興演奏でアルバム名がそのままジャンル名となった野心作です。
3.4 Science Fiction(1971年)
アシャ・プトリのヴォーカルや詩の朗読を取り入れ、多層的で未来的なサウンドを提示した重要作です。
3.5 Dancing in Your Head(1976年)
エレクトリックギターを二本擁するプライム・タイム初期形態をフィーチャーし、ジャズファンクとフリー・ファンクの架け橋となりました。
3.6 Sound Grammar(2006年)
ドイツ・ルートヴィヒスハーフェンでのライヴ録音を収めた本作は、2007年にプルリッツァー賞(音楽部門)を受賞し、ジャズ作品として異例の栄誉を獲得しました。
4. 電化期とプライム・タイム
1970年代初頭、ハーモロディクスを基盤にエレクトリック楽器を駆使したジャズ・ファンク・バンド「プライム・タイム」を結成し、新たな音楽領域を切り開きました。さらに1972年にはロンドン交響楽団を用いた『Skies of America』も発表し、オーケストラ作品にも挑戦しました。
5. 晩年の活動と受賞歴
1984年には全米芸術基金(NEA)の「NEA Jazz Master」に選出され、1967年のグッゲンハイム奨学金を皮切りにマキャーサー・グラント、プルリッツァー賞、グラミー生涯功労賞など多数の栄誉を獲得しました。2015年6月11日にニューヨークで逝去しましたが、その革新的精神は今も息づいています。
6. 遺産と評価
コールマンの音楽哲学と実践はフリージャズのみならず、ジャズ全般、ロック、ファンク、現代音楽にまで影響を及ぼしています。批評家やミュージシャンからは「真の革新者」「即興演奏の革命児」と評され、その思想とサウンドは後進の表現の自由を解放し続けています。
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