Spacemen 3 のレコードを聴くべき理由とおすすめアルバム:初心者からコレクターまでの完全ガイド
イントロダクション — なぜ今、Spacemen 3 のレコードを聴くべきか
Spacemen 3(ピーター・ケンバー=Sonic Boom と ジェイソン・ピアース=J. Spaceman を中心とした英ロンドンのバンド)は、1980年代のポストパンク/サイケデリック・リバイバルを独自のミニマルな「1曲1コード」的な美学で突き詰めた存在です。その音楽はドローン、反復、プリミティブなブルース/ゴスペルの要素、そして薬理的なトリップ感覚が混ざり合い、以降のゴシック・サイケ/スペース・ロック周辺や、彼らの解散後に派生したSpiritualized や Spectrum といったプロジェクトにも大きな影響を与えました。
ここでは「おすすめのレコード」を中心に、各作品の音楽的特徴、聴きどころ、コレクション上のポイント(オリジナル盤と再発の違いや注意点)を深掘りして解説します。初めて触れる人にも、愛好家にも役立つ読み物を目指しました。
1. Sound of Confusion(1986) — 荒削りな出発点
特徴:デビュー作らしい荒々しさと、ガレージ・ロック的な生々しさが前面に出たアルバム。後のミニマル志向やドローン的反復の萌芽が見える一方で、フィードバックやストレートなロックンロールへの憧憬も色濃い作品です。
- 音楽的ハイライト:雑音とブルース・リフが混じり合うトラック群。サイケデリックの“粗削り”な版といえるサウンド。
- 聴きどころ:生々しい演奏感と初期の実験精神。バンドがのちに洗練させる前の直球のパワーを味わえる。
- コレクションの見方:オリジナル・プレスは入手難度が高くコレクターズ・アイテムになりがち。再発は入手性が良いが、マスタリングやトラック順が異なる場合があるので、ライナー/クレジットを確認することをおすすめします。
2. The Perfect Prescription(1987) — コンセプトと美しい抒情
特徴:バンドの代表作とされることの多い作品で、「薬物体験の起承転結」を描いたコンセプト・アルバム的な構成が知られています。サウンドはよりメロディアスでドローンとポップの融合が試みられ、楽曲の叙情性と実験性が絶妙にバランスしています。
- 音楽的ハイライト:サイケデリックでありながら歌メロの強度が高く、曲ごとの起伏が豊か。静と動のコントラストが魅力。
- 聴きどころ:コンセプトを意識して通して聴くと、曲間の繋がりやムードの変化がドラマティックに感じられます。
- コレクションの見方:このアルバムの評価は高く、多くのリイシューが出ています。オリジナル特有のサウンド/ミックスを重視するか、マスタリングの改善を重視するかで選択が分かれます。ボーナス・トラックや別ミックスを含む再発も多いので、収録内容を確認してください。
3. Playing With Fire(1989) — ミニマルかつダーク、バンドの円熟期
特徴:よりダークで簡潔なアプローチに傾いた作品。ゴスペル/ブルースの影響をさらに押し出し、ループと反復の効果で強烈なトランス感を作り上げています。徐々にメンバー間の不和が表面化していく時期の録音でもあり、緊張感が音にも表れています。
- 音楽的ハイライト:シンプルなフレーズの繰り返しが増え、曲の持つ引力や禅のような集中力が増しています。
- 聴きどころ:楽曲の内側にある静かな狂気や、低音域の圧力感に注意して聴くと新たな層が見えてきます。
- コレクションの見方:この時期のシングルや12インチ・バージョンはオリジナル盤に収録されていたバージョンが好まれることが多いです。アルバム単体以外にもEPやシングル収録曲で重要なバリエーションが存在します。
4. Recurring / コンピレーション類 — 断片と未発表の魅力
特徴:バンド解体前後に出たコンピレーションや編集盤は、アルバム本編とは異なる実験的なトラックや未発表曲、別ミックスを含んでいます。ファンにとっては断片的ではあるが重要な音源が多く含まれるため、体系的に掘る価値があります。
- 音楽的ハイライト:アルバム未収録の長尺トラックやデモ、ライブ・テイクなど、別視点のSpacemen 3が楽しめます。
- 聴きどころ:本編アルバムで感じたテーマやモチーフがどのように変化・発展しているかを追うと面白いです。
- コレクションの見方:編集盤・再発が多数あるため出所(公式再発かブートか)をチェック。公式盤はクレジットや音源解説がしっかりしているので安心です。
注目すべきシングル/12インチ(ピンポイントのおすすめ)
アルバム以外にも、バンドの代表的なアイデアや長尺実験が収められたシングル/12インチが多数あります。オリジナルの12インチ・ミックスやB面の実験トラックは、アルバムとは別の側面を知るうえで重要です。入手難度やバリエーションも多いので、気に入った曲のシングルも掘ることをおすすめします。
選び方ガイド:どの盤を買うべきか(初心者〜コレクター向けの視点)
- 初めての一枚:まずは代表作と評されるアルバム(The Perfect Prescription や Playing With Fire)を聴いてバンドの核心に触れるのが王道です。
- 違いを楽しみたい人:オリジナルLPや当時のシングル/12インチを探してみてください。別ミックスや異なるテイクが見つかることがあります。
- 手軽に高音質で聴きたい人:公式リイシューやリマスター盤が流通しているので、それらを入手すると現代的なフォーマットで楽しめます。ただし、再発によってはトラック順やミックスが変更されている場合があるため、内容欄は要確認です。
- コレクター向け:プレス違い、当時のインサート有無、ジャケットやマトリクス(盤の刻印)情報などをチェックすると価値が変わることがあります。信頼できるディーラーや専門店の記述を参考にしてください。
聴き方の提案(深く味わうための視点)
- 通して1枚を一気に聴く:特にThe Perfect Prescription のような構成物語的作品は「始めから終わりまで」を体験すると全体像が見えます。
- テーマを追う:ドローン、ゴスペル的要素、ブルース的要素など、楽曲ごとのモチーフを意識して繰り返し聴くと発見が増えます。
- アルバムとシングルを往復する:アルバムでは編集されたトラックが、シングルでは拡張/別ミックスで提示されることがあるため、両方を比べる楽しさがあります。
コラムまとめ — Spacemen 3 のレコードを集める意味
Spacemen 3 は、極めて単純な要素を繰り返すことで深いトランス感や精神性を作り出す点がユニークです。レコードを集めることは単に音源を所有する行為ではなく、時期やフォーマットごとの微妙な差異や、そのサウンドが生まれた文脈を辿る行為でもあります。初期の荒々しさ、中期のコンセプト志向、晩年の削ぎ落とし――それぞれに聴きどころがあり、好みの「顔」を見つける楽しみがあります。
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