イヴァン・リンス(Ivan Lins)|MPBの巨匠が紡ぐ和声美と代表曲ガイド
イヴァン・リンス(Ivan Lins) — プロフィール
イヴァン・リンス(Ivan Guimarães Lins、一般表記:イヴァン・リンス)は、ブラジル出身の作曲家・ピアニスト・歌手で、Música Popular Brasileira(MPB)の重要人物の一人です。1945年生まれで、1970年代から現在に至るまで、ブラジル国内外で高く評価される作品群を発表してきました。歌唱とピアノ演奏を自ら行いながら、ジャズ的な和声感覚を持ち込んだ豊かな楽曲を多数残しており、数多くの外国人アーティストにカバーされることで国際的な名声も築いています。
キャリアの概略
イヴァン・リンスは作曲家としての才覚を早くから示し、1970年代にかけてMPBシーンで注目を集めました。ヴィトール・マルチンス(Vítor Martins)などの詩人・作詞家と組んで多くの代表曲を生み出し、ブラジルのラジオやコンサートで広く親しまれるようになります。その楽曲はブラジル国内だけでなく、ジャズやポピュラー音楽の分野で世界中の演奏家に取り上げられ、国際的なリスナーにも浸透しました。
音楽的な魅力の深掘り
和声とコード進行の豊かさ
イヴァン・リンスの楽曲は、ジャズ由来のテンションやモーダルな響きを自然に取り込んだ和声進行が特徴です。単純な三和音で終わらない「半音階的行き先」や、リージョナルなブラジル的リズムと組み合わせた複雑なコードの連なりが、楽曲に都会的で洗練された色彩を与えます。ピアノやアレンジでの声部進行(voice-leading)の使い方が巧みで、和音の細かな移り変わりがメロディの表情を豊かにします。
メロディとフレージング
彼のメロディは、歌いやすさと同時に意外性を兼ね備えています。旋律ラインは口ずさみたくなる親しみやすさを持ちつつ、微妙なリズムのずらしや装飾音(グレースノート)が効いていて、演奏するたびに新たな解釈を生み出します。歌唱面では豊かなビブラートや語りかけるようなフレーズ作りで、聴き手の感情を丁寧に掴みます。
リズムとブラジル音楽の融合
基本にはサンバやボサノヴァなどブラジル固有のリズム感がありますが、イヴァンの音楽はそれを単純に踏襲するだけではありません。シンコペーションやアクセントの置き方に工夫を凝らし、ポップやジャズの感覚を融合させることで、国際的にも受け入れられやすい「普遍性」を持ったグルーヴを作り上げています。
歌詞・テーマ
共作した作詞家たちとのコンビネーションによって、愛、人生の重み、都市の情景、希望や再生といった普遍的テーマが深く描かれます。言葉の選び方は詩的で感覚的、ブラジルの都市生活や人間関係の細やかな色合いを含んだ表現が多いのも特徴です。
代表曲・名盤の紹介(入門ガイド)
ここでは、イヴァン・リンスの音楽を初めて聴く人におすすめしたい楽曲や、作品群の特徴をつかみやすいものを挙げます。
- Madalena(マダレーナ)
初期の代表曲の一つで、リズムの躍動感とキャッチーなメロディが印象的な一曲。彼のポピュラー性を世に示した楽曲のひとつです。
- Love Dance(ラヴ・ダンス)
イヴァンの楽曲がジャズ界でも取り上げられるきっかけとなったスタンダード的ナンバー。海外のジャズ歌手やインストゥルメンタル奏者にカバーされ、彼の和声美が国際的に評価される理由を象徴しています。
- Começar de Novo(コメサール・ジ・ノヴォ)
情感豊かなバラードで、希望や再出発をテーマにした歌詞が多くのリスナーの共感を呼びました。メロディの流れと和声進行が見事に調和した楽曲です。
- アルバム選びのポイント
イヴァンはアルバムごとに編成やアレンジの志向が異なることが多く、ピアノ弾き語りに近いミニマルな編成の作品から、ストリングスやホーンを配した大編成ものまで幅があります。まずはベスト盤や代表曲を集めたコンピレーションで彼の作風を掴み、その後興味のある時期のアルバムを深掘りするのがおすすめです。
国際的な影響とカバー文化
イヴァン・リンスの楽曲は、ジャズやポピュラー音楽のフィールドで多くのアーティストに採り上げられてきました。これは彼の和声の深さとメロディの普遍性が、言語や文化を越えて演奏や解釈を許容するためです。ジャズ・スタンダードとして取り上げられることが多く、楽曲ごとに多様なアレンジが生まれること自体が彼の作品の魅力を物語っています。
ライブとパフォーマンスの魅力
ライブではピアノを中心に据えたアンサンブルで、即興的なアレンジや演奏者間の会話が行われます。オリジナルの豊かな和声をベースに、奏者や歌手が各々の解釈を持ち込みやすい作品が多いため、ライブごとに表情を変えるのも楽しみの一つです。歌唱表現は情感豊かで言葉を大切にするタイプのため、ライブで聴くと楽曲の深みが一層伝わります。
イヴァン・リンスを聴くためのガイドライン
- まずは代表曲数曲(上記のようなシグネチャー曲)を繰り返し聴いて和声の特徴や歌の語り口を掴む。
- ジャズ的な解釈に興味があるなら、海外のジャズ歌手やインストによるカバー盤も聴いて、楽曲の多様性を楽しむ。
- 歌詞に着目して、ポルトガル語の原語と英語や日本語訳を比べると、詩的表現の奥行きが分かる。
- ライブ音源はアレンジの違いが楽しめるので、スタジオ録音と聴き比べるのがおすすめ。
まとめ — イヴァン・リンスの位置づけ
イヴァン・リンスは、ブラジル音楽の伝統を尊重しつつジャズや現代的なポップスの技法を取り込み、国境を越える楽曲を数多く残した作曲家/演奏家です。和声の巧みさ、メロディの魅力、詩的な歌詞、そしてライブでの表情豊かな演奏が合わさり、MPBを代表するアーティストの一人として長く愛されています。初めて聴く人は代表曲から入り、カバーやライブ音源を経て奥行きを味わうことをおすすめします。
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