Frankie Goes to Hollywood徹底解説:Relax/Two Tribes/The Power of Loveと80年代シンセポップの伝説
プロフィール
Frankie Goes to Hollywood(フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、略称FGTH)は、1980年代中盤にイギリスで一気に脚光を浴びたポップ/ロック/エレクトロニック・バンドです。リヴァプール出身で、エネルギッシュなダンス・ポップと挑発的なビジュアル、そして緻密で豪華なスタジオ制作を武器に、短期間で大衆的な成功と文化的な論争を巻き起こしました。
- 結成時期:1980年代初期(1980年代前半に活動を本格化)
- 主要メンバー:Holly Johnson(ボーカル)、Paul Rutherford(バックボーカル)、Mark O'Toole(ベース)、Brian Nash(ギター)、Peter Gill(ドラム)
- 代表的な関係者:プロデューサーのTrevor Horn、レーベルZTT(Paul Morleyらが設立)
- 活動のピーク:1984年頃(シングルの大ヒット、アルバムの成功、メディア論争が集中)
サウンドと制作の特徴
FGTHの音楽は、シンセポップ/ダンス・ポップを基盤にしながら、ロック的なダイナミズムとクラブ的なビートを融合させたものです。特に以下の点が特徴的です。
- 重層的で“映画的”なプロダクション:Trevor Hornらによるスタジオ作業は、細部にまでこだわったレイヤー、サンプリング、エフェクト処理が施され、当時のシンセポップ作品とは一線を画す厚みを生み出しました。
- ダンスとロックの境界線を曖昧にするアレンジ:強烈なリズムトラックとエッジの効いたギター、ポップでキャッチーなメロディを同居させています。
- リミックス文化への貢献:12インチ・エディットやリミックスを積極的に展開し、クラブで長時間プレイされるバージョンや別テイクで楽曲の魅力を拡張しました。
- テーマ性の幅広さ:セクシュアリティや快楽主義、冷戦下の政治不安などを、直接的か象徴的かの違いで大胆に扱っています。
代表曲・名盤とその魅力
以下はFGTHを語るうえで外せない楽曲・作品です。それぞれ音楽的・文化的に重要な理由と、聴く際の注目ポイントを添えます。
- "Relax"(シングル)
大胆な歌詞と官能的なイメージ、そしてドライヴ感あふれるアレンジでクラブから一般チャートまでを席巻。放送禁止を含む論争が話題を呼び、結果的に曲の知名度をさらに高めました。プロダクションの緻密さと、サビでの開放感を意識して聴くと面白いです。
- "Two Tribes"(シングル)
冷戦期の恐怖と皮肉を直截に取り上げた作品。男性コーラスやサウンドデザインが戦闘的で、ポップながら政治的メッセージを強く打ち出しています。シンセベースと重厚なミックスの迫力に注目してください。
- "The Power of Love"(シングル)
壮大で祝祭的なバラード。前述の攻撃的なシングル群とは対照的に、スケール感とドラマ性を前面に出した曲で、多くの人々に広く受け入れられました。コーラスやストリングス処理の重ね方が聞きどころです。
- "Welcome to the Pleasuredome"(アルバム、1984)
デビュー期の集大成とも言えるアルバム。シングル群を中心に、長尺で多様なアレンジを含む楽曲群が収められており、当時のスタジオ志向のポップ/ダンス音楽の極致を示しています。全体の流れやサウンド・コントラストを意識して聴くと深みが増します。
- "Liverpool"(アルバム、1986)
セカンドアルバム。商業的・批評的には賛否が分かれましたが、バンドの試行錯誤や音楽性の幅が見られる作品です。初期ヒットの延長線上にない側面を知る手がかりになります。
ビジュアルとステージ表現
FGTHは音楽だけでなく、ミュージックビデオやプロモーション写真、ステージングにおいても挑発的で映画的な演出を多用しました。性的表現や官能性、消費社会への風刺、冷戦期のイメージなどをビジュアルで強調することで、楽曲のメッセージ性を視覚的にも拡張しました。
- ビデオやアートワークは時に検閲や放送禁止の理由となり、それ自体が宣伝効果を生み出しました。
- ライブではポップ性とパフォーマンス性を両立させ、観客を巻き込む演出が多く見られました。
論争と社会的影響
FGTHの登場は単に音楽的成功だけでなく、社会的な議論も呼びました。代表的なものは以下です。
- 「Relax」やビジュアルが放送や一部メディアで問題視され、結果としてバンドの知名度がさらに高まった(検閲とパブリシティの関係)。
- セクシュアリティをオープンに表現する姿勢が、LGBTQの可視化やポップ文化における表現の自由に影響を与えた側面。
- 冷戦期の政治的メッセージをポップソングで扱ったことは、ポップミュージックが当時の社会問題を取り込む好例となりました。
レガシー(影響と評価)
短いピーク期間にもかかわらず、FGTHの影響は大きいです。音楽的には、80年代のダンス・ポップとリミックス文化の成熟に寄与し、豪華なプロダクションやシングル中心のマーケティング手法はその後の多くのアーティストやプロデューサーに影響を与えました。文化的には、ポップミュージックにおける挑発的表現や性の表出、政治的テーマの扱い方に新たな可能性を示しました。
聴くときのポイント(おすすめの聴きどころ)
- プロダクション:レイヤーの重ね方、エフェクト、ダイナミクスの作り方に注目すると新たな発見があります。
- 歌詞とテーマ:表面的なキャッチーさの裏に、性的表現や政治的皮肉が織り込まれていることが多いので、歌詞をよく読んでみてください。
- リミックス:オリジナルとリミックスで曲の印象が大きく変わることがあるため、複数バージョンを聴き比べると面白いです。
- アルバムを通して聴く:特に「Welcome to the Pleasuredome」はシングル以外の曲にも独自の世界観が広がっており、通して聴くことで全体像が把握できます。
まとめ:なぜ今でも語られるのか
Frankie Goes to Hollywoodは、ポップミュージックとしての即効性と、挑発的で社会的なメッセージを同時に持ち合わせた希有な存在でした。彼らの作品は当時の技術的・文化的文脈を反映しつつ、現代のリスナーにとっても音作りや表現の面白さを失っていません。短命ながらも濃密なキャリアは、ポップ史におけるひとつの“事件”として今も語り継がれています。
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参考文献
- Frankie Goes to Hollywood - Wikipedia
- Frankie Goes to Hollywood | AllMusic
- How 'Relax' became a scandal: The Guardian(関連記事)
- Trevor Horn - Wikipedia(プロデューサー情報)
- ZTT Records(レーベル情報)


