Hal BlaineとWrecking Crewの音の職人技—聴きどころ満載のおすすめレコードガイド
Hal Blaineとは — セッション史に残る“音の職人”
Hal Blaine(ハル・ブレイン、1929–2019)は、アメリカのセッション・ドラマーで、1960〜70年代のポップ/ロック/ソウルの名曲の多くに参加した“Wrecking Crew(レッキング・クルー)”の中心メンバーです。Spectorサウンド、ブライアン・ウィルソンのスタジオ実験、60年代ポピュラー音楽の黄金期——そのリズムを支えたのが彼のスネア、タム、ワンフレーズのフィルでした。
コラムの目的
本コラムでは、Hal Blaineの“プレイを聴いて楽しめる”おすすめレコード(シングル/アルバム)をピックアップし、各曲・各盤で彼がどのような役割を果たしているか、聴きどころを解説します。制作背景やセッションの逸話も交え、ドラマーとしての特徴がわかる選曲を中心にしています。
聴く前に知っておきたいHal Blaineの特徴
- 「歌を引き立てること」を最優先にするアプローチ。派手さより楽曲に最適なグルーヴを選ぶ職人性。
- 象徴的なワンフレーズ(イントロの一打やフィル)で楽曲の印象を決定づけることが多い。
- 多ジャンルに対応する柔軟性とスタジオでの即応力。短時間で正確に求められるサウンドを出す力が抜群。
おすすめレコード(シングル/アルバム)と聴きどころ
1) The Ronettes — 「Be My Baby」 (1963)
なぜ聴くか:ポップ史に残る“あの”ドラム・ビート。フィルインとスネアのアクセントが楽曲の象徴です。プロデューサー:フィル・スペクターの“ウォール・オブ・サウンド”の中心で、Halのビートが曲全体を牽引します。
2) The Righteous Brothers — 「You've Lost That Lovin' Feelin'」 (1964)
なぜ聴くか:壮大なドラマティック・プロダクションで、ドラマーは歌のダイナミクスを見事にサポート。置かれるシンコペーションやタムの使い方に注目してください。
3) The Beach Boys — Pet Sounds(アルバム、1966)
なぜ聴くか:ブライアン・ウィルソンのスタジオ実験の多くでHalは重要な役割を果たしました。単曲では「Sloop John B」などに彼のプレイが残り、メロディの装飾としてのドラムワークが学べます。
4) The Beach Boys — 「Good Vibrations」 (1966)
なぜ聴くか:浮遊感あるサウンドの中で、タイミングとタッチの妙が効いている一曲。部分的に複雑なアレンジを落ち着かせる“間”の作り方が参考になります。
5) The Mamas & the Papas — 「California Dreamin'」 (1965)
なぜ聴くか:爽やかなメロディを下支えするシンプルで効果的なビート。楽曲の「推進力」を作るタイムキープの良さを直感的に感じられます。
6) Sonny & Cher — 「I Got You Babe」 (1965)
なぜ聴くか:シンプルながらも曲の雰囲気を決定づけるリズム。余計な装飾をせず、楽曲性を第一に考えるHalの姿勢がわかる典型です。
7) Simon & Garfunkel — 「Mrs. Robinson」 (1968)
なぜ聴くか:アコースティック主体の曲におけるリズムの置き方が秀逸。ドラムで曲の推移を自然にリードするやり方を学べます。
8) Wrecking Crew/セッション・コンピレーション集
なぜ聴くか:Wrecking Crewの集合的功績を俯瞰するにはコンピ集が便利です。Halの多彩なプレイスタイル(スイング、R&B、ポップ、ドラマティックなロック)をまとめて聴けます。
各曲・各盤での“聴きどころ”ポイント
- イントロ一打の重要性:例えば「Be My Baby」の冒頭。1拍目・4分音符の使い方で曲の印象を決める。
- 歌を引き立てる“引き算”の美学:華麗なフィルを入れるのではなく、ボーカルのフレーズを支えるタイミング調整。
- ダイナミクスの操作:大サビでの音量感の作り方、間奏から戻る際のテンションコントロールに注目。
- タイム感(グルーヴ)の“揺らぎ”の扱い:厳密なメトロノームから少しだけずらすことで人間味を出す手法。
聴き比べのすすめ
同じ曲の別テイクや、同時代の他ドラマーとの比較(例:Hal Blaineと別のレッキング・クルーのドラマー)を行うと、彼独特の選択(どの部分でタムを使うか、フィルの長さ、スネアの強さなど)がより鮮明になります。解説を読みながら1曲ずつ“何を省いているか”に注意して聴くと、Halの職人性が見えてきます。
まとめ — なぜHal Blaineを聴くべきか
Hal Blaineは「名演を作るための最適解を即座に見つけられる」ドラマーでした。派手な見せ場より楽曲全体のバランスを優先するその姿勢は、スタジオワークの本質を教えてくれます。紹介したシングルやアルバムを通じて、ポップ史を動かした“音の選択”を体感してください。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- Hal Blaine — Wikipedia
- Hal Blaine Credits — AllMusic
- Hal Blaine, Prolific Studio Drummer, Is Dead at 90 — The New York Times
- The Wrecking Crew(ドキュメンタリー公式サイト)
- Hal Blaine 公式サイト
- Hal Blaine, The Wrecking Crew(書籍) — Amazon


