Mountain:Mississippi QueenからClimbing!まで—70年代プロト・ヘヴィメタルの源流を紐解く
Mountain:概要とプロフィール
Mountainは1969年に結成されたアメリカのハードロック/プロト・ヘヴィメタルを代表するバンドです。リード・ギタリストで独特の太いトーンとパワフルな歌声を持つレスリー・ウェスト(Leslie West)、プロデューサー/ベーシストとしてバンドの音楽性を大きく形作ったフェリックス・パッパラルディ(Felix Pappalardi)、そしてダイナミックなドラミングで牽引したコーキー・レイング(Corky Laing)を中心に、キーボードのスティーヴ・ナイト(Steve Knight)らが参加して黄金期のラインナップを築きました。
バンド名の由来はレスリー・ウェストのソロ名義アルバム「Mountain」(1969)から。そのアルバム制作時にパッパラルディがプロデュースで関わり、そこでの共演を足掛かりに本格的なバンド編成へと発展しました。
サウンドの特徴と魅力(深掘り)
厚みのあるギター・トーンとブルース基盤
レスリー・ウェストのギターは、非常に太く粘り強いサステインと直球のフレージングが特徴です。ブルースに根ざしたフレーズをベースに、ストレートで重心の低いリフを叩きつけることで、歌と一体になった“声の延長”のようなギター表現を実現しています。プロダクションとアレンジの洗練
フェリックス・パッパラルディはプロデューサー/アレンジャーとしての経験をバンドにもたらし、単なる“でかい音”ではなく、楽曲構成やダイナミクスに配慮したサウンド作りを行いました。ストリングスやコーラスなどの装飾を部分的に用いるなど、重量感と繊細さのバランスを取ることで独自性を出しています。リズムの推進力とライブ感
コーキー・レイングのドラムはタイトかつ推進力があり、重いギターに対して地面を揺らすようなグルーヴを供給します。ライブでは即興的な展開や長尺のジャムも多く、レコード以上に荒々しいエネルギーが発揮されました。楽曲の幅:ブルース、フォーク、叙情性
一見“ヘヴィ”なイメージながら、フォーク調や叙情的な楽曲を取り入れる柔軟さもあります。これにより単調な轟音ではなく楽曲ごとの表情の違いが生まれ、リスナーに飽きさせない構成になっています。
代表曲・名盤の紹介
「Mississippi Queen」 — シングル/アルバム『Climbing!』(1970)
バンドの代名詞的なファスト・ナンバー。強烈なギターリフ、骨太なドラム、そしてキャッチーなコーラスが一体となった名曲で、プロト・ヘヴィメタルの代表的トラックとして広く知られています。『Climbing!』(1970)
Mountainの出発点であり最高傑作のひとつ。演奏の密度、作曲クオリティ、演出のバランスが良く、バンドの持ち味が最もストレートに伝わる作品です。『Nantucket Sleighride』(1971)
よりドラマティックで組曲的な要素が強い作品。タイトル曲を中心に、長尺の展開や叙情的なパートが多く、聴き手を引き込む構築力が光ります。『Flowers of Evil』(1971)
スタジオ・トラックとライヴ・トラックを組み合わせた独特の作り。スタジオ録音の実験性とライブでの圧倒的な演奏力の両方を味わえます。ライブ音源
彼らの真骨頂はライブにあり。アルバム音源以上に荒々しい即興、長尺ソロ、観客との一体感が楽しめます。ライブ盤やブートレッグを通じてバンドのダイナミクスを体感することをおすすめします。
メンバーごとの役割とプレイの見どころ
レスリー・ウェスト(ギター/ボーカル)
力強いトーンと歌声で楽曲の核を担う。ソロはフレーズの芯が太く、感情表現に直結するプレイが魅力です。フェリックス・パッパラルディ(ベース/プロデュース)
ベースラインだけでなくアレンジ面での貢献が大きく、楽曲の構造とテンポ感に知的なアクセントを加えました。コーキー・レイング(ドラム)
強靭なグルーヴでバンドを牽引。ブレイクや間の取り方が効果的で、リフとの呼吸が良く合っています。スティーヴ・ナイト(キーボード)
オルガンやピアノで背景の色付けを行い、楽曲に奥行きを加えます(在籍期により参加・不参加の変動あり)。
ライブの魅力と歴史的意義
Mountainはスタジオ録音以上にライブでのエネルギーが魅力です。即興的な長尺セクション、フロントマンとリズム隊の応酬、観客との掛け合いが強烈で、1970年代初頭のアメリカン・ハードロックのライブ像を象徴します。また“Mississippi Queen”のようなシンプルで強烈な楽曲は、その後のヘヴィロックやメタルの基本型に影響を与えました。
影響と評価 — 現代に残る位置づけ
Mountainは直接的に大量のフォロワーを生んだわけではないものの、ヘヴィなギター・トーンやブルース基盤のハードロックというスタイルは、後のハードロック/メタルの基盤の一端を担いました。特にギタリストに与えた影響は大きく、太く歌うようなソロ・スタイルや、大きなアンプ・サウンドを志向するプレイヤーたちに参照され続けています。
聴き方の提案(初めて聞く人向け)
まずは「Mississippi Queen」を単曲で聴き、Mountainの“顔”を掴む。
その後『Climbing!』を通して聴き、曲のバラエティとバンドの基本サウンドを把握する。
ライブ音源や長尺トラックで即興性と演奏力を味わうと、彼らの本領がより理解できます。
まとめ
Mountainは、力強いギターと濃密なバンド・サウンドを通じて1970年代のハードロック/プロト・ヘヴィメタルの重要な一角を占める存在です。レスリー・ウェストの個性的なギターとボーカル、フェリックス・パッパラルディのプロダクション的視点、コーキー・レイングの推進力が融合したサウンドは、今なお新鮮に響き、ヘヴィな音楽のルーツを探るうえで欠かせない要素を多く含んでいます。
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参考文献
- Wikipedia — Mountain (band)
- AllMusic — Mountain: Biography
- Rolling Stone — Leslie West obituary
- Discogs — Mountain


