キング・オリヴァーと初期ジャズの全貌:アームストロングを導いた歴史的録音と聴き方ガイド
はじめに — King Oliver(ジョー・“キング”・オリヴァー)の位置づけ
ジョー・“キング”・オリヴァー(1885–1938)は、ニューオリンズ発の初期ジャズを代表するコルネット奏者・バンドリーダーで、後のジャズ史を決定づけた人物の一人です。若きルイ・アームストロングをニューヨークやシカゴの舞台に導いたことでも知られ、ミュートを用いた多彩な音色、リフを基盤にしたアンサンブル作法(集団即興の整え方)でその後のジャズのスタイル形成に大きな影響を与えました。
おすすめレコード(厳選)
ここでは「オリジナル録音をしっかりカバーしているか」「演奏の歴史的価値が高いか」「リイシューとして入手しやすく音質・解説が充実しているか」を基準に選んだ盤を紹介します。CD/LP/デジタルいずれのフォーマットでも存在しますが、以下は代表的に探しやすいまとまりで説明します。
1923年 Okeh セッション(King Oliver's Creole Jazz Band:初期の決定的録音)
概要:キング・オリヴァーの名を決定づけた最重要セッション群。2コルネット編成(オリヴァーと若きルイ・アームストロング)とクラリネット/トロンボーンを含むニューオーリンズ流のホットなアンサンブルが聴けます。代表曲には「Dipper Mouth Blues」「Canal Street Blues」などが含まれます。 なぜ聴くか:初期ジャズの“音”と編成感、オリヴァーのミュート処理とリフ運用、そしてアームストロングの台頭を同時に味わえる歴史的録音です。良リイシュー(Archeophone 等の復刻や各社コンピ)を探してください。1923–1929 の諸セッションを網羅した「コンプリート」系ボックス/コンピレーション
概要:Document Records、JSP、Archeophone、あるいは大手レーベルのコンピレーションとして発売されている「Complete」シリーズ。個別セッションを時系列で並べ、全録音を収録するものが多いです。 なぜ聴くか:演奏の変遷(初期のニューオーリンズ色から、シカゴでの洗練まで)を追えるので研究的・学習目的に最適。解説(クレジット、録音日、マトリクス番号)が充実している盤を選ぶと良いでしょう。良質な解説・音源復刻に定評のあるリイシュー(Archeophone / Mosaic / Columbia/Legacy 等)
概要:同じ録音でもマスタリングやノイズ処理、解説の充実度で評価が大きく変わります。Archeophone(初期音源復刻専門)やMosaic(ボックス専門)、Legacy 系のリイシューは比較的信頼できます。 なぜ聴くか:歴史的音源は転写(78回転からの復刻)の質で聴感が変わります。良い復刻盤は曲のディテール(ミュートのニュアンス、ブレイクの輪郭)をよりクリアに伝えます。オリジナル78回転盤(コレクター向け)
概要:オリジナル・シェルアック盤(Okehなど)をそのまま入手して聴く、または専門店での試聴。 なぜ聴くか:音の質感や録音時の雰囲気を最もダイレクトに感じられます。ただし入手難度・価格・プレイヤーの要件があるため、初心者には復刻盤を先に勧めます。
代表的な録音と聴きどころ(ポイント)
Dipper Mouth Blues(1923)
聴きどころ:テーマリフの魅力とオリヴァーのミュート処理。アンサンブルとソロの切り替え、ルイ・アームストロングの若きソロの気配を確認できます。作曲(クレジット)やアレンジの面でも後のジャズに影響を与えた名作です。Canal Street Blues(1923)
聴きどころ:ニューオーリンズのリフに基づく構成力、クラリネットやトロンボーンの対位法的な絡み、全体としてのグルーブの作り方を学べます。1926–1929 年の各種 Okeh/Gennett セッション
聴きどころ:1923年録音に比べて編成や演奏のアプローチが変化していく様子。オリヴァーの音楽的成熟と時代の変化(シカゴ・ジャズの影響など)を追える時期です。
盤の選び方・入手チェックポイント
- 収録範囲:目的が「代表曲を聴く」か「全集的に研究する」かで選ぶ(ベスト盤 vs コンプリート)。
- 転写・マスタリングの情報:オリジナル・78の転写か、別テイクを用いた復刻か、ノイズ除去の程度など。解説にこれらの記載がある盤を選ぶ。
- 解説(ライナーノーツ):録音日、参加ミュージシャン、当時の背景解説がきちんとあるものが望ましい。
- 信頼できるリイシューレーベル:Archeophone、Document、Mosaic、Legacy系などは初期録音の復刻実績がある。
- 予算と希少性:Mosaic やオリジナル78は高価になりやすい。まずは廉価な良質コンピで入門するのが合理的です。
聴き方の提案(深掘りポイント)
- コルネットのトーンとミュートの使い分けに注目する。オリヴァーは“物語る”ようなフレーズ作りが特徴です。
- アンサンブルの“リフ中心”構築を追う。リズムセクションと管楽器の掛け合いが初期ジャズの骨格を作ります。
- ルイ・アームストロングのソロ出現を対比して聴く。オリヴァーの指導的役割とアームストロングの個性の芽生えが同じ録音で確認できます。
- 録音年代ごとの演奏スタイルの変化を比較する。1923→1926→1929 の流れで聴くと、ジャズの進化が手に取るように分かります。
入手・購入の実用アドバイス
- まずは「1923 Okeh セッション」や「King Oliver Complete」の名が付くコンピを探して試聴する。ストリーミングで雰囲気を掴むのも有効。
- 国内外の中古レコードショップやオンライン(Discogs、eBay、日本のレコードショップ)でLPやCDの状態と解説を確認して購入する。
- 復刻盤を選ぶ際は解説の充実度とマスターの出典(オリジナル78のどの盤から転写したか)をチェックすると失敗が少ないです。
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参考文献
- King Oliver — Wikipedia
- King Oliver — AllMusic Biography
- Joe "King" Oliver (Syncopated Times / Red Hot Jazz Archive)
- Joe "King" Oliver — Discogs(ディスコグラフィ)
- Archeophone Records(初期録音復刻レーベル)
- Document Records(歴史的録音再発レーベル)


