キング・オリヴァー:ニューオリンズ発の初期ジャズとシカゴ録音、ルイ・アームストロングへの影響
プロフィール
Joe “King” Oliver(ジョー・“キング”・オリヴァー、1885年頃生–1938年没)は、ニューオリンズ出身のコルネット奏者・バンドリーダーで、1920年代初頭のジャズ発展に決定的な影響を与えた人物です。黒人コミュニティの演奏様式を洗練させつつ商業録音へ結びつけ、シカゴのシーンを拠点に活動することで、後のジャズの標準を築きました。特に若きルイ・アームストロングを指導・招聘したことで知られ、彼の録音とバンド運営はジャズ史上の重要なマイルストーンとなっています。
音楽的特徴と演奏スタイル
- 太く温かいトーン:オリヴァーのコルネットは温かみのある「歌う」トーンが特徴で、聴き手の感情に直接訴えかけます。
- ミュートの多用:プランジャー(トイレのゴム栓のようなミュート)やカップミュートなどを操り、声のような装飾音(ワウワウ効果等)を多用して表情を付けました。
- 集団即興(コレクティブ・インプロヴィゼーション):旋律を中心に複数奏者が同時に装飾や対位を行うニューオリンズ由来のスタイルを洗練させ、アンサンブルの密度と躍動感を生み出しました。
- ブルース感覚と間の使い方:フレーズの間合いや短い休符を効果的に使い、ブルース的な歌心とリズム的な推進力を両立させます。
- 編成とアレンジ感覚:ソロを際立たせつつ、他奏者の対話を活かす配置・アレンジを用い、エンターテインメント性と音楽性を両立しました。
シカゴ時代と録音(1920年代)
20世紀初頭、オリヴァーはニューオリンズからシカゴへ進出し、そこで自分のバンドを率いて録音を残しました。1923年のOkehレコードにおけるキング・オリヴァーズ・クレオール・ジャズ・バンドの一連の録音は、ジャズ録音史における白眉です。これらのセッションは、当時の演奏の生気とアンサンブルの構築法を明瞭に示し、後世のミュージシャン(とりわけルイ・アームストロング)に大きな影響を与えました。
指導者としての功績とルイ・アームストロングとの関係
キング・オリヴァーは単に優れた奏者であるだけでなく、優れた目利き・育成者でもありました。若きルイ・アームストロングをシカゴ・セッションに招聘し、共演することでアームストロングの才能を広く知らしめました。アームストロング自身がオリヴァーを最大の師の一人として敬愛しており、アームストロングのソロ中心の近代的なジャズへとつながる道筋にオリヴァーの影響が見て取れます。
代表曲・名盤(おすすめリスニング)
- "Dipper Mouth Blues"(1923) — オリヴァーの代表的なテーマ。メロディの説得力とアンサンブルの緊張感が光ります。
- "Canal Street Blues"(1923) — ニューオリンズ色の強い作品で、街の空気感とブルースの哀愁が同居します。
- "Chimes Blues"(1923) — サウンドの色彩感やミュート使いが際立つ一曲。
- 編集盤/コンピレーション:「King Oliver: The Complete Recorded Works 1923–1929」など、1920年代のオーケー他のセッションを網羅したものは入門に最適です。
キング・オリヴァーの魅力(現代に響く理由)
- 生の表現力:録音技術が未発達な時代でも、彼の演奏は感情をダイレクトに伝えます。音色や抑揚で語る「歌心」が聴き手の共感を呼びます。
- アンサンブルの巧さ:ソロと集団演奏のバランスを取るその手法は、現代のジャズ聴取でも新鮮な発見を提供します。
- 歴史的価値:ジャズの発展史を追う上で必聴の存在。初期黒人音楽のエッセンスをそのまま伝える記録は、音楽学的にも文化史的にも貴重です。
- 音色と表情の豊かさ:ミュートやフレーズの処理で声のような表現を作る技術は、奏者・リスナー双方にとって学びが多いポイントです。
聴き方のヒント(初めての人向け)
- はじめは代表曲を通して「音色」と「アンサンブルの重なり」を意識して聴いてみてください。
- ルイ・アームストロングの後期演奏と対比すると、ジャズソロの発展点がより鮮明になります。
- 歌詞のないインストゥルメンタルでも「物語性」や「会話性」を見つけると、演奏の魅力が見えてきます。
影響と遺産
キング・オリヴァーは、ニューオリンズ・ジャズの伝統をシカゴ経由で全米に広め、商業録音というメディアを通じてその音を後世に残しました。彼の奏法やアンサンブル感覚は、ルイ・アームストロングをはじめ多くの奏者に受け継がれ、モダン・ジャズの源流を形成しました。今日のジャズ教育や歴史研究でも重要な位置を占めています。
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